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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
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「ごめんね。大事な時なのにこんなことで悩んで」


この重要な時に色恋沙汰でくよくよしているなんて、周りに示しがつかない。


指示する立場の者が弱音を吐いていたら、下についている人達を不安にさせるし、士気は下がるし、ついて来ようという気だって無くなってしまう。


やっぱろ私にそんなことをしている暇なんて無い。


「馬鹿言ってんじゃないわよ。アンタが成長出来る数少ないポイントじゃない。むしろチャンスくらいに考えなさいよ。大丈夫。アンタとパッシオに乗り越えられない壁は無い。そうでしょ?」


「……ごめん」


「だから、一々謝らなくて良いわよ。調子狂うわ」


朱莉が励ましてくれるけど、いまいち心は持ち上がらない。むしろ気遣いしてくれる申し訳なさの方が勝ってしまって、困らせてしまう始末だ。


はぁぁ、とまた出る溜め息。幸せが逃げるなんてよく言うけど、きっとこういうマイナスな思考から来る溜め息が周囲の人に気分も下げてしまうから、幸運を逃がす。

そんなことを例えた言葉なんだろうな。


今の私はまさにそれだろう。どうにかしたいとは思っても、気持ちも上向かず、思考は後ろ向き。色んな意味でどうしようもない。


「あまり根を詰めすぎても良い結果は出ませんよ。特に恋愛というのは考え過ぎると空回りするものですから」


落ち込み続ける私と、困って黙ってしまった朱莉。この組み合わせではあまり起こらないどんよりとした雰囲気を何処からともなく感じ取ってやって来た美弥子さんがお茶とお茶菓子を用意したカートを押して部屋に入って来る。


時間を見ると会議の時間までにはもう少し時間がある。


察しの良い美弥子さんのことだから、ここで私達が話し込んでいることを想定してのお茶の用意だろう。

流石は美弥子さん。私達の行動なんてお見通しだ。


「美弥子さんからも何か言ってやってくださいよ。恋愛遍歴ない私じゃお手上げです」


「私もそれほどありませんけどね。敢えて言うなら、恋愛なんてものは理性的に考えると負けです。損得勘定で考えるとドツボにハマりますよ」


「うっ……」


ドスっとまさにその通りの話をされて、うめき声をあげる。今の私はまさに恋愛を損得勘定で考えて、でも本心から言えばパッシオと一緒にいたいという気持ちがあって。


それを否定する理屈屋な私と、感情論で進みたい私が綱引きをしている状態と言える。


「恋愛というのは、適度に狂いあってた方が上手く行くものです」


「なんてこと言うんですか」


恋愛は狂い合うものだというトンデモ持論に思わずツッコむけど、美弥子さんは首を振って私の考えている狂うということが、自分の言っている事とは少しズレているというんだと伝えながらお茶を淹れてくれる。


「私の言う狂うというのは適度に周りが見えなくなるという事です。最初は2人で何をしても楽しく、そこからお互いを知ってちょっとずつ冷静になっていき、一生を過ごせる相手かどうかを見極める。それが恋愛ですよ」


そう言われながら出されたお茶の香りはいつも通りのいい香りで、落ち込んでいた気分が少し良くなる。


同時に美弥子さんの発言には成程、と納得をする。確かに恋愛というものの表現の中には二人だけの世界という表現があり、周囲から見れば少しだけ羽目が外れた、浮かれた状態。


それは確かに狂っていると言えるかも知れない。その的確に思える表現に私はうーんと唸った。


「確かにウチの学校でもイケイケでちょっとバカっぽい方がやっぱ恋愛経験値は高いわよね。男女関わらず」


「勢いも重要ですから。特に若いうちは楽しむ恋愛を沢山して、喧嘩して、別れてを繰り返すものですよ。勿論、程度というものがありますし、失敗した原因を考えなければ一生失敗し続けることになりますが」


「やっぱり大人には敵わないわね。自分がおこちゃまだという事を思い知らされるわ」


朱莉がおこちゃまなら、私はバブちゃんだろうか。赤ちゃんなら仕方ないかも知れない。

だって何にも分からないもん。仕方ない、赤ちゃんには難し過ぎる。


「諦めてんじゃないわよ。なんでそういう方向には思い切りが良いのよ」


「まぁいっそ振り切った方がおもしろ――、良い事があるかも知れませんよ」


「今面白いって言おうとしなかった?」


今回の件に関してだけは、美弥子さんからの攻撃力がやたら高いんだけど。やっぱり日頃の恨みだろうか。

女性は恋愛が絡むとやっぱり恐ろしいなと思いながら、適度に狂うという発想に思いをはせた。


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