エルフの里
「ありがとねー」
里長さん、リリアナさんのお父さんからの許可が出た後、私達はリリアナさんの自宅に招かれてとりあえず一息つくことになった。
「ありがとねって、本当に呑気ね貴女って。何か目的があるんじゃないの?外は結構情勢が荒れてるんでしょ?」
「私はその辺あんまり詳しくないからよくわかんないや」
「……この子、大丈夫なの?」
「あんま大丈夫じゃないと思うぜ。恩人だから一緒にいるんだが、俺がいなかったらどうなってたかわかんねぇし」
リベルタさんの答えに、リリアナさんはでしょうねと返した後、飲み物を出してくれた。
ハーブティー的なものだと思う。花びらが浮かぶ可愛いお茶だ。人間界で出したらSNS映えして流行りそうな見た目をしている。
「とりあえず何とかはしてあげたけど、私が出来るのは精々ここまで。ここから出るには、余計なことをしない、怪しいことをしないことね」
「信用を勝ち取れってことか」
「そういうこと。それに、私から離れて勝手に行動するのもNG。怪しい動きをしたら、私がまず告発するってことは忘れないで。貴女達の無害さを感じてかばったけど、これが最初で最後よ」
今回こうなったのはほとんどリリアナさんの気まぐれと言って良いもんね。
これ以上の譲歩は無し。ここからは私達が何とかしろってことだ。
大変だろうけど、いきなり牢屋にぶちこまれたりするよりは遥かにマシな待遇になったことは感謝しないとね。
「食事とかはどうすりゃ良い?」
「基本的には自給自足してもらう。狩りの仕方とかが分からんというなら教えてやる。食べられなくて死なれても迷惑だからな」
「リリアナさんってば優しい〜」
「君はホントに……。いや、これ以上は言うまい」
食事は基本的に自給自足。この里の様子を見ていればそれは何となく予想が出来る。
いきなり食料分けてくださいなんて言っても分けてくれ無さそうだしね。
この家に来る途中も物凄く睨まれたし、エルフ族以外ってだけでこの里の人達からしたら敵ってことなのかな。
「一つ質問なんだけど、いいですか?」
「構わん。なんだ」
「どうしてそんなに他種族を嫌うんですか?しょうじき不便な生活をしているって言うのはリリアナさんとかは理解してそうですけど」
エルフの里にやって来て1番気になったのはそこなんだよね。
今まで出会った種族の人達は妖精とか鳥人族とか獣人族とか、リザードマンとか本当にたくさんいましたけど、皆一つの街で生活していました。
身体の形も大きさも多分構造とか習性とかも違う生き物が同じ街でせいかつするのはとっても大変だと思います。
でも、妖精界の人達は上手くやりくりしていました。それをエルフ族だけが嫌う理由がイマイチ。
それに、街の中でもエルフ族っぽい人は何人か見かけたきがする。
人間界でエルフと言われていた姿に似た人達だ。
あれがエルフかどうかは分からないけど、そう言う人たちが一方的に嫌われている様子は無かったし、迫害を感じたこともあまり無い。
どうしてエルフ側だけが、こんなに一方的に他の種族を嫌っているのか。
単純に物凄く疑問なんだよね。だって仲良くしたほうが良いでしょ?
「……間抜けに見えて、案外鋭いな」
「人を見る目は確かだぜ。なんつーか、大将は鼻が効く。初対面で人の善し悪しがわかってる節があるんだよ」
んー?だって何となく分からない?この人嫌な人だなーとか、この人良い人そうとか。
私達を最初に襲ってきたエルフの人達は興奮し過ぎてちょっと分からなかったけど、リリアナさんは一目で良い人だなって思ったし。
ハッキリとわかるわけじゃないけど、人って見ればわかるでしょ?
「それができたら苦労しねーのよ」
「なるほど、スバル自身が持つ固有の勘みたいなものか。色々聞いてみたいところだが、今はそれを置いておいて、エルフが何故他種族嫌いかについて話そう。いくつか理由があるのだけど、まずエルフは魔力崇拝主義ということだ」
「魔力崇拝主義?」
また知らない言葉が出てきた。うーん。難しい話は苦手なんだけどなあ。




