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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
決戦に備えて

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地獄から帰って来た者


「なんか他に気になることはなかったの?」


「と言ってもな……。敢えて言うならやはり性格は豹変していたように思う。元々猫を被っていたと言われればそれまでだが……」


生憎、私とサフィーリアは面識はあれど交流は浅い。出会ってすぐにバラバラになってしまったから仕方がないんだがな。


サフィーリアの性格はどちらかというと真白や紫、墨亜達に似ている。

クールで感覚よりも知識や理論に基づいた技術などを好むタイプだ。


ただし、才能的には感覚派という難儀な一面もあったようだ。

知識や理論で武装しても、使う時には感覚に頼ってしまう。そのためやりたい事と出来る事の齟齬が大きく、訓練では苦労していたようだ。


それでもとびっきりの感覚派で同じ属性を操る碧の指導でここ最近は腕を上げていたとも聞いている。


「私には猫を被れるほど器用な性格では無かったと思うけどね」


「同感だな。どちらかと言えば不器用な性格だった」


言いたい事も意見もやりたい事もあるが、頭が回り過ぎるんだろう。

自分の我を通す時にアレコレ考え過ぎて発言の機会を逃した結果、何も言語化出来ずに黙ってしまう。


タイプとしてはそういうタイプだと思っている。その辺は上手く周りが引き出してやればいいんだがな。


敢えて言うなら、碧はそこをしくじったのだろう。本人はフォローが出来てるつもりだったのかも知れない。


モチベーションの低下がそういう当たり前に出来ていたこと。周囲の感情なんかに機敏な碧らしい部分のパフォーマンスを無意識に下げていた。


なんてことはよくあることだ。


モチベーションとはそのくらい大事なんだ。露骨にパフォーマンスが変わるからな。


「妹分達が次々に巣立ちしたのも効いてるのかもな」


「私達が悪いって言うの?」


「違う違う。面倒を見てた妹分がいなくなって、手が空いたら何をして良いのかわからなくなったのかもな、と思ってな」


アイツはずっと誰かの面倒を見ていたからな。特に朱莉と紫はそれこそ本物の姉妹レベルで一緒にいたらしい。


その2人が3年前を境に一気に碧の手から離れて行った。

そしたら碧は自分に時間を割ける。が、今まで人に時間を使って来たから自分で自分に時間を割く方法や理由がわからない、とかな。


有り得そうな話だ。本人が自覚してるかは置いといて、だが。


「まぁ、検査ついでに帰省するんだろ?そこで何か刺激があればいいがな」


「まぁ、碧のお母さんが何もしないってことはないと思うわよ。それがどっちかはわからないけど」


「そこは親の考え方次第だからな」


隷属紋の後遺症や他に身体的異常が無いかを検査するのに、碧は一度人間界に戻っている。


そのついでに実家に帰らせるらしいが、そこで何を言われるかは親の考え次第だ。


辞めてもいいと寄り添うのか、しっかりしろと背中を叩くのか。

それによって結果は変わりそうだ。


「サフィーリアの件は調査を待つしかない。と言っても中々難しいがな」


「何か大号令でもあれば良いんだけどね。その音頭を取る奴がアッサリいなくなったからなぁ」


「……あ!!」


調査を待つしかないのに調査もままならない。誰かが強いリーダーシップを発揮しないとこの状況は打破することは難しいな。


と朱莉と2人で溜め息を吐いたところで、会話に参加せずに傍観していた要が急に声を上げる。


「そう言えば何だけど、サフィーリアちゃんの尻尾。おかしくなかった?」


「尻尾?」


「うん。尾鰭の形が変わってた気がするんだよね。なんて言うの?三又に分かれてたと思う」


そう言われればそうだったかも知れんが、具体的には覚えていない。

だが、一応覚えておいても良さそうだ。


「で、そろそろ本題に入ってよ」


「わかったわかった。地獄の話もしてやるよ。こっちは長いぞ。まず、私達の師匠たちについて話さないとなーー」


尾鰭について、不確定ではあるが変化があるなら頭の片隅に置いておいていいだろう。


そして騒ぐ朱莉に地獄についての話をしてやる。この話は長いんだがな。仕方ない。


腹を括って話してやろう。

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