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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
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日本風に言えば昭和っぽい光景にノスタルジックな感情を抱き。そのおかしさにくすりと一人で笑う。


ばっちり平成生まれだから、昭和の空気なんて感じたことは一度もないのにおかしなはなしだけど、これは日本人のDNAに刻み込まれたモノなのだろう。


そういえば、夏の終わりというものに同じような気持ちを抱くのは日本人独特の感性らしい。何があるというわけではないけど、何となくそんな話を思い出しながら、パッシオに手を引かれ――。


「ん?」


「どうしたの?」


そこまで考えて、ふと思い至る。パッシオと2人で手を繋ぎなら街を散策?


2人で、手を繋いで、街を歩く???


気が付いた時には恥ずかしさで頭が沸騰しそうになる。誰がどう考えても、この状況を表す言葉はひとつしかない。

それ以外に何があるんだと言いたくなるほどにはそれ以外ありえない状況だ。


そうか、これが朱莉や美弥子さんの言ってた。『距離感がバグっている』ということなのか。


どう考えてもデートじゃん、コレ。


「なんでも、ないっ」


「……? そうかい? 調子が悪いなら言って欲しいな。無理に付き合ってもらう必要はないしね」


急に挙動不審になった私を心配するパッシオが私の顔を覗き込んで来るけど、それをあまり見ないように視線を逸らしながら、問題ないと答える。


というかそれくらいしか出来ない。自覚してしまったら恥ずかし過ぎてどうにかなってしまいそうだ。


同時に無意識に舞い上がっていたというか、パッシオと2人でのんびりと出来ていることを喜んでいた自分もいたことに気が付いて脳内は更に慌てふためくことになる。


もしかして、いや、もしかしなくても、私達は普段からこうなのだろうか。


朱莉や美弥子さんがそう言っていたのだから、きっとそうだ。距離感がおかしいとそれは言われるに決まっている。

私とパッシオにとって快適で居心地のいい距離感が周りから見れば親密も良いところなのだろうから。


「すこし休憩しようか」


「気にしなくていいよ。昔みたいに人混みがダメってわけじゃないしさ」


「まぁまぁ。そろそろ喉も乾いて来るころでしょ?確かこの先にお茶屋さんがあるんだ。カフェスペースもあったと思うし、そこで一服しよう」


体調を気遣ってか、休憩を提案して来てくれたパッシオに多少強引に話を進められつつ、手を引かれた一歩目で歩道の小さな段差に引っ掛かってつまづく。


驚く間もなくパッシオに素早く抱き留められると、流れるような動作でそのまま抱きかかえられ、大きな身長差があるはずのパッシオの顔が私の顔の真横に来る。


「やっぱり疲れてるでしょ?リフレッシュしてもらうのに連れ出したけど、部屋でのんびりしている方が良かったかな」


「そんなことないって。あんまり外に出られないし、助かってる」


「そっか、なら良いんだけど」


普段はあんな段差に躓くことなんてまずないのを考えると、確かに疲れている可能性はある。それはそれとして、パッシオとデートしているという状況を理解してしまったので、その動揺から来ているものかもしれない。


なんにしたって、パッシオには非が無い。私の油断と動揺が招いた結果をそうと悟られないようにするのに精いっぱいだった。


「僕も最近は仕事ばっかりだからさ。本当は昔みたいに君の隣にずっといたいんだけど、中々難しいね」


「――っ!?」


視線が上がり、街の風景が見やすくなったというのにそれに割く思考の余地など1㎜も残されていない。


顔は近いし、抱っこされているし、恥ずかしい事普通に言って来るしで、沸騰どころか爆発するんじゃないかと思うくらいだ。


そのくせ、それが心地よくて、嬉しく思っている自分が間違いなくいて。それが初めての感覚じゃないことにも気が付いて。


あぁ、私は一体いつから、パッシオのことが好きだったんだろうと浮かれた頭でぼうっと考えるのだった。


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