マジックチャージャー
「まぁ、あくまでこれは機械的な仕組みの話だけれども、ターボというのは過給機と呼ばれるエンジンのパワーを上げる装置だ」
「エンジンを回すと排気ガスが出るだろ? ターボはそれを使ってタービンつうのを回してエンジンのパワーにタービンのパワーを追加する仕組みだ」
「他にも過給機にはスーパーチャージャーというエンジンが回転する力を使ってタービンを回して過給する方法もあるのだけど……。まあ、今説明することじゃないね」
過給機、というものを説明されたボク達ですけど、ニーチェと一緒にぽかーんとするしかないっす。
男の人って車好きっすよねぇ。いや、ボクも嫌いじゃないっすよ?たくさん見てますしね?でも仕組みとか車種とかパーツとか、そういうのを言われると流石にちんぷんかんぷんっすね。
基本的にお父さんは工場に入れてくれなかったですしね。子供の事はよく勝手に運転席に座ってハンドル握ってぶんぶーんなんてやってたっすけど。
「ごほん。つまり、だ。『魔動エンジン』の仕組みなどを解明することによって、魔力を使った過給機の開発などが出来た場合、舞君のスピード性能を飛躍的に上昇させることが出来る可能性がある」
東堂さんが咳ばらいをしてから話しを切り替えると、成程~とボクとニーチェは納得します。
技術転用ってやつですね。結構聞きますけど、こういう場面でも登場するんすねぇ。
頭の良い人達の発想は僕らにはわからないっすね。
「それって魔法だけで再現できないの?」
「複雑な術式になるだろう。真白君や紫君みたいな稀代の魔法を操作能力を持っているのなら使えるだろうけど、直感型の舞君には向いていないんじゃないかな」
「技術研究所の連中はそれを敢えて機械化することで、直感的な操作にも対応出来るんじゃねぇかって考えてるみてぇだな。確かに、車でもタッチパネル操作より、ボタンやダイヤル操作の方が直観的に操作できるからユーザーには人気なんだ」
はぇ~、液晶より物理スイッチの方が良いんすね。意外っす。液晶タッチの方が如何にも便利そうなのに、現実は物理的な操作が出来る方が便利で重宝されてるんっすね。
印象だけで決めない方が良いってことっすね。
魔法も同じ。やっぱり出来ることと出来ないことがあるんすね。
「魔法は自分で制御するようなことは難しいところがあるからね。機械的にセンサーとかコンピューターで制御した方が小型化も出来る」
「出力を出すなら魔法の方が上だな。エネルギー効率が段違いだ」
「つまり、その両方の良いところ取りをした装置の開発とそのプロトタイプを舞にぶん投げる、ってことね」
「そういうことになる。舞君ならおそらく多少でたらめなモノでも扱えるハズだ」
なんか肝心なところでアバウトっすね。なんでそこでボクに丸投げされるんすか。いやまぁ良いんすけど。
新しいモノにはワクワクしますしね。それでスピードを上げられるのならなおの事、っす。
ボクがまた不服そうにしていると東堂さんは何度目かわからない微笑を浮かべながら。
「それだけ君の才能を評価しているってことだよ。正直な話、君は速さをセーブしている。そうだろう?」
「む……」
「……アンタ、まさかまだアレで速さのセーブしてるの?」
「まぁ、そうっすね。出そうと思えばもうちょっと出せますけど」
ぶっちゃけスピードだけを考えるのならもっと速くなることは出来るっすよ? ただ出来るだけで使い物になるかは別っす。
単純に身体が追い付かないんっすよ。どんだけ身体を鍛えても、魔力の使い方とかを工夫しても、今出している最高速を超えようとすると身体がバラバラになりそうになるんす。
スピードを出し過ぎて首が折れたら本末転倒じゃないっすか。
「じゃあターボで補強したらもっとダメじゃないですか」
「嬢ちゃん。チューニングってのはな、パワーを上げるだけじゃダメなんだ。パワーを上げたらそれに負けない足回りとボディの剛性、ブレーキの性能も上げねぇとな」
「ようはトータルに強化しなければならない。しかし、舞君はそこに生物的な限界を感じてしまっている。そこをテクノロジーで解決する。魔力の過給機でブーストするというのはそういうことを総合して言っているんだ」
ボク、大改造計画ってことっすか。いや、なんだか話が分かって来たらワクワクしてきましたね。




