共に歩む
「流石に今さっき気がついたはちょっと違うというか、ただその言葉がしっくり来たのは間違いないんだけど……」
「名前がわかってしっくり来たのがさっきのことで、感情自体は前からあった、ってこと?」
私の返事にコクコクと頷く真白。本当に自分の気持ちに鈍感というか、自分のこととなると適当なんだから。
他人優先もほどほどに、と言いたいところだけどその辺はお互い様のところはある。
私だって真白のために人間辞めたしね。私に言われる筋合いは真白からしたらない。
「いつから、って言われると何とも言い難いけど、やっぱり大きかったのはパッシオがいなかった時期があったのと、再会出来たことかなぁって」
「アンタしばらく酷かったものねー」
「その節はホントに……」
何度も言うけど酷かったのよホントに。ぼけっとしてて電柱にぶつかったり、側溝に落ちそうになったり、赤信号渡りかけたり……。
元の調子に戻るまでは目を離せなかったんだから。
それでも、やる事はやる辺りは流石だと思ってたけど、真白としてもあの時期は酷いものだった。
「正直何処かでずっと一緒に居られると思ってた節は何処かにあったんだろうなぁって、今なら思う。それが急に宙ぶらりんになって、ちょっとね」
「気が抜けた、というか一瞬目標が揺らぐみたいなね」
「そうそう。でもいないならいないで、しっかりしなきゃ、パッシオだって妖精界で頑張ってるんだしって思ったら大丈夫になったんだよね」
そこから2年半くらいは今まで通り仕事ぶり。その後はパッシオ達と再開して、この通り妖精界で行動を共にしているうちに、思うところがところどころありはしてたわけだ。
ただその感情を表現する方法とその名前を知らなかった。そんなところかしらね。
恋愛に関しては本当に小学生レベルと考えても良いのかもね。ただでさえ、自分の感情表現が苦手な性格だ。
そこを引き出すのがパッシオの役割、なんだけど。
アイツはアイツで自分の感情を認めない気配がするのよねぇ。揃いも揃って意固地になる性格というか、型にハマりたがるから。
「一緒にいないと調子出ない感じあるし、なんかパッシオが他の女の子と一緒にいるのを見るとイライラとかモヤモヤするし、でも一緒にいると私のことちゃんと見てくれるし−−」
「はいはい、急に惚気るんじゃないわよ。私達からしたら今更よ、全く」
へらっとした笑みを浮かべる真白なんて初めて見るかも知れない。
良いことよねパッシオにとっても真白にとっても良いことづくめなのは私から考えてもわかる。
この2人が無事にくっ付けば、将来的に訪れるだろう真白と私と要、そしてこれから人間を辞めるらしい千草以外との寿命の違いの問題と、それで発生するだろう真白の精神的不安も大きく緩和されるだろうから。
基本的にメンタルは鬼強な真白だけど、代わりに身内関連の不幸に関してはクリティカルだからね。
私も含めて、皆そこが不安なのよ。オーバーワークしがちなところ以上にね。
「で、どうするの?告白とかするの?」
「え?」
「え?」
心が決まれば、次のステップに進むのは当然。真白とパッシオなら一足飛びで十分だろうと思って、思いの丈を伝えるのか、待つのかを聞いてみると、思わぬ返事が返って来て、咄嗟にオウム返しをしちゃったわよ。
「え?じゃないわよ、え?じゃ。ここまで来てなんにもアクション起こさない気?」
「むりむりむりむり!!」
「何言ってんのよ。パッシオになら100回やってもOK貰えるでしょうが」
ここに来て日和るなんて、アホか。呆れる私と首をぶんぶん横に振る真白。
女子中学生が先輩に告白するとか、そういうのじゃないうえに当たって砕けることもない。駆け引き不要の勝利確定の恋愛で逃げに走ることもないでしょうに。
「無理無理!!今さら好きとか言えないって!!」
「はっ倒すわよ」
思わず暴言を吐いた私は悪くないと思うわ。




