星の道導
【墨亜、そのことは後で2人で話しましょ? 今は『繋がりの力』の伝承についてだわ】
「私も言いたい事はありますけど、今は後回しにします」
言いたい事は皆あるだろうけど、今の話題は『繋がりの力』についてとそれが真白お姉ちゃんの埼玉の実家にあるかもしれないってことだ。
切り離して考えないと、ややこしくなっちゃうし脱線しちゃうしで良いことなし。
今は今しなきゃいけない話をしないと。
【で、人間界に戻るかどうか何だけど、先に本人に直接聞いてからにしようかなって】
「本人?」
本人に聞くって、どういうことだろうと首を傾げていると隣にいる紫お姉ちゃんは深刻そうな顔をしている。あれ、何かあったっけ? ヤバい、本気で覚えてない。
何も思い出せないことをポーカーフェイスで隠しつつ、2人の会話を聞くことにする。口を開いたらボロが出るからね。
「良いんですか? 一応、私達の間で話し合って決めたことですけど」
【まぁね。メモリーの中にいる人達と会話するのは死者と会話することと同じだし、あんまり良くないことだよねってことで決まって、距離を置くことが話し合いで決まったけどさ】
あ、そういえばそんなことを随分前にしていたような気がする。もう年単位で前の話だし、私はメモリー使わないし、中学生になったばかりで疲れてた時だったりで全然話を聞いて無かった気がする。
実際、今の今まで全然忘れてても問題なかったしね……。このまましらばっくれよう。
【最近だと色々状況が変わってるじゃない? 要ちゃん周りなんてそれこそそういうのが身近だし、あんまり口煩くしても仕方も無いのかなって】
「まぁ、彼女は特例ではありますけど、それを言われると確かに……。気にし過ぎも良くないんでしょうかね」
【難しい話だとは思う。ようは、周りに吹聴しないようにすれば良いのかなって。少なくともメモリーの追加製造はするつもりもさせるつもりもないよ。あの技術は正真正銘、私達の代で終わりにすべき技術だと思う】
「それは賛成です」
また難しい話をしている……。メモリーについて私達の中で決めた約束を少し緩和しようってことっぽい。
メモリーの中身は基本的に死んじゃった人の魂だ。それと意思疎通出来るのはおかしいからやらない方が良いよね、ってことなんだけど、そもそも要お姉ちゃんとかはなんか中に自分のご先祖様を宿しているらしいし、千草お姉ちゃんは地獄に行って自分の魂改造して来たらしいし。
滅茶苦茶やってる人が既に一部いるのを考えると、約束に固執しているのもね?って感じはあるかも。
【何より、四の五の言ってられる状況じゃなくなったし、碧ちゃんから頼まれててさ】
「碧ちゃんからですか?」
【うん、『優しさ』のメモリーの中にいるテレネッツァさんと話がしたいんだって。ほら、テレネッツァさんってサフィーリアさんの実のお姉さんだから。碧ちゃんは色々と積もる話があるんじゃないかな】
なるほど、タイミング的にもちょうどいいのか。
碧お姉ちゃんからのお願いがもうあって、近々『繋がりの力』を使ってメモリーの中にいる人達と話しをするのなら、その時に真白お姉ちゃんもプリムラさんと話をしちゃった方が良いよね。
効率とかそんな無粋な話じゃなくて、ホントに色々なことを考えると、ね?
だってほら、真白お姉ちゃんが王様になるっていうなら、先代の女王から直接アレコレ聞いておいた方が良いに決まってる。
側近の人達が知らないことだって山ほどあるハズ。聞けるなら聞いておいた方が絶対に皆の為になるもん。
そのためになら、私は『繋がりの力』を有効活用するのはアリだと思う。特権だし、本来そういう使い方をするものじゃないんだとしてもさ。
四の五の言っていられないって状況もある。使える手札は切りたいよね。




