星の道導
大昔の妖精界で活躍し、今は英雄として祀られている『アステラ』の力を受け継いだからだ。
その能力は未来を視ること。
今はたった数秒先の未来しか視ることが出来ないけれど、この数秒が戦いの中ではどれだけの意味を持つかは今までの経験から嫌でもわかる。
たった数秒、されど数秒。次に相手が何をしてくるのか、不測の事態が起きないか。これが分かるだけでどれだけ安心できるか。
乱発出来るわけじゃないし、常時使えるわけじゃない。ただ、ここ一番の決め所を絶対に外さないように出来るっていうのは本当に強い。
それにアステラから受け継いだ能力はそれだけじゃないしね。
この前はぶっつけ本番で使ったし、ちゃんと制御出来てなかった。それがこの前一度使った事で色々理解出来た部分も多い。
それが未来視以外の能力、っていうかアステラの戦闘技術を知ることが出来たって感じかな。
アステラがやってることは思うに結構めちゃくちゃなことで、多分メモリーの原理に似ている。
やってること結構まんまだしね。
生きている側からのアプローチか、既に肉体を失った魂側からのアプローチの差、かな。どうにも要お姉ちゃんも私と似たような状態になっているらしい。
メモリーとSlot Absorberが魂から魔力とかを引き出しているのに対して、魂側からのアプローチは私達の身体とか魂に別の魂か意思が入り込んでる感じ?
何せぜーんぜん原理が分からないから説明が難しい。ふんわりとした私のイメージだけど、うーーん。ダメだ、私の語彙じゃ表現できない。
「スミアは真白さんの真似をすぐしようとするよね」
「えー、そうかな?」
「してるしてる。まだ実際に会ったわけじゃないけど、何て言うかお姉さんみたいになりたいんだろうなぁって感じることがあるかな。難しい説明をしようとする時とかさ」
指摘されたクセのようなモノがあるか考えるけど、全然そんなつもりがないから困る。そんなことしてた? ホントに?
難しい言葉とか言い回しをしようとしてた、とかかなぁ。お姉ちゃん達の説明って結構小難しい言い回しが多いし、その影響かもしれない。
「僕は別に良いと思うけどね。僕だって兄さんのやり方とかに憧れるしさ」
「末っ子ってそういうもんなのかもね」
仲が悪いんだったら知らないけど、お互い兄弟仲が悪いってわけじゃない。むしろ良い方だと思う。
スタンの方が今拗れてるだけでさ。スタンが今、皇帝のお兄さんに怒っている理由の大半が実の兄だからってところもあるだろうし。
私も千草お姉ちゃんか真白お姉ちゃんが間違ったことをしてるって感じたら物凄く怒るしね。
「憧れてるからこそ、間違ってるって思った時の忌避感が強いのかも」
「あー、解釈違いってヤツだ。私のお姉ちゃんはこんなことしない!! ってヤツ」
「それだ。確かにそれに近い」
私も真白お姉ちゃんに問い質したいことはある。今回の戦争についてだ。
今後、真白お姉ちゃんは戦争を指揮する側になる。誰よりも戦争は良くないと言っていた真白お姉ちゃんが、だ。
どんな理由があろうとも、戦争という形を取らないように人々は動くべきだし、実際にそうなってしまった時、どれだけ凄惨なことが起きるのか、私に教えてくれた。
時には実際に戦争、紛争地帯に連れて行かれて、その現状ってのをまざまざと見せつけられた。
本当に酷い状況だった。軍隊同士の戦いが戦争のハズなのに、戦争が長期化すればするほど、その矛先は互いの国民に向いて行く。
軍を削ってダメなら、その背後にいる国民を弱らせようとしてくるんだ。これが民族間や宗教間の戦争だった場合はさらに酷い。
何故なら、最初からターゲットは自分達にとっての異分子、異文化、他の宗教や民族だからだ。
そうなると最初から民間人を容赦なく、無差別に攻撃する。こうなった戦争が起こす悲劇を真白お姉ちゃんから私は教わっていた。




