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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
戦火の臭い

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戦火の臭い

朱莉との通話を終えた私は得た情報をまとめるために部屋にあるデスクに向き合うことにする。

集中するとなると、やはり落ち着くのは机に向かってペンを持つことだ。毎日何かしらの勉強や資料をまとめている私にとって、机は必要不可欠なパーソナルスペースでもある。


パソコンも便利だけれどね。私としてはアレは最終的にまとめた情報をデータとして共有しやすくするためのツールだ。

物事を考え、まとめるためのツールはやはり紙とペンだと考えるのは私が古い考えの人間だからなのかもしれない。


「他者に悪性の強い魔力を注ぎ込んでその人の性質すら変えてしまう、ビーストメモリー」


私達や紫ちゃん達が目にしているビーストメモリー。私達は妖精界でもショルシエや帝国との戦いにおいて、このアイテムが最も脅威だと考えていた。


だけど、事態はそれ以上に混迷を極め始めていると思った方がいいみたい。


「正体不明の『獣の力』にショルシエ」


ショルシエが操っていると朱莉からの情報提供があった『獣の力』。これが何なのかはまだわからない。

ただ、ショルシエはかつて人間界にいたS級魔獣を作り出すために人間界で生まれた魔獣3体に『獣の力』を注入した、らしい。


そうやって生まれたS級魔獣が人間界を荒らしまわったことは未だ記憶には新しい出来事だけど、肝心のショルシエは攻撃には魔力を用いていてその『獣の力』というのは使ってこなかったみたいだ。


朱莉に他に何か具体的な利用のされ方は無かったのかと聞くと、抵抗出来なくさせられる的な?という何とも中途半端な答えが返って来た。

もうちょっと無いのかと聞いてみても微妙に歯切れの悪い返事ばかりで、イマイチ要領を得ない。


ショルシエと直接対峙した朱莉がよく分からないとなると、これ以上話を聞いても仕方ないかと思い、それについてそれ以上話をすることは無かったけど、敢えていくつかの予想を立ててみようと思う。


情報がほぼ無い状態でする予想なんて妄想以外の何物でもないけど、正体不明である以上、あらゆる想定はしても良いだろう。


あとで紫ちゃんにも話を伝えて、予想と対策を用意しておくべきだ。


「まず、獣って単語から考えると……。まずは四足歩行する人間以外の動物、よね」


そうすると魔獣や魔物の力、が一番近い印象だろうか。でもそうなるとメモリーに魂を込めてしまえば解決する。

ショルシエはビーストメモリーという通常のメモリーの派生のような物を作っているし、メモリーを作るだけの工房のような物は持っていると考えるべきだ。


そう考えるなら魔獣や魔物の力を使えるというのは少し考えにくい。そもそもショルシエがそれを使えるようになっても旨味が無さすぎる。


自分はそれらよりも遥かに格上の能力を持っているのだから。


他にはなんだろうか、獣という単語がそのままの意味では無さそうだとしたら、獣という言葉が持つイメージ、だろうか。


「獣は動物の言い換え、よね。獣、動物……、本能?」


獣とは動物の別の言い方というか、動物よりは哺乳類、毛の生えた四足歩行の生き物の総称とか昔の呼び方。あるいは少し聞こえが悪いというか、荒っぽい言い方というか、あまりいい印象の無い呼び方だ。


そこから敢えて悪いイメージを抜き出すのだとしたら、彼らは知性が人間ほど無く、本能で生きているという点かな。


動物や本能を下劣に見ている訳では当然無い。むしろ、彼らがいるからこそ本能があるからこそ生き物は生き物として生きていける。

動物とは自然のままに生きている生き物達だし、本能は生きていくために長い時間をかけて作られたBIOS(パソコンを動かすための最も基本的なプログラムのこと)みたいなものだ。


しかし、知性ある生き物として本能を剥き出しにするのはナンセンスでもある。


そんな生きるための本能を剥き出しにすることが出来るのなら、と考えたところでビーストメモリーにもそういった作用があるのではないかと考える。


ビーストメモリーを使った者は個人差があると考えても、知性で本能を抑えきれなくなっているように、つまり本能が強くなっているように感じる。


ショルシエの分身達は比較的理性的ではあったけど、エナなどは興奮度が上がっていたり、『悪魔象(ガーゴイル)』や『毒王蛇(バジリスク)』を使われたトゥランの街の一般人2人は完全に理性を失って暴れまわっていた。


「『隷属紋』によって操られているから暴れているのだとばかり思っていたけど……」


だとするなら、『獣の王』とはつまり……。そう考えたところで部屋のドアがノックする音が聞こえて、私は深く沈んでいた思考の海から急浮上して来る。


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