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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
決戦に備えて

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花園へ


「敢えてコツがあると言えば、身体が動こうとすることに逆らわないこと、くらいかしらね。感覚的に本能的な嗅覚と勘で動いているわけだから、それ抑制しようとすればするほど上手くいかなくなる」


「暴走するから押さえつけるんじゃなくて、身体が動きたいように動かしてやっちいけないことだけはしないように誘導するって感じなのかな」


「そういう感じでしょうね」


頭で考える前に身体が動く。それを本能を刺激することで魔法少女としての長年の経験則と技術に野性的な勘と感性を両立させる。

理論値さえ出せれば人と野生動物のいいとこどりのような戦い方ができるようになるハズ。


ただし、それは理論値。理想論だ。言うほど簡単ではないし、人間として成熟すればするほど難しくなっていく。


人は考える葦である。なんて言うように、年を取れば取るほど人間は経験と知識を蓄えていく。蓄えた経験と知識で深く思考をして、失敗を減らして行くものだ。


つまり、今の碧ちゃんは3年前の碧ちゃんより頭で考えるようになってる。これは人間的に必然的な成長なんだけど、身の回りの環境の変化も含めて『WILD OUT』を操るには不向きな状況にどんどんなっていく。


ただでさえ碧ちゃんは得意なこととやろうとしていることの乖離が酷いせいで心理的ストレスが大きくなっていた。


本人の問題なうえに碧ちゃんは人から言われるとそれはそれで考え過ぎてしまう性格。気にかければ気にかけるほど底なし沼のように思考の坩堝にハマっていくし。


「本来なら相性が良いはずなんだけど」


「物事はそう簡単に想定通りには進まないってやつだね」


碧ちゃんの気質を考えれば『WILD OUT』は当たり前に相性が良い魔法だ。そもそも魔法少女個人が自分の為だけに無意識的に作り上げられる文字通りその人だけの『固有魔法』。


一応、模倣をすることは出来るけどオリジナルの『固有魔法』に勝つことはほぼ無いと言って良い。

『固有魔法』はその魔法少女にとって絶対の必殺技。最強の魔法。相性が良い悪いではなく、自分だけの専用魔法なんだから、自分にとって使いやすいことなんて当たり前なことなのだ。


それでも碧ちゃんが上手くいっていないのは碧ちゃんの持っている気質と、今の環境、そして碧ちゃんの性格が噛み合ってないのが原因なのは何度も何度も言う通りだ。


「考え過ぎずに、目の前のことに集中することが出来れば、チャンスはある」


「テレネッツァもそれは分かってるわ。だからあんなに苛烈な攻撃をし続けてる。余計なことを考える余裕を奪えば、自然と目の前のことに集中出来る。それに嫌でも気付かせるのがこの戦いの意味ね」


「あとは碧ちゃんがちゃんとそれを受け入れられるか、かな」


「あなた達は揃いも揃って頑固者が多いのよねぇ。柔軟な考え方が出来るのは舞ちゃんと要ちゃんくらいじゃないかしら?」


それは本当にその通りで。私達は基本的に頑固者な性格をしている人が大半だ。


頑固者じゃないとやってられない、というのもあると思う。だって基本的に苦しい状況とか厳しい訓練を耐えに耐えて耐えまくっていかなきゃいけないし、自分がブレることは魔法の質が落ちることが直結する。


だから私達は自分達の信念とか、やりたい事とか、勝敗にめちゃくちゃこだわるメンツが多い。

その中で比較的頑固じゃないのはお母さんの言う通り舞ちゃんと要ちゃんくらいだろう。


「でも、あの2人も大概だと思う」


「要ちゃんはあなた達がピンチになった時じゃないと本気の本気にはならないだろうしね。舞ちゃんは……、ちょっとジャンルが違うわよね」


「舞ちゃんは魔法少女の中でもだいぶ変わってる子だし……」


要ちゃんは自分を徹底してサポーターに位置付けている。本気を出せば本当に強いのに、千草のサポート。二番手に徹しているのは自分以外の誰かがやられた時に余裕のある人物がいないと厳しくなるからだ。


本気で戦ってないって話じゃなくて、常に余力を残している。いざという時にギアを数段上げる余地を常に残している。そこのギアの見極めは一流だよ。

本気で1人で戦う時の要は、強いよ。


舞ちゃんは色々と特殊な経歴の魔法少女だし、本人も相当変わってる。モチベーションが他の子とは全然違うからね。


自分が何を出来るのか、一番真正面から、脇目も振らずに一点に集中している様子は神がかっているとさえ思うよ。


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― 新着の感想 ―
理性を残した状態での暴走って難しいよね。 レースでコントロールできなくなる寸前まで速度を上げているようなものだから。 頑固者… 真白は図星を刺された。 精神に1ダメージを受けた。 他人の固有魔法を…
碧!思考と反射の融合だぁッ! どこかの超兵さんが言ってます。
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