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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
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「うああああぁぁあぁ……」


ヴィーゼの街を訪れ、朱莉に竜化について一通り問い詰めたあと、宿泊のためにあてがわれた一室で突っ伏しながら唸っていた。


「どうしたんですか、アレ」


「ようやく自覚なさっただけですから、放っておいて大丈夫ですよ」


グリエが私を指差しながら、美弥子さんに確認を取っているのが聞こえる。

美弥子さんは素知らぬ顔といった様子で私のこの状態についてはずっと放置を貫いている。


どうやら、美弥子さんとしてもかなり思うところがあったらしい。その反動というか、そこまで面倒は見ませんよと暗に言われている感じだ。


それはそれとして、グリエ。主に対してアレは無いでしょう。アレは。


「……それで良いんですか?」


「私としては数年間やきもきさせられましたから。あと3か月遅かったら盗ってましたよ」


心配しているのはもう一人の直属の部下、マーチェだけだ。しかしそれも、美弥子さんによって一蹴されてしまう。


私、美弥子さんを怒らせる事したっけかな。ここまで辛辣なのは初めてな気がする。というか、盗るって何?怖いんですけど。


「盗るって、何をですか?」


「パッシオ様ですよ。私、あの人のこと好きでしたし」


「「「えぇっ?!」」」


さらっと爆弾発言を投下していった美弥子さん。私も含め、三人揃って驚愕の視線を彼女に向けるけど、涼しい顔をして知らんぷりだ。


え、じゃあ盗るって私からパッシオを盗るってこと?怖いんですけど!?

アレですか仕えている主人だから遠慮してやっていただけで、これ以上何もしないor起こらなかったら容赦なかったってことですか?!


いや普通に怖いんですけど?!


「想い人と主人が無自覚に毎日イチャイチャイチャイチャされたら思うところが無いわけないじゃないですか。私だって女ですからね」


「それは、少し同情しますね……」


「真白様が悪いと思います」


「まさかの全員敵になった」


部下と専属使用人全員に敵に回られるとは思わなかった。恋愛怖い。


というのは冗談で、そりゃそうだという思いの方が勝つ。


私だってパッシオが他の女性にちやほやされるのとかを見ていると苛立っていたのに、自覚していた美弥子さんなんかはそれこそ毎日目の前でそれを見せ付けられていたのかもしれない。


相当酷な事をした説はある。無自覚だったとは言え、それを続けられたらそりゃ盗りたくもなるかもしれない。


「パッシオ様でしたら、もしかすると私の告白でOKしてくれるかも知れませんし、今からでもアプローチかけましょうか」


「え」


「だって、真白様はご自分からアプローチをかけるのは恥ずかしくて無理なんですものね」


どうしてそんな意地悪をするのか。いや、今までされなかっただけマシなのか?


女の人が恋愛絡むと怖いというのは本当だ。まさかここまで近くで味わうことになるなんて。


何度か勝手に嫉妬されたりとか、好きな人を取られたから嫌がらせしてやるみたいな人、チラッといたけどさ。


全部そうなる前に一蹴したけど、今回は一蹴されそうな側だ。


美弥子さんが怖いです……。


「知っているかと思いますが、あの人は相当アレですよ」


「アレ?」


「唐変木ってことでしょ。個人的に予想としては姫様から告白しても、団長は姫様と釣り合わないとか言って、断る気がするのよねぇ」


それはあり得そうなのが確かにアレだ……。


朱莉や美弥子さん達曰く、付き合って無いのがおかしいレベルらしいけど、事実そうなるとなるとパッシオはそういうことを言いかねない可能性はある。


とにかく一度自分で決めた自分のことに関しては頑なに変えないのは、一本筋が通っていると評価するべきか、頑固者と言うべきか。


「とは言え、元はと言えばパッシオ様が蒔いた種ですので、ケジメは付けてもらいますよ」


「なんか美弥子さん怖いよ……?」


どうにも美弥子さんがピリピリしている。一流の使用人である美弥子さんが、ここまで自分の負の感情を漏れ出しているのはとても珍しいことだ。


「えぇ、先程廊下で聞き捨てならないことを耳に挟みまして」


その言葉に、あー、パッシオがなんかやらかしたのかなと私と部下2人は何となく察するのだった。


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