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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
蛮族エルフと解けない誤解

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エルフの里


【さて、肝心の情報というのだけどね。正直に言うとどれも大したものではないとだけは言っておくよ。チナの小さい身体では限界があってね】


「前置きは良いって爺さん。何かあったんだろ?」


何か決定的な話を持って来てくれた、というわけではないと断りを入れられつつ、ピット殿とチナが手に入れた情報とやらを聞こうじゃないか。


私達エルフは里の外に出ても森からは出ない。極端な生活をしている私達には手に入れにくい何かを知らせてくれるのならありがたい。


【まずひとつ。里周辺をうろつく怪しい輩が数名いる。エルフじゃない、他の種族の者だ】


「エルフの里の周りに?」


【周りと言っても、すぐそばでは無いけどね。ただ、明らかにエルフの里を意識して動いている】


数名の者達がエルフの里を観察している、ということか?


思い当たる節が一番あるとすれば……。盗賊か。

最近やたらとエルフの里の周辺に現れ、私達も迷惑している存在だ。


どうにもエルフの里に最も近い街道を狩場に定めているようで、スバル達もこの盗賊に追われてエルフの里にやって来ている。


数回の小競り合いがあったはずだ。あの時は確か、数名同士の争いで我々が早々に追い返したのだが、そんな連中が私達の里に何の用か。


まぁまだ盗賊と決まったわけではないんだが。


「里に何かしようとしてるの?」


【いや、里に直接危害を与えようとしているんじゃない。間接的にだ】


「間接的?」


危害を加えるつもりなら、里を襲うだろう。仮に盗賊だとしてもそうだし、そうじゃないのだとしても里やエルフに何かをしようと考えているのなら、攻撃手段は里そのものへの襲撃だろう。


エルフはそれ以外のコミュニティを持っていないからな。


だからこそ間接的というのが気になる。ハッキリ言ってたかだかエルフの里だ。


魔法を持つ他種族が何かをするために遠回りな手段を使う必要は殆どないと思うのだが……。


【ふたつ目は内通者がいる。怪しい動きをしていた他種族と里のエルフ達数名が接触しているのを見た。しかも人目につかない夜中にコソコソとね】


「……っ!!」


「こりゃ、穏やかじゃねぇな……」


息を呑む、とはこういう時に言うのだな。驚きのあまりに言葉が出るよりも、胸に何かが詰まるような思いだ。


エルフの中に裏切り者がいる。魔力崇拝主義とか、他種族の軋轢とか、そういう種族間の事情では無く、恐らく極めて個人的な事情で私達を売った者が里の中にいる。


怒りよりも、信じたくないという気持ちが自分でも少し意外だった。


なんだかんだでこの里が、この暮らしが私は好きなのだろう。


他のみんなも同じ気持ちかは分からないが、共に過ごす仲間の中に素知らぬ顔をして私達をに危害を加えることを良しとする者が一定数いること。


そのほうがショックだった。


「誰かは分かる?ピットお爺ちゃんからはこっちの様子も見えてるんだよね?」


【見えてはいるけど鮮明ではないし、チナの身体では見つかったら逃げるのは難しい。個人の特定までは難しいね】


ショックを受け、項垂れる私の代わりにスバルがピット殿に追加の質問をしてくれた。


背中をさすってくれる優しさが身に沁みる。


あぁ、世の中にいる人が皆スバルのように心優しい人達ばかりなら平和なのにな。


【ただし、聞こえた言葉の端々から目的はわかっている。他種族の者達はエルフの里にある何かを狙っているらしい】


彼らは何らかの目的があってその襲撃のタイミングとキッカケを内通者のエルフを使って探っているのだろう。


その目的はエルフの里にある『何か』、らしい。


「何かじゃわからねぇぞ」


【すまないね。ここまでが限界だったんだ。元々こんなことを知るつもりじゃ無くて、エルフの里に捕まったスバル君達の救出のために奔走していたわけだしね】


それがあれよあれよというまになんだか別の事態になりつつある。


スバル達には申し訳なく思うし、同時に有り難くも思う。


彼女達がいなければ、エルフは何も知らぬままに近々滅んでいるのかも知れないのだから。


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