兄弟
手に取った瞬間、それがなんなのかわかった。それがどんな奴らなのかわかった。
家族みたいにずっと一緒にいた、兄弟みたいにバカなケンカもした。
大事な友で家族で兄弟。そんなアイツらが力を貸してくれるなら、何だって出来るに決まってる。
「サンキュー、お前ら。一緒に戦おうぜ。今までみたいによ!!」
【思い出チェンジャー!!『兄弟』!!】
手にしたのは1枚のメモリー。
まだ中に何の力も篭ってないはずの、空っぽのメモリーはいつの間にか緑色に染まって、翼の紋が浮かんでいた。
どんな奴らがこのメモリーに宿ったのかはさっきも言った通り、手に取ってすぐにわかった。
目の前のクソ親父に、理不尽に殺された俺の兄弟。大事な仲間たち。
そいつらがメモリーに宿って、俺に力を貸してくれる。
1人1人の力は大したことねぇだろうけど、このメモリーには俺の兄弟が全員宿ってる。
ちょっとの力でもこんだけ集まれば立派なもんだ。
あぁ、ありがとよ兄弟。お前らのおかげで、俺は戦える。俺はお前らと一緒に戦える。
【ダチと共に未来へ羽ばたけぇ!!】
お前たちがくれたこの翼で、俺は目の前の不条理をぶっ壊す!!
「行くぜ兄弟!!『思い出チェンジ』ッ!!」
思い出チェンジャーに『兄弟』のメモリーを挿して、思いっきり回す。
魔力に身体を包まれて現れた俺の姿はスバルによく似たもので、全身を強化してくれるスーツに身を包んでるみてぇだ。
「自由の翼で悪を討つ!!『ブラザーメモリー』!!」
拳を構えて名乗りを上げ、気合い十分。第二ラウンドと行こうぜ。クソ親父。
ちょいちょいと指でかかって来いと挑発すると、雄叫びを上げながら飛びかかって来る。
さっきまでは避けるので精一杯だったが、今の俺ならやれる!!
「どぉらぁっ!!」
「ギャッ?!」
覆いかぶさるように飛びかかって来た親父の鼻っ柱目掛けて拳を思いっきりよく突き上げる。
避ける事なく突き刺さった拳は重い衝撃と共に振り抜かれて、親父はきりもみ回転をしながら吹き飛ばされた。
振り抜いた拳を見ると分厚いメリケンサックが握られている。コレが俺の武器ってことらしい。
へへっ、シンプルで結構。喧嘩上等だった俺からすりゃ、下手な武器よりよっぽど身体に染み付いてるぜ。
「グルルルル……!!ゴギヤァァアアアアァァッ!!!!!」
「はっ、馬鹿にしてた奴に殴られてご立腹か?いいぜ、こっちだってはらわた煮えくりかえってんだ……!!」
キレてるのはテメェだけじゃねぇんだぜ?クソ親父。
バケモノに変えられちまったことには同情するが、それ以外では同情の余地もねぇ。
とっとと引導を渡してやるよ。俺が、この手で。
キレて一直線に突っ込んで来る親父を見据え、構えを取る。真正面から受けてたってやるぜ。
「ギャァァァァァッ!!」
「まずは金と権力に目が眩んだお前に蔑ろにされた、家族の分!!」
「グギャッ?!」
右のストレートを躊躇いなく顔面にぶち込む。吹き飛んだ親父を飛んで追いかけ、吹き飛んだ先で左の拳を構える。
「次はお前が無理矢理発展させたせいで、仕事も生活もめちゃくちゃにされた連中の分!!」
これも振り抜いて、転がって来た親父の脇腹に突き刺す。またぶっ飛んだ親父をまた追いかけて、追撃をする。
殴られるだけで済ませんだ。可愛いもんだろ!!
「次はテメェの都合で殺された、兄弟の分!!」
甲羅を捉えて、ぶち破る。バキバキと砕ける音と親父の悲鳴を聞きながら、最後の一撃のために『兄弟』のメモリーを思い出チェンジャーに挿して、ぐるりと回した。
コレで終わりにしてやるよ!!あとは牢屋で大人しくしてやがれ!!
【必殺!!】
「ーーッ!!」
「最後は散々人をコケにしておきながら、マトモな人望の1つも得られねぇ、テメェの分だぁっ!!」
翼を一打ちして、低空を加速しながら飛ぶ右手に魔力がまとわりつく。
これで、正真正銘、テメェとのアレもコレもチャラってことにしてやるよ!!
「『フラツィーナックル』っ!!」
メキョりと音を立てて親父の額に魔力を纏った拳が突き刺さる。
派手に吹き飛んで、大通りの硬い路面を2、3回バウンドしてから、砕け散ったビーストメモリーの残滓と共に、親父の身体は元の姿に戻っていた。




