戦火の臭い
ティータイムを終え、必要な連絡を各所にした私達は早速翌日にはそれぞれ行動を開始していた。
パッシオは全体の指揮と各地に隠されている転移魔法陣の捜索と破壊。私は確保した旧王国側にあるに世界の穴へと向かっていた。
「久しぶりだね真白君」
「お久しぶりです。ご協力、よろしくお願いします」
「勿論だ。一度道を間違えた私を引き戻してくれた君の頼みだ。次こそは、共に良い未来を手繰り寄せよう」
「心強いです」
現地に到着した私は『魔法研究所』の所長を務める元『ノーブル』のボス、東堂氏と合流して、話をしながら会議をするためのプレハブへと移動していた。
「連絡した件についてどうですか?」
「すでに福岡支部からは返事をもらっているよ。『符呪の魔法少女 瑞鬼』、『結界の魔法少女 巫』。共に快く了解を得られたよ」
「東堂さん的には、私の考えをどう思います?」
「最も被害を避けた手段で、君らしいと思うよ。帝国兵にすら配慮をした、まさに『最善』策だ」
世界の穴を通り、妖精界に持ち込まれた機材や物資により、世界の穴周辺には『魔法少女協会』の仮拠点が早くも設置されている。
こういった拠点設営の早さや効率的な作業スピードの良さは人間界の技術だなとひしひしと感じる。
妖精界は規格というものが基本的に統一されていない。何せ魔法という技術は人によって差異があるものだ。
そもそもに人によって使える魔法、使えない魔法がある。ただそれをどうにかする工夫もあるし、この世界の生き物は技術に頼らなくても生きていけるのもある。
妖精界の生き物に比べると、人間界の生き物は短命みたいだしね。とにかく、人間界の技術はイコールで効率だ。
妖精界側だと技術とは出力のことになるので、時間は多少かかっても構わないという風潮は感じている。
簡単に言えば、人間界はせっかち。妖精界はのんびり。という二つの世界の風土の差があるなぁと私が勝手に感じているだけなのだけど。
【お久しぶりです真白さん】
【お元気そうで何よりです】
「突然の協力依頼を引き受けてくれてありがとう二人とも。そっちも元気そうでよかったわ」
会議用に急遽あつらえてもらったプレハブ小屋の中には久々に見たパソコンと様々なコード類が乱雑に配線されている。
エンジニアの方々には頭が下がる。あとでお礼に行かないと、と思いながら思考を切り替え、パソコン画面に映る『符呪の魔法少女 瑞鬼』、『結界の魔法少女 巫』の二人と挨拶を交わした。
以前会ったのは、確か1年ほど前だったか。『魔法少女協会』の福岡支部に出張に行った際に一度一緒にご飯を食べに行った時だった。
あの頃よりも更に大人な女性という雰囲気になったのは瑞鬼ちゃんのほうで、双子の姉である巫ちゃんは差を作るように若い女の子といった感じだ。
ギャルという訳では無く、落ち着いた女子大生といった具合の瑞鬼ちゃんと、活発で交友関係が広そうな短大生、とでも言うべきか。酷く偏見があるような気がするので口にすることは無いけど、そういう差が今の二人にはある。
パッと見では双子だと気が付かないくらいだ。私は3年前のそっくりな容姿を知っているので普通にわかるけどね。
【で?協力って?噂には聞いてるけど、そっちは今特殊な任務に出てるって聞いてるけど】
「実は今、妖精界にいるのよ」
【え、妖精界って前に話してた真白の相棒がいる世界?】
2人はまだ妖精界に私達がいることを知らないはずだ。そもそも妖精界という存在を知っているのはごく一部の『魔法少女協会』の職員と3年前の戦いで私達に協力をしてくれた魔法少女達くらいだ。
私達が妖精界に行っていることを知っているのは更に限られて来るだろうしね。
【え、じゃあパッシオさんには会ったんですか?!】
「パッシオと?まぁ、会ってるというか、あっちが一度こっちに来たって言うのが正解なんだけど……」
【きゃー!!お迎えあったんですね!!凄いです!!やっぱりおふたりって特別なんですね】
そこに別ベクトルで食いついて来たのは瑞鬼ちゃんだ。女の子らしく恋バナが好きみたいで、一年前に再会した時もパッシオについては根掘り葉掘り聞かれたことを思い出す。
別にそう言う間柄じゃないって事は何度も伝えたんだけど、本人曰く「それが良い」らしい。何が良いのかは私にはわからないし、姉の巫さんは呆れてた。
今もモニター越しに盛り上がる瑞鬼ちゃんと興味なさそうに飲み物を口にしている巫さんが対照的に映っていた。




