青くて碧い
家に帰って、夕飯を食べて風呂に入り、成也とみなもを寝かしつけて、ウチはまた家にあるバーカウンターの洒落た椅子に腰かけていたわけなんだが。
「流石は世界の諸星グループの社長さん。私生活も洒落ててカッコええわぁ」
「そうかい? そう言ってくれると嬉しいね」
「いつまでいんだよ」
何故か鼓も同じ席について、翔也さんと話をしてるんだから意味不明だ。いやお前帰れよ。そこそこ良いところのホテルで寝泊まりしてんだろうがよ。
なんでウチで飯も風呂も済ませてここにいんだ。
「ケチ臭いなぁ。友達の1人くらい泊まらせてくれたってええやん」
「どんだけ面の皮厚いんだよ」
友達の1人くらい泊まらせろってまぁまぁトンデモ発言だろ。1人泊めるって結構負担でかい行為だろ。ケチとかそういうレベルで済むかよ。
「まぁまぁ、碧の友達なら俺は歓迎だよ。しかも新しい友達だし、色々普段の碧の聞けない話を聞いてみたいな」
「義父はなんでノリノリなんだよ。お袋もなんか言ってやれよ」
「1人くらい増えたって別に平気よ。何回朱莉と紫が突然泊まりに来たと思ってるの?」
「うぐっ」
それを言われると弱い。小学生くらいまでは紫と朱莉が突然泊まりに来たり、逆に紫か朱莉の家に突然泊まりに行くこともちょくちょくあった。しかも連泊で。
定期的に起こっていたそれに対応してくれたのは間違いなくお袋達だ。その頻度に比べれば鼓の一日だけの泊まりなんて可愛いもんだ。
「さて改めて今日もお仕事お疲れ様、碧。大活躍だったらしいじゃないか」
「大したことねぇって。数ばっかりの雑魚魔獣だったからな」
群れているから脅威度が上がっていただけであって、あの魔獣単体の脅威度はC程度。群れの規模がデカくなれば相対的に上がって行くが、あの群れなら精々A以下とB以上ってところか。
A級魔法少女が複数いれば対応自体はそこまで難しいものじゃない。後輩たちだけでも対応だけは出来ただろうが、巣の対処を考えた時にウチが出た方が良かった。
何よりあの手の昆虫型魔獣はとにかく数が増えるのが早い。巣ごと駆除しないと収拾がつかなくなる可能性があった。
「後輩たちにゃ悪いが、ウチがやった方が確実だったってだけだ」
「それが最良の判断だと思うのなら、そうすべきだよ。特に魔法少女は命を預かる仕事。スピードと確実性が求められるからね」
「ワンミスが命取りだからな。ただの雑魚なら問題ないが、巣を守ってる奴らは一段強いし」
「その判断が出来るのは流石だね。魔法少女の顔なだけはある」
頭をぽんぽんと撫でられて、恥ずかしいから止めろと手を払っておく。鼓の前でやんなよそれ。
「なんやなんや、ウチらの総大将もまだまだ子供やな」
「ぶっ飛ばすぞ」
ほら見ろ。ニヤニヤしながらこっち見てやがる。後で覚えてろよ。訓練場でしばいてやる。
むすっと睨みながら翔也さんが作ってくれたノンアルコールのカクテルを口に含む。今日はカシオレ風のノンアルカクテルだ。甘くて飲みやすいから結構好きだ。お袋曰く、アルコールが入ってる方は飲み過ぎる可能性があるから気を付けた方が良いらしい。
「総大将?」
「うちら、現役魔法少女のトップやから総大将って呼んでるんや。かっこええやろ」
「良いね。碧にはぴったりじゃないかな」
「んなわけあるか。恥ずかしいから止めろって言ってんのに」
ちっとも変えやしねぇんだから半分はからかってんだよコイツ。ホント良い性格してやがるぜ。
理屈は通ってるかも知れねぇが、そんなあだ名付けられたら恥ずかしい以外にねぇだろうよ。
なんだよ総大将って戦国時代じゃねぇんだから。
「良いじゃない。私は誇らしいけど」
「なんでお袋もノリノリなんだよ。勘弁してくれ」
「多数決で決まりやな」
「よっ、魔法少女の総大将」
多勢に無勢で勝ち目がねぇ。ウチより口の回る連中ばかりで勝てる気もしねぇしよ。畜生め。




