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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
第二回!! ダチとの故郷と俺らの度胸!!

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親父


「そんな事はどうでもいい。アンタみてぇなのはそろそろ引き際だぜ?」


「私が?今まさにトゥランを発展させている私が引くと?やはり馬鹿だなお前は」


一応、忠告のつもりなんだがな。聞く耳は持たないらしい。


暗殺計画の実行一歩手前まで行ってるようなトップが作る街が良い街を作れるとは思えねぇよ。


しかも権力や金の闘争の結果じゃなく、純粋に恨まれて憎まれて、明確な殺意を持った復讐みてぇな暗殺の話が出てきちまってるような奴じゃな。


清廉潔白が良いってわけでもねぇのが政治や統治なんだろうが、暗殺を実行に移せちまうほど一大勢力になってるってのが問題なんだ。


大多数にお前はもうトップじゃなくて良いって思われてるってことなんだからよ。


目ぇ覚ませや。


「お前のようなクズは処分するに限る。あとはお前だけだからな」


「……アイツらは」


「とっくの昔に魔物の餌さ。死骸くらいは役に立ってもらわなければな」


「……」


ギルのおっさんにそれとなく言われていたから覚悟はしてた。おっさんが口を濁すレベルの酷い目に合わされて、アイツらはこのクソ親父に殺された。


だから、思っているよりも俺は冷静になれた。思わず飛び掛かりそうになっても、すんでのところで踏みとどまれた。


そんなことをしたところで、アイツらは帰って来ない。そんなことをしてもクソ親父の思うツボ。


人を殴れば罪になる。当然の事だが、俺が親父を殴れば更に適当な理由をでっち上げて死刑にでもなんでも出来る。

むしろ、いつかそれをするためだけに兄弟達を殺したまである。


自分の最大の汚点である、俺を引っ張り出すために。


「お前は、本当にクズだな」


「価値の分からんゴミに言われたところで何とも思わん。どのみちお前はこの後死ぬのだ。足りない頭でも理解出来るように説明してやろうか?」


「そこまでバカじゃねぇよ。ただ、お前も同じ穴のムジナだぜ」


そうでなくても、親父の特技はでっち上げだ。こうやって派手に乗り込んで来た俺にある罪無い罪積み上げて、適切に処理するつもりだろうよ。


ただまぁ、テメェも同じことをされるだろうことをクソ親父はわかってないみてぇだけどな。


「私はこの街の王だ!!誰も私には逆らえない。ここは私のための街となり、バカどもは私のために金を稼ぐのだ。いずれ、ミルディース全土をそうしてやろう。ふふふふ、はははは!!!!」


親父の目に映るのは腐りきった欲だ。まるで肉を貪る獣のように、欲に染まりきったその目は俺にはウジがたかっているようにも見える。


スバルの目とはまるで違う。アイツの目は澄んだ綺麗な目だ。

ただ真っ直ぐ、自分の信じたことをなんの疑いもなく見続ける。進み続ける。


見てて危なっかしいが、それでいて不思議と付いて行きたくなる。コイツと一緒に進んだら、どんな世界が見られるんだろうと期待してしまう。


だから俺はスバルを大将って呼んでる。俺らのリーダー。先頭を歩いて、道標になってくれるスゲェヤツ。


ここで終わるわけにゃいかねぇ。俺はこれを乗り越えて、大将のところに行かなくちゃなんねぇんでな。


「ふふふ、とっても素敵な欲望。まるで猿山のボス。獣性丸出しだわ」


ここをどうやって切り抜けるか。ギルのおっさん達とも合わせなきゃならねぇのを考えて、頭をフル回転させてたところに突然聞き覚えない声が聞こえてきた。


女の声だ。こっちをバカにしたようなそんな女の笑い声。


あんまりにも脈絡のない誰かの登場に、俺は警戒心を持って振り返る。だってそうだろ。こんな大騒ぎしている中に堂々とやって来る奴なんてイカれた野郎か、あるいは……。


「誰だ、テメェ」


「貴方にはもう興味は無いんだけど……。名乗らないのも失礼よね。私はファルベガ。いずれ女王になる者よ」


気でも狂ってるんじゃねぇか、というのが率直な感想だ。どいつもこいつも王だの女王だの。


そんなものになって何の意味があるってんだよ。そりゃ王様は人の頂点みてぇな存在だろうけど、テッペンとってどうすんだ。その後は?

とった先のビジョンが無けりゃそんなもんに意味はねぇよ。


親父と言い、このファルベガって女といい。なんでそんなに権力に縋りつくんだ。


「俺にゃ、その王様になるって気持ちがサッパリ分からねぇから教えて欲しいんだけどよ。そんなもんになってどうするんだよ」


「そんなもん、なんて言ってしまう貴方には決して分からないわ」


「そうかよ」


じゃあ知らなくて結構だな。俺にとっては王様なんて立場だけもらっても、嬉しくも何ともねぇよ。

ただし、親父は違うらしい。


「貴様のような小娘が女王?笑わせる。まだケツが青いようなガキが王になれるものか」


「うふふ。そうね、貴方よりはずっと若いわ。でもね、王の器で無いのは貴方の方。その欲にまみれにまみれた汚い器じゃあ王なんて到底……、む・り」


煽るファルベガに親父は頭に血を昇らせる。今にも怒鳴り散らかしながら殴りかかって来そうな気配に身構えたところで、ファルベガは懐から一枚のメモリーを取り出す。


そう、メモリーだ。俺もよく知ってるそれは……。


「その汚い器に、せめて王になるだけの力で溢れさせてあげるわ」


「――ッ!!逃げろ!!親父っ!!」


「その獣性、解放なさい」


ビーストメモリー。俺をバケモノに変えたそれが、親父へと投げ付けられた。

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