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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
勇名

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朱の日常


「老いぼれの杞憂であればそれが一番良い。だが、何やら良くない事が起こる気がするのだ。どうか頭の片隅に留めておいてくれまいか」


トロイデさんは誰かに言い聞かせるように、噛み締めるようにそう言って私に多少の警戒を促して来た。


長く生きて来たからこその勘というものは当たる時もあれば当たらない時もある。


昔起きた不運の経験からのデジャブが殆どだってそういうのは聞くけど、同時に蓄積された経験から過程をすっ飛ばして得られた予測はかなり的確なこともある。


まさにトロイデさんの言う通り、杞憂だったら笑い話にすれば良いだけだ。


ただ、こうして私にわざわざ伝えてくるということは、理由のない確信ってやつがあるからなんだろう。


「別に良いけど、せめてどんな事が起こりそうかくらいの検討は欲しいわね」


「それが出来たら苦労はせんよ。ワシは預言者ではないからの」


「予想よ、予想。なんか一つくらいはあるでしょ?」


勘や経験則から過程をすっ飛ばして導き出された曖昧な答えに明確さは私も求めないわよ。


せめてこういうことが起きるんじゃないか、っていうトロイデさんなりの予想が欲しいわけ。


理由の無い確信言えども、この辺りがきな臭いって話くらいは有るハズだ。

それこそ、里の外に出ているスカーってドラゴンとかね。


「……あまり、ただの想像で個人を名指しするのは好かんのだが、敢えて言うならスカーが何かしら持ち込む可能性はあるだろう。彼奴は力は昔からあるが、プライドも人一倍高い。そのうえ歳を食ったからか頭も硬いと来た。一度の負けから、怒りで目が眩むことがあるかも知れん」


ありそうな話だ。あのスカーというドラゴンは腕っぷしはそれなりだが、とにかくプライドというか、驕りが過ぎる。


今まで強く立場が上だった分、負けや下に見られることに我慢がならない傲慢な性格。

あの手合いは性格を矯正しようとしてもそう簡単にはいかない。


トロイデさんの言う通り、格下だと決め付けている私に負けて、怒り任せに何をしてもおかしくはないわね。


「とは言え、ドラゴンがドラゴンを襲う理由は無いでしょ?仮に私に何かしようものなら、次は半殺しになるけど」


「それはそれで出来れば勘弁してやってほしいところだが、灸を据えることも必要ならやむなしか」


仮にあのスカーが何かしようとしても、身内のドラゴン達を傷付ければ他のドラゴン達が黙っていない。


私に何かしようものなら次は角をへし折られるどころでは済まない。

何にせよ、アイツが私達に出来ることなんて嫌がらせくらいが限界で怒りに身を任せて何かしたら、手痛いしっぺ返しを喰らうのはスカーだ。


それを見誤るほどバカでは無いと信じたい。バカだった場合はさっき言った通りの結果になるだけだ。


「そこまで気にする要素は無いと思うんだけどね」


「ワシが気を揉み過ぎている可能性は十分ある。だから頭の片隅に置いておいてほしいと言う話よ。大真面目に警戒はせんで良い」


「ま、仮にスカー以外の事でも、ドラゴンに喧嘩を売るような大バカはそうそういないと思うけど。私だってしないわ」


帝国、ショルシエ達だって、わざわざドラゴン達を刺激するようなことはしないだろう。


藪を突いたら竜が出て来たなんて笑い話にもならない。こうやってドラゴン達は『獣の王』とやらを警戒して引き篭もってしまっているのだ。


その状況を知ってるかは知らないけど、ドラゴンなんて何も鍛えてなくても世界最強の生物を敵に回そうなんて思わないわ。


トロイデさんの勘は当たるかも知れないけど、当たったところで何かをしでかした誰かが結局ボコボコにされる未来しか見えない。


杞憂で終わるのが前提。やっぱりどんなに考えても頭の片隅にしまっていて良い話だというのが、私達2人の最終結論になった。


「夜分遅くにすまなかった。何かあったらまた来よう」


「こっちも何かあったらすぐ伝えるわ」


何が起こるとも思わないけど、準備だけはしておくか。

そう決めたところで今日は解散。


話し込んで遅くなっちゃったし、私もそろそろ寝るか。明日はヴィーゼの街に行きましょうかね。

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