女王
今考えても仕方がないんだけどね。光お義母さんがバケモノじみているのは今に始まった話じゃない。
それこそ、3年前には嫌と言うほど実感したこと。
今のお義母さんは私達の意思とか考えを尊重してなのか、あまり直接口出しして来ることは無くなった。
たまーーーーにアレは手を出しちゃダメよ、と忠告されることはある。投資とかね。
危うく大損するところだったのを覚えている。あ、諸星グループ関係の事業とかではない投資だったから、インサイダーではない、ハズ。
その時にはお義母さんは諸星グループの運営には携わって無いしね。単純に値動きと世界情勢から暴落を予測していたところに私がぶっこもうとしているのを見たからだと思う。
あの後、お義父さんとお義母さんによる投資の大勉強会が始まったのも良い思い出だ。
本当に、沢山のことを教えてくれた。経済、政治、語学、経営、数えればキリがない。本当に沢山の私が求めたこと、足りないところを集中して学ばせてくれたことは感謝だ。
本来なら、親孝行として諸星グループの更なる躍進や、お義母さんの意思を継いで行くようなことをして然るべきなんだと思う。
それなのに、私は私の道を自分勝手に突き進んでいく。文句を言われるようなことは無いだろうけど、親不孝者なのかなとも考えてしまう。
「お前が我が道を行くのは今に始まった事じゃないだろ」
「というか、私たちが素直に親の敷いたレールに乗る訳ないしね」
「それはそう」
ただ千草の言う通り、私たち全員。誰一人として親の敷いたレールなんて無視するような自分勝手な性格の連中ばかりだ。
それどころか敷いたレールを蹴っ飛ばしてぶっ壊すくらいまでしそうだ。そもそも幸いなことに子の進む道を強制するような親御さんは誰もいないんだけどね。
「私の無茶ですら好きにやれと言った人だ。普通の感性だったら泣いて止めるんじゃないか? 人間を辞めるなんて、一般人なら耐えられないだろ」
「色々恵まれてるよね、私たちって」
千草もそうだけど、私たちの中では純粋な人間じゃなくなった面々も多い。
生まれの段階で半妖精の私。バハムートの魔力を取り込んで竜の因子を取り込んだ朱莉、一度死の世界に触れたことで魂のルーツであるという雪女としての力に目覚めた要ちゃん。要ちゃんと同じことを意図的に行うために地獄まで行って天狗の力を手にして来た千草。
それぞれ、他種族の力を身体に宿し、高い身体能力や特殊能力を獲得している。魔法とはまた違うベクトルの能力も多く、特に要ちゃんと千草の力は妖怪のそれに近いようだ。
人間じゃなくなることを許してくれる親なんて、ハッキリ言うと異常者側かも知れない。だって、自分の子供がバケモノになりますって言われてOKを出せる親が普通かと言われたらNOじゃない?
それが悪いって話じゃなくて、思考がぶっ飛んでるおかげで私たちは助かっているという話。
あの親して、この子有りっても言えるかもね。
「さて、ちょっとは緊張はまぎれたか?」
「まぁ、一応は。にしたって話の内容もうちょっと無かった?」
「思考が脇道にそれた方が気がまぎれるだろ」
にやりと笑う千草の顔はだいぶ悪そうな顔だ。まぁ、千草が一番好き勝手やってるまである。私達の中で一番普通じゃないかもしれない千草の考える話題ってわけだ。
全く、お義母さんたちに聞かれたら小言のひとつでも言われるからね。好き勝手やってるのは私達の方なんだから。
「今後も好き勝手やっていこう」
「というか、やって行くことになるだろうな」
「だってやろうと思った事が大体好き勝手やらないと無理だし」
親の忠告とか、敷いたレールに乗ってたらやってられないことばっかり思いつくからね。しょうがない。
そのぶん、日に日に私達は親から離れて行っている自覚もある。その中で一番最初に手から離れるのは私だったって話が今日やる内容だ。
王座に就くとなれば、もう人間界に戻るのも難しくなっていくだろう。今後、どうなっていくのか分からないけど、これだけは確定事項と言って良い。
王様に休みは無い。妖精界から人間界に簡単に移動できるかどうかもわからないしね。また塞ぐことになるのか、開けたままになるのか。
何にせよ、ショルシエを倒してからの話だ。今回の民衆向けの発表は対ショルシエへの決起集会的な一面も大きい。




