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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
決戦に備えて

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地獄から帰って来た者


「だがアイツはこちらに来てもモチベーションを持ち直すことは出来なかった。職務は果たすが、それ以上の何かを自分から行動するだけの熱量をアイツは失ってしまった」


もう、復帰は難しいかもしれん。正直にそう思う。


一般的な会社員なら、言われたことをやっていれば最低限の仕事をしたことにはなるだろう。

だが私達は違う。規則やルールは勿論あるし、それを破ればとんでもなく怒られる。だがそれ以上に他人の命や生活を人間以外の存在から守る仕事をしている。


そのため、どうしても現場判断が重要視される。というか、上からの指示を待っているうちに10人20人平気で死ぬ。

私達は軍や警察とはまた違うからな。現場の魔法少女が持つ権限というのはそれ相応に大きいんだ。


勿論、責任も伴うがな。まぁその辺は今は重要じゃない。


「何も魔法少女を辞めるなと言っているんじゃないんだ。ここにいるなら、今の碧の状態を私は見過ごせなかった」


「それはまぁ否定しないわ。遊びじゃないしね。あのままいても死ぬハメになってたと思うわ。そういう意味では今回は良いタイミングなんじゃない?」


私達の仕事はただでさえ即断即決が求められる。ミスの有無よりも一瞬の判断の遅れが自分と民間人の命に直結する。

そういう意味では碧は非常に優秀なリーダーだった。持ち前の勘の鋭さから来る判断の素早さは私達の中でも随一だ。


私達はいつだって求められていること以上の結果を出さなければならない。言われたことだけをやっていては足りない。

民間の支持を得ていないと出来ない仕事でもある以上、そういう面ではとにかくナイーブな職なんだ。


それを買われてのリーダーがそれを失ってはな。


もし、モチベーションの維持が難しいのなら速やかに引退すべきだった。それを止める権利を私達が持っているわけでもない。


「碧のことについてはもうなるようにしかならん。何か新しいモチベーションを見つけられればいいが、そうじゃないなら引退を私から勧告するさ」


「私がやった方がいいんじゃないの?」


「汚れ役は年長者がするさ。なんだかんだ、ずっと張り合って来た仲だしな」


碧にとってはこれが最後通告というヤツだ。これでダメなら、アイツはもう現場に立てる魔法少女じゃない。

今までのようにメディア露出やら後進の育成やらはしてもらうことにはなるだろうがな。


一線を退く、というヤツだ。一度発破をかけた以上、辞めろと言うのは私が妥当だろう。


「それよりも、だ。問題はサフィーリアについてだ。誰もがまさか、と思っていただろうからに中々厄介な問題だ」


「裏切るような子じゃなかったと私から見ても思ってる。話を聞く限りじゃ、まるで人が変わったかのようだったらしいじゃない? ビーストメモリーを持っていたっても聞いているし、彼女も被害者の可能性はない?」


「わからん。ただ、隷属紋を受けたと思われる形跡はない以上、操られているわけではない。妖精だから、『獣の王』の影響を受けたとも考えられるがやはり暴走とは程遠い状態だったのは私自身が確認している」


碧のことよりも事態の深刻度的にはサフィーリアの方が具合が悪い。


味方が寝返った、というのはそれくらい影響がデカいんだ。特に彼女はレジスタンスの中でもかなり私達に近い位置にいた。


碧の側近と見られていることも多く、信頼もあった人物が裏切りをするということは組織としては他にも裏切り者がいるんじゃないかと思わざるを得ない。


ここを洗うにも時間がかかるし、労力も金もかかる。潜り込んだ方法がわからなければ防ぎようもないため、こちらとしてはとにかく徹底的に調べ上げることくらいしか出来ないのだが……。


「こうも状況が混乱していてはな調査もままならん。分かっている事と言えば、サフィーリアには喋るだけの意思があったという事くらいだ。少なくとも隷属紋ではない」


「だとするなら、『ビーストメモリー』あたりかしらね。実際使っていたんでしょ?」


「あぁ、『人魚』というビーストメモリーだ。恐らくは水属性や海属性を強化するタイプだ。サフィーリアクラスの実力を持っているなら真っ向から戦えばかなり厄介な相手になる」


この前の私はほぼ奇襲のような形だったからな。有利な条件を整えられれば不利だったのは私達だ。特に海属性はそういう気質が強いからな。


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