親友との再会
「遅い!!!!」
ようやく掛かって来た電話に思わず開口一番に怒り気味の声が出てしまう。でも、弁明をさせて欲しい。
突然手紙が届いて驚き、急いでスマホを手配して送り返したのに、届いているハズの頃になっても一向に返事が来ないのだ。
ヴィーゼの街と旧王都サンティエはそれほど離れた距離ではない。ヴィーゼの街が国境にであるコウテン山脈に近い交易の街で、旧王都サンティエはそこから直通のルートがある。
この世界は交通や通信の整備は人間界程進んでいないけど、お金をしっかり支払えば足の速い種族や空を飛ぶ種族の魔族の人達が短い時間で配達をしてくれることも可能ではある。
残念ながらこれは大都市間などに限られるし、全てが全て短い時間で済むかと言えばそうではないけど、整備された一本道の街道で繋がっているヴィーゼとサンティエであるなら片道5時間程度だそうだ。
【遅いって、手紙を送ったのは朝でしょ?その日の内に連絡取れたんだから良いじゃない。トークアプリの既読じゃないんだから。ちょっとせっかちが過ぎるんじゃない?真白】
「う、それはそうだけど……。行方不明になった親友からいきなり連絡が来たら誰だって心配すると思わない?朱莉」
そうやってお互いのことを確認して、どちらともなく割らす
確かに朱莉の言う通り、連絡がついたら直ぐに返せは確かに現代人の悪い癖かも知れない。連絡に目を通したからといって、返事をするのは返事をする側の都合を加味するのが当たり前と言えば当たり前。
すぐに連絡がつく現代の人間界が便利で社会全体が効率を求めすぎているのかもね。
【ま、スマホを送ってくれたのは助かったわ。ってことは世界の穴の一つは確保出来たのね?】
「この間ね。今整備を進めてるところ」
先日、妖精界と人間界に空いた二つの穴の一つの安全を確保したところ。物資の持ち込みや人材とか諸々のやり取り、色々とやることが多くて、調整のために私は一度旧王都サンティエにパッシオ達と戻って来たところだった。
【というか、よくあの手紙だけでスマホが無いって分かったわね。私は真白かパッシオを探して、連絡を取り継いでってお願いしただけだったんだけど】
「そっちの領主様からの直々の連絡がレジスタンスに来たのよ。パッシオの名前は結構広まってるみたいでね。多分そこからなんじゃない?」
【あー、一応団長だしねアイツ。で?それでこんな立派な小包みに包んでスマホを寄こして来たわけだ】
小包みがやたらと豪勢というか、立派なモノになってしまったのは正直不可抗力だ。
私が親友である朱莉に急ぎで届けたい物があると伝えたら、思った以上の大騒ぎになってしまって、取り急ぎで包みから何から何までお金の掛かった物となって王族勅命の便りとして、特急便として発送されてしまった。
妖精界の王族としての血筋が広まってしまって以来、私の一挙一動で周囲がてんわやんわの大騒ぎになってしまうのは非常に申し訳ないと思うし、そこまでやらなくて良いのにと思ってしまうのだけれど、彼らからすれば王族からの直接の依頼であり、そこから信頼やらなんやらで仕事がもらえる可能性が高いのだ。
一度、国が崩壊し、立場や職がリセットされてしまった中で王族とのコネは何が何でも欲しいというのが彼らの本音でもあるだろう。
【ははーん、何となく想像できたわ。アンタも大変ね】
「許されるのなら、一度人間界に戻って息抜きしたいわ」
【あははは、真白が珍しく弱音を吐くんだから相当ね。生憎、その暇は当分なさそうだけど】
このお姫様扱いはしばらくの間続くでしょうね、と暗に言われてしまってガックリと項垂れる。
人間界でもお嬢様ではあるけど、ここまで過保護というかなんでもかんでもお世話されることは無かったと思う。
どちらかと言えば、お義父さんの玄太郎さんもお義母さんの光さんも、私達がやりたい事は自由にさせる代わりに、自分でやる事は自分でやれの方針だし。
【ままー。誰とお話してるの?】
【私の友達よ。もうちょっと待ってて】
「……ママ?」
朱莉との会話が弾む中、スマホの向こう側からなんだか凄い言葉が聞こえて来た気がする。
ママ?朱莉が?
「……産んだの?」
【メルよバカ】
目の前にいたら頭を叩かれてそうな勢いで即答されて、朱莉出産説は否定された。良かったのか悪いのかはイマイチ分からないけど、親友はいつの間にかメルドラちゃんからママ扱いされているらしかった。




