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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
決戦に備えて

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大海の獣


襲い掛かって来る濁流を避けるのは無理だ。防ぐのも無理。やるなら相殺か一点突破しかない。


「――!!」


渦の中心に飲み込もうとして来たテレネッツァの魔法を逆回転の渦をぶつけて一瞬だけ勢いを止める。

それと同時に上に跳び上がる。渦の中心から抜け出したと同時にぶつけた逆回転の渦はテレネッツァの作った渦にあっけなく飲み込まれて、力の差ってのを嫌でも感じさせられる。


空中で無防備になったところをテレネッツァは逃さない。水の塊を纏わせた右の拳を構えながらこちらに飛び込んで来るのを視界の端に収めながら、魔法具のヴォルティチェを振り回して遠心力を生む。


「らぁっ!!」


回転しながら巻き込んだ水流を同じようにヴォルティチェに纏わせて、テレネッツァの拳に合わせる。


さっきまでは相打ちってところだったが、ほんの少しの競り合いの後に完全に打ち負けてヴォルティチェが後ろに弾き飛ばされる。

これが『魔力解放』前と後の違いだよな。さっきまではどうにかなってたことがあっさりどうにも出来なくなる。


舌打ちをして追撃を受けないために弾かれたヴォルティチェに逆らわずに身体の上下を入れ替えて縦の回転を入れる。


そのまま一回転してテレネッツァの拳を上に弾きあげて逸らして、更に足を伸びきったテレネッツァの右腕に絡ませて腕を折るつもりで思いっきり身体を捻る。


「うわ危な?!」


「先に仕掛けたのはそっちだろうが!!」


ま、脊椎動物じゃない妖精に骨を折るとかそういうのはほぼ意味が無い。こいつらは魔力が魂を持った生き物らしいからな。見た目が人型の方が生活が楽ってだけで、骨がある訳じゃない。


それをブラフにヴォルティチェで首ちょんぱを狙ったつもりだったが、振り解かれて避けられる。


「全く、追い詰められるとそうやってキレが上がるんだから出来ないことは無いのは自分でもわかるでしょ?」


「うぐぅ」


考える余裕が無くなると動きのキレが良くなるのは本当にそうだと感じる。それはつまりテレネッツァの主張が正しいことの証明になる。


それを指摘されて唸るくらいしか反抗できることなんてねぇよチクショウ。切羽詰まった瞬間に動きが良くなるなんておっしゃっる通りです以外に言えることなんてねぇよ。


「周りの事を気にし過ぎなのよ。何度も言ってるでしょ? もう少し肩の荷を降ろして良いのよ」


「でもよぉ」


「他人の評価にビビらない。別にあなたがいなきゃどうにもならないなんてことは殆どないのよ。むしろ思いっきりやらなきゃ部下が困るでしょ」


それはそうだ。ウチがしっかりしなきゃ、その下に付いてる他の魔法少女たちは困る。


今はまだそんな素振りは無いけど、実力が上がって来て判断力が上がれば上がるほど優柔不断な上司なんて扱いにくくて困るだけだ。


「八方美人でいようとしない!! あなたが親に迷惑をかけないようにって小さい時から気にしながら生きて来たから仕方のないところだけど、どんだけ良い子にしてたって嫌われる時は嫌われるのよ」


「別に八方美人だとか嫌われるのが嫌だとは思ってねぇって」


「でも周りに気を遣い過ぎて思い通りに動けなくなってるなら大差変わらないわ」


完全に口でも言い負かされている。反論すら思い付かん。心当たりがあり過ぎる。


テレネッツァは普段から『優しさ』のメモリーの中でウチの生活を暇つぶしに観察してるらしく、とにかくウチのことよく知っている。


人間関係も食べ物の好き嫌いも行動範囲も筒抜けだ。


幸いなことに、普段は別にこっちに干渉して来ないから良いんだけどよ。


テレネッツァとウチはどうにも相性が良すぎて、やろうと思えばメモリーの状態でも会話出来るんだよな。


今まではメモリーに関するルールがあったから、相互不干渉だったけど今後はバリバリに口出しされそうだってのにも気が付いてなんか気が滅入って来た。


「まず、良い子ちゃんを辞めること。口調とか態度を雑にしてるのだって、良い子ちゃん過ぎるとお母さんに心配されたからでしょ!!」


「何で知ってんだよ!!」


その話誰にもしたことねぇだろ!!


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― 新着の感想 ―
碧「ば、バレてるorz」 テネレッツァ「私に隠し事なんて不可能なのよ☆」
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