青くて碧い
実際、応援はすぐに来た。この3年間のうちにこの街に現れた10数名の新入りの魔法少女。
まだまだ新米だが、ウチらがしっかり鍛えてある。ランク的にはCからBだけど、戦闘能力ならA相当の未来のエースも育ってる。
「アズール先生!!」
「マイム、この場を任せる。1匹も街に通すな」
「先生は?」
「巣を潰す。そっちは出来るな?」
筆頭なのは『流蘭の魔法少女 マイム』。B級だが、頭がキレて機転が利く。少々火力不足が課題だが、水の鞭から繰り出される魔法は範囲、手数、汎用性に優れていて隙が無い。
同世代からも一目置かれる次世代のエース候補ってところだな。
「わかりました。……お気を付けて」
「任せろ」
こっちの指揮をマイムに任せて、巣を潰すために街の外に足を向ける。
だがスズメバチ型の魔獣に塗れてて、このままじゃ進めそうにない。
まずは目の前のこいつらをブッ飛ばす。
「巻き込まれんなよお前ら!! 『固有魔法』っ!!」
こういう時はコレに限る。数だけはいるし、ついでに減らしてやるよ!!
「『深き紺碧の大海』ッ!!」
轟音を立てながら、『ヴァルティチェ』から吹き出した激流が大渦を作り出して目の前のスズメバチ型魔獣も街の外の森の木々も巻き込んで薙ぎ倒して行く。
スズメバチ型魔獣なんて巻き込まれたが最後、あっという間にバラバラだ。
「す、すご……」
「アズール先輩、やっぱカッコいい……!!」
「ぼさっとするな!! 避けた魔獣を逃すな!! 絶対にこの場所で全滅させろ!!」
『固有魔法』の一撃に見惚れる新米達をマイムが怒鳴り飛ばし、撃ち漏らしの魔獣達を手早く魔法や各々の武器で撃ち落として行く。
マイムを筆頭に、B級魔法少女達が中心になって連携をしながら、微妙に倒した数の競争のようなことになっているのを見て少し笑う。
良いね、競り合える同僚がいればいるほど良い。ライバルの存在ってのは成長を促すからな。
ほどほどにやる分にはほっとくことにしている。
「さて、巣はっと……。へっ、わかりやすくて助かるぜ」
大規模な魔法に刺激されたのか、スズメバチ型魔獣が同じ方向からわらわらで出て来る。
おかげで巣のある方向が丸わかりだ。湧いて出て来ている連中もそこそこに間引きしながら巣を見つけて潰す。
時間はそうかからねぇだろ。さぁて、さっさと済ませるか。成也とみなもも待ってるしな。
『ヴァルティチェ』を一振りして水流を作り出してそこに飛び乗る。
水流に乗って進みながら、魔獣を斬り伏せて行く。
これがウチの高速移動法だ。激流の魔法少女らしいだろ? 結構気に入ってるんだぜ。
「オラオラオラ!!」
振り回される『ヴァルティチェ』本体と吹き出す水流を魔獣に巻き込むようにしながら突き進んで数分、魔獣の密度がドンドンと高くなって行く。
巣が近い証拠だ。この数を捌き切るにゃ、流石に後輩達じゃ無理だな。
【Slot Absorber!!】
【『優しさ』!!】
「ちっと力、借りるぜ。テレネッツァ」
サフィーリアの実の姉。その魂が宿る『優しさ』のメモリーをSlot Absorberを差し込んで強化変身をする。
思うところが無いわけじゃねぇ。サフィーリアが道を間違えた時、止められなかったウチの責任をテレネッツァが許してくれるかはわからない。
今は前みたいに会話しないようにしたんだ。死んだ奴と生きてるウチがそうするのを当たり前にするのは良くないんじゃないかって言う、ウチらの中の取り決めみたいなもんだ。
いずれ、メモリー自体も無くそうって話にもなってる。魂を捕まえてるみたいなもんだしな。良いことではねぇだろうよ。
「ーーアズール・アプサラー!!」
テレネッツァは力を貸してくれたみてぇだ。まぁ、アイツがケチくさいことをしないのは知ってるけどよ。
ありがとう、って言葉しか出て来ねぇよな。ホントに申し訳ない。
『ヴァルティチェ』を握る手に力が入るが、今は目の前のことに集中する。
有象無象ではあるが、特に毒はウチでも喰らったら致命的だ。
「オラッァ!!」
強化された水流が周囲一帯を飲み込んで行く。巣を潰して、女王蜂とその他を完全に駆除するのには予定通りそう時間はかからなかった。
作者の自宅にシロアリが発生(去年に続いて二回目)したので、もしかすると更新が滞る日があるかも知れません。
極力更新を心掛けますが、申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。




