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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
蛮族エルフと解けない誤解

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欲に溺れた守り人


「楽しんでるか大将?」


「そこそこかな」


1人で考え事をしているとリベルタさんが木のカップを片手にやってくる。少しお酒くさい。この世界にもアルコールがあるんだなぁと思いつつ、適当に返事をしていた。


「なんでぃ、考え事か?」


「そんなところ」


色々な思惑や考え方が入り混じった事件だったと思う。 正直疲れた。自分勝手な人達に振り回されたというか、久々な感覚だってのがね。


私の両親がこんな感じだったからさ。自分の考えとか思想とか、そういうのを私を含めて周囲に押し付けて来るこの感じ。


胸の底が騒つくこの感覚を思い出すハメになるなんて思いもしなかった。


「大将も色々あるってわけだなぁ。ちっと意外だぜ」


「意外なんんだ」


「俺の中じゃ大将はお気楽な印象だったからな」


そう言われてあはははと笑う。そう思ってもらっているのなら、私の仮面も上手く素顔をかくせているってことかな。ある意味自信に思っていいかもね。


ただまぁ、その仮面も剥がれかけているみたいだけど。高校だとそうそう気が付かれなかったんだけど、気が緩んでたかな。

それともリベルタさんの勘が良いだけか。どっちかというと後者な気がするけどね。リベルタさんってああ見えて人の事をよく見てると思う。


「ま、詳しくは聞かねぇよ。無理に聞いてもロクなことねぇしな」


「ロクなことにならないっていうか、ロクでもない話かなぁ」


「ははは、なおさら聞くもんじゃねぇな」


人の悪意は両親と中学までの同級生達から嫌というほど向けられた。うんざりして逃げ出すくらいには嫌だった。


まさかそれをまたこうやってまざまざと見せつけられることになる事。そして、その悪意を振り撒く相手に自分の本性を見破られたことが自分が思っている以上にショックみたいだ。


撃たれ強くはなったつもり、だったんだけどなぁ。


「ま、なんだ。大将には世話になってるし、いつでも相談に乗るってだけは言っておくぜ。一応、これでも大人だからな」


遊び歩いてた俺が大人なんて言うのもおかしな話だけどな、とリベルタさんは豪快に笑いながらカップを煽って入っていたお酒を飲み込む。

宴の席を楽しみながら、私のことにも気にかけてくれるのは本当に凄いなぁと思う。


リベルタさんの言う通り、大人だ。そして、そんな良い人を戦闘では役に立たないと判断した私が確実にいることにも嫌気が差す。


切羽詰まったり、精神的に余裕が無くなるといつもこうだ。自分の汚くて嫌なところが顔を出して、無意味に人を傷つけるんだ。


「……あんま思いつめんなよ大将。いつも通り気楽で良いさ。大将がその調子だと、俺も調子が狂っちまうぜ」


「うん、ごめん。……いや、違うね。ありがと。少し気が楽になった」


「そりゃあ良かった。っと、なんだかお呼びみたいだぜ」


宴の中心から外れて話し込んでいた私達をリリアナさんと里長さん達が手招きしているのが見えた。

私達はそれに応えて宴の中心であるリリアナさん達のところへ向かう。


「皆、重要な話がある。どうか心して聞いて欲しい」


すると里長さんがざわざわするエルフの人達をなだめながら、話しを聞くように大きく声を張り上げていた。

物静かな里長さんの普段の印象からは少し想像がつかない。


それにしても私達はこの事件を解決する手助けはしたけど、解決した直接的な要因は何と言ってもリリアナさんの熱量。

私達はエルフの里からすれば部外者だろうし、一体どんな話なんだろうか。


「まず1つ。今回の事件は起こるべくして起こった事件だろう。多少の差異はあれど、里の存亡を揺るがす大きな事件がいずれ起きていたと、こうして大きな危機を乗り越えたからこそ強く感じる」


「今回の事件が起きなくても、いつか何かが起きていたと?」


「その通り。今回は盗賊を通じて魔法を独占しようとした愚か者が招き、その盗賊の背後にいた巨悪による事件だったが、いずれは他種族との抗争か、あるいは里の中での揉め事か何事かが起こっていたのだろうと思う」


それに関しては同感だ。エルフの里は外部のヘイトも、内部の軋轢、世代間考え方のギャップ。

それらがいずれは爆発して、大きな事件に発展していたと思う。大小や被害の度合いは多少違うけれど、今まで続いたエルフの里は続かなかったんじゃないかな。


娘のリリアナさんは首が取れるほどの勢いで頷いている。場合によっては、リリアナさんによるクーデターとかもあったかもね。

思考が煮詰まれば、タカ派の傾向ありそうだもんなぁ。リリアナさんって。


「何にせよ、既にエルフの里はそういった事件がいつ起こってもおかしくない状況だった。それを止められなかったのは、里長である私の責任だ。本当にすまなかった」


深々と頭を下げる里長さん。それに困惑するエルフの人達。悪いのは里長さんじゃないけど、長としての責任はあるとは思う。


止められる止められないじゃない。止めなきゃいけないのが長の仕事、多分そういうことだよね。


「こうした状況を引き起きてしまったことを考えると、これからも同じような事件が起きる可能性は依然として高い。今ここで何の変化も無く、元通りの生活に戻れば結局は同じ結末を迎えることだろう」


「では、どうすると?」


「この森での生活はもう限界があるだろう。故に里そのもの解体並びに……、我々エルフは、魔力至上主義からの脱却を目指そうと思う」


里長さんからの発言に大きなざわめきが起きる。一緒に私達も驚きの内容は目を見開くには十分だった。


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