欲に溺れた守り人
リベルタさんに指示を出して、すぐに銃を構える。飛んで来る魔法はそれなりにあるけど、撃ち落とすくらいなら問題無し!!
「おりゃ!!」
引き金を引くと、銃口から複数の弾丸が飛び出る。魔法なのだから何も引き金を一度引いたら弾が1発だけ出て来るとは限らない。
発想次第でどうにでもなる魔法で、私は1度の射撃で多くの魔法を撃ち落とす方法で行く。
「よしっ」
「やるな大将!!」
1発の威力は確かに落ちるけど、やっぱりスカスカな魔法相手くらいだったら相殺出来る。
1発に集中すれば、貫通させて魔法を発動した盗賊を狙うことも出来そうだ。
撃ち落とせればブラザーメモリーが盗賊達の懐に飛び込める次々に空中に攫っては地上数メートルから落とすという割とエグめなことを繰り返している。
骨折くらいで済むだろうし、それで戦意を削げるなら手っ取り早い方が良い。
生憎、盗賊なんてやってる上に里を襲おうなんて人達のことをご丁寧に考えてあげられるほどの余裕はないよ。
「ぐえっ」
「くそぉ!!コイツらつえーぞ!!」
「落とされた奴はほっとけ!!とにかく前に出ろ!!おら、いつまで寝てんだ!!魔法くらいは撃てんだろ!!」
魔法を落とされ、仲間達は空中から落とされた盗賊達の戦意は落ちるかと思ったんだけど、盗賊達はお構いなしに前進を選ぶ。
それどころか落とされて怪我をしている仲間を蹴り上げる始末。
まるで何かに追われて急いでいるみたいだ。
「まだやるの?私達の方がどう考えても強いと思うけど?」
「うるせぇ!!やらなきゃどうせ殺されるかそれより酷い目にあうんだ!!だったらやった方がまだ良いだろうが!!」
殺される……?誰に?盗賊達を従えてる別の誰かがいる?
一体、誰がそんなことを?と考えていると盗賊から悲鳴が上がって、土の塊と一緒に倒れていた盗賊が私達目掛けて投げ付けられる。
「おっと?!」
ブラザーメモリーが土の塊を殴り飛ばし、一緒に投げつけられた盗賊を受け止める。
ぐったりとしている盗賊の容態を確認したかったけど、次から次へとへし折った木やら岩がどんどん投げ付けられて、私達は銃で撃ち落としたり、拳で殴り飛ばしたりしてその場をやり過ごす。
舞い上がった土埃の向こうに半透明なスライムみたいなのが見える。
あの魔法は見たことがある。トゥランの街でブラザーメモリーのお父さんを怪物にして街を襲わせた張本人。
「ファルベガ!!」
赤い髪と青灰色の瞳に割と小柄な身体。機嫌の悪そうなしかめっ面以外はお姫様みたいな風貌のファルベガが自分の操る障壁に腰掛けながら姿を現した。
「なんで貴女がここにいるの!!」
「そりゃこっちのセリフよ、ルミナスメモリー。なんで貴女が行く先々にいるのかしらね」
トゥランでの戦いで明確に敵同士であると戦った相手のまさかの登場に、何故と問いかけるけど当然返事は返って来ない。
ファルベガからしても、私の存在は想定外だったらしい。
憎たらしげに語る口調は相変わらず。そして、自分の目的のためにならどんなことをすることも変わっていない。
「エルフの里を盗賊なんかに襲わせて何になるの?あそこはひっそりとエルフが暮らしているだけの里だよ」
「そのエルフに用があるんじゃない。今のエルフなんてのは取るに足らない陳腐化した種族だけど……」
「やっぱり始祖の魂が狙いってわけだ」
「……へぇ、案外貴女も鼻が効くのね」
私に具体的な目的を指摘されると、ファルベガは目を丸くしてから面白そうに笑う。
やっぱり始祖の魂をメモリーに入れるつもりだ。古代の英雄の魂なんて、とびっきり強いメモリーになるのが決まってる。
渡すわけにはいかない。
「今度こそ痛い目に合わせてあげる」
「そっちこそ、とっ捕まえて出すところに出してやるんだから」
ファルベガをバイザー越しに睨み付けて、戦いに備える。絶対に止めてみせるんだから。




