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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
蛮族エルフと解けない誤解

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欲に溺れた守り人


「で?未だに情報1つ手に入れられてないってわけ?」


スバルと別れた私は姿を変え、粗末な椅子に足を組んで盗賊たちを見下ろす。


連中は揃いも揃って頭を下げて震えているだけ。今まで私の頼んだことのひとつたりとも達成出来ていないことに流石に反省しているみたいだけど、そんなものはどうでも良い。


「す、すみませんファルベガ様。エルフの連中も何も知らないようでして……」


「言い訳なんて聞いてないわ」


「うぎゃっ?!」


流体状の障壁で盗賊の1人を殴り飛ばす。死んでるかもだけど知ったことじゃないわ。


ヴィーゼの街もエルフの里も落とすことが出来ずにちんたらとしている愚図どもに慈悲なんていらないもの。


「なんで私がこんなに怒っているか、頭の悪いアンタ達でも流石にわかってるわよね?」


「いい、1度もファルベガ様に命じられたことを達成出来ていないからです」


そう答えた盗賊をもう一度殴る。地面に転がる薄汚い男が2人になったけど、どうでも良いわ。えぇ、どうでもいい。


どうせ使い捨ての捨て駒ですもの。とは言え、ここまで役立たずだとは思いもしなかったけど。


要衝であるヴィーゼの街を襲い、攻め落とすように言ったのが少し前の話。


元々その地域で好き勝手やっていた盗賊達を少しは使えるだろうと叩きのめして配下にしたものの、ヴィーゼの街を攻め落とすどころか、ちんたらしている間に強力な魔法少女を配置され返り討ちにあう始末。


よりによって配置された魔法少女は『絶炎』と呼ばれる最強クラスの魔法少女。


完全に復活していないとは言え、あのショルシエを大した負傷も無しに撤退に追い込むほどの猛者。

私だって相手にしたくない。こっちに来た魔法少女は揃いも揃ってその辺の妖精より遥かに強いことがわかっている。


ショルシエの情報なんてアテにした私達がバカだったわ。


トピ族を操ってまで襲ったアリウムフルールも、聞いていた話よりも遥かに強く、何も出来ずに終わったことも思い出して更に苛立ちが募る。


他にもトゥランの街を混乱に陥れようとしたらルミナスメモリーとかいう訳の分からない奴に邪魔をされる始末。


特にアリウムフルールの件は思い出せば思い出すほど強い怒りが湧いてくる。

混ぜものの分際で王族を騙っている奴に王家の座は渡さない。そこは私の一族がいたはずの場所なんだから……!!


爪を噛みちぎるほどの力で齧り、募る苛立ちを誤魔化す。


あの混ぜもので偽者を引きずりおろすのはまだ後だ。もっと力を蓄えなきゃいけない。

どんな手段を使ってでも、必ずやり遂げる。必ず、必ずだ。


「何をぐずぐずとしているの?私が命じたのはエルフ族の宝を奪取すること。そのためになら手段を選んでいる暇があって?」


「し、しかし、エルフどもも一筋縄では行きません。魔法を使わない連中ですが、里を守るためには命を捨ててくるようなーー」


「ならアンタ達も命を捨てなさい。それとも、ここで私に殺されたいのかしら?或いは、こうかしらね?」


液体状に広げた障壁を連中の頭上に掲げたうえで、更にビーストメモリーもチラつかせる。


それだけで盗賊達は悲鳴をあげ、中には泣き出す者や後退さる者までいる始末。


最初にコイツらを従える時、ビーストメモリーをコイツらの仲間に使って暴れさせたからね。


さぞかし恐ろしいでしょう。自分達がバケモノに変えられてしまうのを想像するのも、その結果仲間を殺しかねないことも。


ただこのレベルの連中にビーストメモリーを使うのは勿体無い。

ビーストメモリーは使用者の獣性、欲深さや下劣さ。簡単に言えば、その人物の悪意が強ければ強いほど高い能力を引き出せる。


ここにいるような小物ではダメだ。コイツらは日々の生活に困ったから盗賊をやってるだけに過ぎない。


その程度の獣性ではだめ。もっともっと欲深い、どろどろとした野望や負の感情を抱えているようなのじゃないと。


そういう意味では都会のトゥランは欲が渦巻いていて良かったわね。そんな人を探すのにはそうそう困らなかったもの。


「さっさと動きなさい。エルフの里なんてどうなったって構わない」


「り、了解しました!!」


バタバタと逃げるように盗賊達は私の前から駆け出し、エルフの里へと駆けて行く。


必ずあるはずだ。エルフの始祖の魂が。


古代の英雄の魂なんて如何にも強いものを放置しておくなんて有り得ない。

メモリーにすれば有用性なんていくらでもある。ショルシエの対抗策も用意しておく必要もあるしね。


空のメモリーを手に、この後の動きを改めて考える。何度も言うように手段は選ばない。


「ちう……」


そんな私の肩の上、スクィーが悲しげに鳴いているのを私は気が付かなかった。

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