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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
決戦に備えて

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大海の獣


水と水がぶつかり合う。それも1リットルとか2リットルみたいなよく見る量じゃない。


量で換算すりゃ軽く1000リットル。重さにすりゃトンは超える。

そんだけの量の水のぶつかり合いってのは、人間の想像を遥かに超えたパワーを持ってる。


「はっ!!」


「オラァッ!!」


音と衝撃で腕がびりびりと震える中、魔法具である巨大な斧『ヴォルティチェ』を振り回しながら、その水の中に飛び込んで行く。


相手をしているテレネッツァも同じだ。


妖精のクセに魔法主体じゃなく、体術も込みで戦うのはまさにエリート戦士。


凄まじく強い。こんだけ派手にやり合っておきながらまだ余裕がありやがる。

こっちもまだ全力ってわけじゃねぇが、それより更に数段上の余裕。


朱莉や千草とも良い勝負だろうな。少なくともパッシオと同格程度には強い。

アイツもウチらとの模擬戦では絶対に本気でやらねぇからな。


まぁ、あのクラスの妖精の全力の魔法ってなると威力と範囲が過剰過ぎるんだろうよ。


攻撃力ってのはあればあるだけ良いと誤解されがちだが、実のところは自分達が安全に扱い切れる程度に抑えた攻撃力が最も扱い易くて効果的な攻撃性能を持つ。


制御出来ない爆弾を抱えてるより、振り回せる鉄の棒の方が優秀ってワケだ。


妖精も魔法もそれは変わらない。


その代わりっつーか。実力が高ければ高いほど、緻密で繊細で、確実な判断でその時最も適した魔法を使ってくるわけなんだがよ。


互いに踏み込んだ先で水を纏わせた斧と拳がぶつかって弾き返される。


魔法使ってんだから当たり前なんだけどよ。人の身の丈ほどの戦斧と拳一つが相殺ってどうなってんだよ。


こちとらただ振り下ろしてるだけじゃねぇんだぞ。


「ほら!! またごちゃごちゃ考えてる!!」


「ちぃっ!!」


しかも身軽だから一撃一撃の間隔が短い。武器、しかも魔法具としてみても一際巨大な部類に入るウチの魔法具はどうやったって小回りを効かせるのが難しい。


対して、相手は拳一つを武器に戦ってくる。どうしたって機動力では分が悪い。


本来なら、そこを一撃の威力の差ってのがカバーしてくれるワケなんだが、テレネッツァの拳はこっちと同等かなんなら上の威力。


同じ格闘戦を得意にするクルボレレですら、スピード一点特化な都合上、火力は不足気味。

防御だって薄い。だからこそ火力差を見せることで牽制が効くんだが。


テレネッツァはどれもこれもウチより上。攻撃力、防御力、機動力に魔力。


せいぜいタメ張れるのは体力くらいだろ。そのくらい実力に開きがある。


「考えてる暇があるなら動きなさい」


「簡単に言ってくれる、ぜ!!」


何とか拳を弾き返して、柄の先で引っ張り上げた水で壁を作る。


目眩しににもならねぇが、一瞬だけ時間がある。ヴォルティチェにありったけの水を巻き込んで、更に壁越しに放たれた魔法までまとめて飲み込む。


そのまま横薙ぎに振り抜くと斬撃と一緒に水流があっち側に襲い掛かる。


広範囲高火力の一撃なワケだが。


「冗談キツいぜ……っ!?」


テレネッツァは涼しい顔をしてその水流の上を走り抜けて来た。


人の攻撃を足場にするかよ普通。と頭の中で悪態を吐きながら、飛んできた蹴りを顔面に貰って吹き飛んだ。


「ぺっ」


口の中に溜まった血を吐き出してから拭うとべったり血が付いてた。


流石に口ん中切ったか。後ろに飛んでモロに喰らうのだけは避けたんだけどな。

避けきるなんて都合よくはいかねぇもんだ。


「頭の中でごちゃごちゃ考えてるから判断が遅れるのよ。身体の反応に身を任せれば今のだって避けれたはずよ」


「だから、簡単に言うなっつーの」


「昔のあなたなら出来てたけど? 自分でも分かってるでしょ? 避けれるのに避けれてないって」


それに関してはおっしゃる通りだ。どうにも感覚と身体の反応がズレてる。

時間にしてコンマ数秒だが、思った動きより遅いのは前から感じていたことだ。

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― 新着の感想 ―
碧のモノローグ… 妖精の“くせに”って、そういう固定観念はよくないと思います。 妖精が魔法しか使わないなんて誰が決めたんだろうね? 世の中、魔法を手放したエルフもいるのに。 碧はサフィーリアのことで…
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