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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
戦火の臭い

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戦争

戦いを終え、戦地となった場所から引きあげた私達は戦地で直接戦った団員たちを中心に休暇を与えつつ、上層部にあたる私達は会議や打ち合わせ、各地からの情報をまとめ、精査するなどの仕事が山積みになっていた。


「真白姫様も団長も参謀長も、そんなに働いたら身体壊しますよ?」


仕事を黙々と進める私達を見て、私の部下のグリエが辟易とした表情で私達にお茶を淹れたり、お菓子を配ったりの給仕を美弥子さんと共にしてくれる。


もう一人の部下、マーチェは書類を運んだり、伝令役を担ってくれている。彼女達も疲れているだろうに、ありがたい。


「それでもこれが僕らの仕事だからね」


「立場が上になればなるほど、休みなんてものは無くなるものだ。お前たちが気にすることではない。ま、平時でも鬼のように働いている二人はそろそろ休むべきだとは思いますが?」


「そっくりそのまま返すわカレジ。立場が上だと休みは少なくなるんだから」


年中無休で忙しいのは組織のトップの常だ。


例えば、社長は椅子でふんぞり返っているのも仕事と言えば仕事なのだけど、それ以外の仕事の山を休みなく部下たちの目にはつかない所で処理しているのもまた社長の仕事だ。


社長がパッシオ、副社長がカレジ、私は……外部顧問とでも言えば良いのか。


常に細々とした仕事を処理しなければいけない立場だし、あらゆる決定をしなきゃいけない立場だし、判断を誤ってはいけない立場だ。


何度でも言うように、休む暇は殆ど無い。それが上に立つということの一つの結果ではあるかな。


「よくそんなに仕事ばっかり出来ますよねぇ。私には無理ですよ」


「でも貴女も付き合ってくれてるじゃない。私は休暇を取っても良いって伝えたのに」


「流石にこの忙しさを目の前にして手伝わないほど薄情じゃないです。……私に出来ることなんて、お茶淹れることくらいですけど」


「ふふっ、それでもありがとう」


照れ隠しをするグリエに笑みを向けながら、淹れてくれたお茶を口にする。


香りが独特で人間界にいた時には中々無いタイプだ。


目が冴えるような、鼻に抜ける爽やかな香りがするのだけれど、良くあるハーブティーにあるようなミントやレモングラスのような特徴的なエグみというか、好みの別れるものではないと思う。


どちらかといえば、質の高い緑茶に近い。玉露とかではなく、緑茶の澄んだ香りに近い、そんな感じだ。


「実家がお茶屋なんです。両親に姫様の下に就いたことを連絡したら、山程送って来て」


「あら、良いわね。今度とりあえず見せてちょうだいよ」


「……相当な量ありますよ?」


聞けば、グリエの実家はお茶屋。恐らくは茶葉の仕入れ問屋か、茶葉そのものの栽培をしているみたいだ。


どおりで色々な種類のお茶が飲めるようになってたわけだ。

それを聞いたのなら、是非テイスティングをしたい。


「真白は相当なお茶好きだから、逆にかなりの時間付き合わされるよ」


「最近は茶器にも手を出してますね」


「お義母さんの影響だし、ホントにちょっとしか集めてないけどね」


それを聞いたグリエはマジかといった具合に目を見開いて驚いている。


あの子、まさか私を無趣味の仕事マシーンか何かだと思ってない?


「仕事が趣味だと思ってました」


「流石に不服なんだけど?」


「しつれーしましたー」


主人に対していい度胸ね。まぁ、だからといって何をするわけでもないけど。


そう思われるくらい仕事ばかりしているということだしね。

少しくらい、趣味の時間を作った方が良いのはこの場にいる全員がわかっている。


お茶や庭弄りにソシャゲと、勉強以外にも時間と暇があれば一日中没頭していたいことは私にだってある。


それをどうしても状況が許さないだけなのよ。

パッシオとカレジと別れてからの3年間は割とのんびりしてたしね。


「ホントにのんびりしてたの?」


「半月に一度ほどです」


「全然じゃないか」


「お前が言うなパッシオーネ」


概ね、ここにいる人は仕事たばっかりしているワーカーホリックだから同じ穴のムジナだ。


雑談ばかりしてないで、そろそろちゃんと話し合わないとね。


「それで?真白はどうして帝王を逃したのか、話してくれるかい?」


「えぇ、もちろん」


目下、パッシオ達が知りたいのはこの一点だろう。

ま、予想と勘でしかないけど悪いことは起きないと思っている。


私と帝王とのやりとりについても交えつつ、私は彼らに何が起きたのかを話し始めるのだった。


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