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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
決戦に備えて

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星の道導


【ふう、ごめん。少し取り乱したわ】


「う、うん」


少しかな。うん、少しだね。少しってことにしておこう。深く考えた挙句、藪から鬼が出て来たら私には手に付けられない。


息を吐いてとりあえず落ち着いてくれたみたいだから、これ以上は何も言わないし聞かない。

個人的な戦う理由が十分にあるっていうのは分かった。真白お姉ちゃんがあまり見せない、超個人的な感情に触れられたのは良かったと思う。


私だから見せてくれた部分、なのかな。うぬぼれかもだけど、妹の特権なのだとしたら悪い気はしないけど、さっきの阿修羅は二度と拝みたくないなとも思う。複雑な気持ちってやつ。


「他にも理由があるの?」


【もう一つの理由は戦って勝たなきゃ、未来はどんどんショルシエの都合の良いように進んでいくから、ね】


戦わなければ、戦って勝たなきゃ私達は私達の欲しい未来が手に入らない。これは最初の話にも通じる話だ。


戦いに勝った方が歴史を作る。その後の決定権を握る。その決定的な、分水嶺ってやつが今私達の目の前に迫っている。

いや、強制的に突き付けられている。ショルシエの『獣の王』としての能力によって。


かつて『獣』と呼ばれていた妖精とその王であるショルシエ。配下である妖精は『獣の王』のショルシエの命令に逆らえず、号令一つで『獣』に逆戻りしてしまう。


その真実を見せつけられ、喉元に突き付けられた私達にはもう時間が無い。時間が無いってことは手段を選ぶ猶予が無いってこと。


【多少無理矢理にでも、戦いの場にショルシエを引きずり出す必要がある。そのためには戦争っていう形だけでも作る必要がある】


「戦争って、形……」


【ショルシエが望む形よ。悔しいけど、ショルシエが望むのは私達が苦しむ姿を見ること。望まない身内同士の争いをせせら笑うつもりなのは想像がつくわ】


「ショルシエが望むのに、それに乗るの?」


それはまさにショルシエが望む、私達の負けシナリオってやつじゃないのかって思うんだけど、違うのかな?


ショルシエが妖精を操って同士討ちをさせたり、帝国と私達を戦わせて傷つけあうのを高笑いしながら見下ろしているのは確かに想像するのは簡単で実際そうだと思う。


アイツはそういうヤツだ。ある意味単純っても言えるけど、本当に趣味の悪さだけは天下一品。

まさに獣並みの品性だ。最悪の一言に尽きるよね。


【悔しいけど、そうでもしないとあの女は安全圏から出て来ないわ。自分の描いたシナリオ通りに事が進んだと分かれば油断も生まれる。そのためには一番望んでる全面戦争って形を作らなきゃいけない】


「わざとショルシエの望んでいる形を作って、釣るってこと?」


【そ、一種の罠ね。不確定要素も多いし、考えることは山ほどあるけど時間が足りないから、完璧な作戦は難しいのが正直なところだけど、やるだけやるわ】


自分が最も望む形を、敵が自分をそっちのけで同士討ちを始めて、憎しみが生まれていくサマを見ることが出来るのなら、確かにショルシエは特等席で見ようとするかもしれない。


そうじゃなくても浮足立ってくれれば御の字。付け入る隙を作るための一世一代の大博打。

それが、真白お姉ちゃんが『戦争をやる理由』。


【墨亜の言うこともごもっともよ。あんなに戦争はダメだって言い続けてたヤツが、いざ蓋を開けてみたら戦争をやろうって言ってるんだもの。……ごめんね】


後悔している。本当はこんなことをしたくないって言うのは声音だけでもよく分かった。

小さく震えも感じる声がこれが嘘でも演技でも無いって証明だ。それに真白お姉ちゃんはそんなことしないしね。


文句を言うなら、そうしなきゃいけないような状況を作り続けているショルシエの方に言わなきゃいけない。

やっぱり、無理矢理にでも表舞台に引きずり出して、ぶん殴るしかない。


「話してくれてありがとう。納得出来たよ」


【……そう。こちらこそ、ありがとう。話したら少しスッキリしたわ】


真白お姉ちゃんも一人でいっぱい抱え込んで、少し疲れてるのかも。私と話しをしたことで少しでもリフレッシュ出来たのなら私としても嬉しい。


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― 新着の感想 ―
墨亜「恐ぁ。真白お姉ちゃんの逆鱗に触れたら、多分あんなになるんだね。」 ショルシエが真白の逆鱗を安全圏から突きまくっていたからですけどね。 相手の土俵に乗らないと出てこないのだからしょうがない。 出…
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