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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
第二回!! ダチとの故郷と俺らの度胸!!

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親父


「おいおい、トゥランを離れてから半月も経ってねぇハズだろ。どうなってやがる」


根城にしていた廃倉庫は古くはあったが、大きさはかなりあった。


なんでも、一昔前に商売で成功したところが商品を保管するために作らせたデッカい倉庫だったらしい。

まぁ、その店はそのあと数年であっさり潰れて、この倉庫は持ち主不在のオンボロとして取り残されたとかなんとか。


そんなデッカい倉庫が半月もしないうちに更地になるなんて、そんなことあるか?


そりゃ魔法でやりゃ良いだけの話だが、ここは位置的には奥まっている上に建物に囲まれてる。


壊すにしても順序がいるし、壊したらその残骸だって出る。

壊してハイおしまいってなるほど魔法は万能じゃねぇからな。


あの規模の建物を取り壊すのなら普通に考えたら1ヶ月くらいはかけてやるもんだ。


それが半月もしないうちにその面影すら残らない更地にされちまってるってぇのはどういう了見だ?


「やっぱり戻って来たね。仲間思いの君のことだ、何かあっても必ず戻って来ると思っていたよ」


頭を捻る俺の後ろから、突然声がして振り返ると見覚えのあるオッサンが立っていた。

後ろには何人もの武装した連中がこっちに攻撃態勢を取っている。


本当なら驚くところだが、俺は至って冷静にオッサンと向き合った。

知ってる顔、というか散々世話になったからな。色んな意味で。


「ギルのオッサン……」


「久しぶりだね、リベルタ。ここ数年は君の顔を見てなかったからホッとしたよ」


ギルのオッサン、と呼んでるこのオッサンは俺達暴走族をとっ捕まえる役割。

まぁ警察だな。そこでそこそこ偉いオッサンだ。


散々悪さをした俺達は定期的にこのオッサンに色々な意味で世話になっていた。


お縄にかかるのは勿論だが、ギルのオッサンは俺達を出来るだけ理解してくれようとしてくれた数少ない大人の1人だった。


取っ捕まった俺達の話や事情をよく聞き、するにしてもこの程度にしろと線引きを教えてくれた人でもある。


大人は嫌いな俺達だったが、ギルのオッサンとはそこそこ仲が良かった。

面倒を見てくれた人って言えばいいのか?たまに飯持って来てくれたしな。


「君達はここで待機しなさい」


「ですが……」


「彼は暴走族のトップだが、一番分別のつく人物だよ。それに、アレが先日の化け物と同一だと本当に思うかい?」


「……了解しました」


ギルのオッサンは後ろでピリ付いてる部下達に待機指示を出すと、いつものように薄笑いを浮かべながら俺の隣までやって来た。


この笑顔がこのオッサンの肝というか、こえぇところだ。ずっと同じ表情だから何を考えてるのかわからねぇ。

ただまぁ、長い付き合いのある人だ。俺も何をするでもなくただギルのオッサンが来るのを待った。


「先日の話を聞いた時は驚いた。君が被害者であることは聞いているよ」


「心配をかけました。街の方は?」


「公共の体育館が一つダメになったくらいかな。レジスタンスの方々がたまたまいてね。素晴らしい対応をしてくれたんだが、その様子だと覚えてないようだね」


俺がメモリーと呼ばれる物で化け物にさせられている間の記憶は殆どない。


特に化け物に変わっちまった直後は全くと言って良いほどだ。あの日、自分の身に何が起こったのかさえあやふやで俺は消えかけの意識でトゥランから離れることだけに注力していた。


それが成功したのかまでは話からねぇけど、気が付いた時には森の中にいてスバルのことを追いかけ回してた。


って訳だ。あの頃になると少し慣れてたのか、短い時間なら抑え込む事もできたが、それまでだ。

レジスタンスの連中には感謝しねぇとな。


「すんません。あん時の事は殆ど。何とか街から離れるのが精一杯でした」


「いや、良くやった。君の強い意志がそれをさせたんだ誇って良い」


「ありがとうございます」


相当な迷惑をかけた。今更だけど、それでも俺達の事を信じてくれているギルのオッサンに出来る限り頭を下げる。


それを見て、ギルのオッサンはポカンとしたあとにケラケラと笑い出した。

何がおかしいのかわからねぇけど、ツボに入ったらしい。


「まさか君がそんな大人な対応をするとはね。随分と様変わりしたじゃないか」


「……救ってくれた人がいまして。そいつがまた面白いヤツなんですよ。殆ど遭難して路頭に迷ってるのと変わらねえのに、ずっと笑ってるようなヤツです」


スバルのことを端的に伝えるとうんうんと頷いて聞いてくれる。


このとりあえず話を聞いてくれる姿勢が、俺たちにとっては心地が良かった。他の大人達は話を聞く前に魔法をぶっ放してくるか逃げるかだったからな。


まぁ、それは俺たちが悪いんだけどな。ガラの悪い奴にそりゃ近付く物好きはいねぇよ。


「そいつを見てたら、諦めて燻ってるのがバカらしくなりました。自分のやったことが許されることは無いですが、落とし前をつける事は出来ると思ったんで」


「それはどういう意味でだい?」


「そりゃギルのオッサンならよく知ってるだろ。全部です。兄弟達のことも親父のこともです」


「そうかい」


俺の話を聞いて頷いてから、ギルオッサンはポケットからタバコを取り出してふかし始める。


珍しいな、オッサンが人前でタバコを吸うなんて。マナーとかには人一倍うるさい人なんだが。


「……君には酷だが、悪いニュースが2つある」


「悪いニュース?」


「一つ目は、君たちの兄弟はもう誰一人としてこの街にいないこと。二つ目はそれをしたのが君の親父さんってことさ」


「……は?」




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