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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
勇名

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竜を操る者


ドラゴンのそばに人影があった。それはつまりドラゴンともう一人、何者かがこの事件に関与している可能性があるってこと。


私達はてっきりスカーが怒りに身を任せて近場にあったヴィーゼの街を偶然襲ったと思っていたけど、事態はそんな単純なことではないかも知れない。


「人影の人相とかはわかるの?」


「夜というのもありますし、その直後には攻撃を受けていますから今のところはそう言ったものは全く」


「ただ近くに人影があったってだけだな。何かしている様子は無かったらしい」


「ドラゴンが襲って来ているのに、何もしてないのはおかしいけどね」


あいにく、人相とかそういうのは分からないみたいね。仕方ないけど、そこが分かるだけで違うんだけどね。


ただし、怪しさはやっぱり満点だ。周囲の人達がドラゴンの襲撃から逃げている最中、ただ見ているだけというのはおかしい。

近くで見ているって事は何か目的があってそばにいるはず。近くにいる理由があるはずだ。


考えられることで一番シンプルなのはドラゴンに指示を出しているってあたり。

ただしプライドが高くて、誰かの言う事なんて聞くわけもないドラゴンが生半可な人のいう事を聞くとは到底思えない。


ドラゴンを凌ぐ圧倒的な実力者ならあり得るけど、そんな人材がその辺に転がっているとは思えない。

だったらその本人が街を襲えば解決するからだ。


だとするなら、思い当たるものは――。


「隷属紋、か。厄介なのが出て来たかも知れないわね」


「隷属紋?」


「名前を聞く限り、良い感じはしないですね」


ヴァンの予想は正解だ。私達魔法少女にも因縁深く、悪名高い最悪の魔法『隷属紋』。


相手の意思に関わらず、意識を奪い、意のままに操るための魔法をまた見ることになるかも知れないなんてね。


その魔法について教えるとヴァンとゼネバは眉をひそめて、舌打ちや嫌悪感をそれぞれ示す。

そりゃそうだ。誰だって他人を無理矢理従わせる魔法に良い感情をもつなんてことは基本無いわよ。


いたとしたら、その魔法を欲しがるようなクズな連中でしょうね。その魔法を使って何かしてやろうというロクでもない事を真っ先に思いつくような奴なら欲しいと飛び付く魔法かも知れない。


私は絶対にいらないけどね。


「ショルシエが作った魔法、『隷属紋』には私達もかなり苦しめられたわ。あれならその辺のドラゴンくらいなら簡単に操れるでしょうね」


「そんなに強力なのかよ。大丈夫なのか?そんな奴がいたらそこら中操り人形だらけになってるだろ」


「安心して、対策はあるし『隷属紋』にも限界はある。ドラゴンほどの高い知性の生き物を支配下に置いているならそれ以外の生き物は殆ど操れないし、支配下に置いたとしても単調な指示しか出せないでしょうね」


『隷属紋』はその複雑な術式の都合上、術者に高いレベルが要求される。誰もが何でも従わせて、操れるわけじゃないのは既に私達『魔法少女協会』と『魔法研究所』が解析済みだ。


一般人が手にしたところで、操れるのはせいぜい犬猫が限界。魔法が使える程度の人なら熊やライオンなどの猛獣。

ドラゴンともなれば相当な術者であることが分かるけど、そこが限界だろう。


開発者のショルシエですら、乱用するには意識を奪って暴れさせることくらいしか出来ない。


多少強いくらいの術者じゃ強力な魔物が限界。ドラゴンなんて操れば、それだけで手いっぱいのハズだ。


もし、見ていただけの人影とやらが『隷属紋』を使っていたのなら、それの試運転ってところかしらね。


思えば、怒りに身を任せて街を襲ったのなら壊滅くらいさせてもおかしくない。ドラゴンにとってそれくらいは簡単な芸当だ。

だというのに、被害は確かに甚大だけど、ドラゴンが如何に強力な存在なのかをよく知っている身としては、この程度の被害とも言える。


「その人影を追うのが早そうね。情報をもっと集めるわよ。私は街の外でドラゴンの痕跡を探すわ」


「分かりました」


「了解っと」


待っててもしょうがない、こちらから積極的に追うとしよう。


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