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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
旧王都

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旧王都 サンティエ


「って感じだ。見た感じは大型の魔物が相当な数ウロウロしている以外は静かなもんだったぜ」


世界の穴周辺へと調査に行って来てくれた碧ちゃんとサフィーリアさんの二人の報告を受け取った私達は早速、その情報の分析を始める。


二人が持ち帰ってくれた情報は非常に有意義だ。有効活用しなければならない。


「逆にその静けさが不気味だね」


「この面積のひらけた土地に魔物が100体弱、という時点で異常です。しかも縄張り争いや狩りをすることもなく、ただ徘徊しているとなると誰かが意図的にこの場所に魔物たちを配備したと見るのが最もらしい理由でしょう」


パッシオとカレジの意見は彼ららしいものだ。パッシオは言葉少なくも自身の中で一番の疑問点を、カレジは全体的な状況の異変をすぐに分析している。


この二人もなんだかんだで良いコンビというやつなんだろう。3年も一緒にレジスタンスのトップもやっていればそうもなるか。


なんてことを思いつつ、私も碧ちゃんからスマホを受け取って、撮影された魔物たちの画像を見る。


「……嫌な感じ。画像越しでも見た目以上の気持ち悪さを感じるわ」


「わかるのですか?」


「何となくね」


画像の魔物たちを見て真っ先に感じたのは嫌悪感だ。不自然さと気味悪さ、何より本来の理から外れているという直感的な感覚が私にそんな感情を抱かせている。


恐らくは『繋がりの力』による副産物だと思う。こっちに来てからと言うもの、そういった自分の中にあるセンサーのようなものの感度が上がっているように感じている。


やっぱり半分が妖精とだけあって私自身は妖精界の環境の方が適しているみたいだ。真広と比べると妖精寄りの体質をしている自覚もある。


じゃなかったら性別が変わった歳が10も若返ったりしない。ある程度自由に身体の形を変えられるのはどう考えても妖精側の性質だし。


そういった妖精側の感覚がこちらに来てから日に日に強くなっていってる気がする。

真広はどうだろう。彼は親が同じでも生まれが私と異なる。


どちらかと言えば人間に近い。妖精の性質が3割、人間の性質が7割ってところかな。

逆に私は妖精の性質が6割、人間の性質が4割ってとこ。


「その感覚に頼って言えば、この魔物は間違いなくショルシエの関係ある存在だと思う。分身達と会った時の感覚に似てるから」


「エナ、ジィオ、カトル、ベンデ。ショルシエの分身とはまた別のタイプの眷属って事か?」


「そこまでは。少なくとも影響を受けてる。普通じゃないのはそのせいかも」


「ショルシエには隷属魔法もあるからね」


断定するには至らないし、断定して行動するのは危険ね。もとより、そんなことをするしちゃうような人は此処にはいないけど。


「マーチェ、グリエ。貴女達はどう思う?」


「うぇっ?!私ですか?!」


「何テンパってんのよ。この場にいるんだから意見を求められることはあるでしょ」


私のそばに控えていたマーチェとグリエにも意見を聞きたい。それに彼女達には常に思考を止めないということをクセにしてもらいたいしね。


相手はズワルド帝国とショルシエ。一癖も二癖もある相手だ。頭脳が幾つあっても無駄なことは無い。


妖精界の常識側からの視点というのは私達からすると貴重な意見でもあるし。


「私は罠だと考えます。パッシオーネ団長率いるレジスタンスと殿下の所属する『魔法少女協会』。共に強力かと存じます。本格的な同盟関係を結ばれれば、脅威と感じるのが普通です。魔物だけと油断させ、挟み撃ちにするなどが考えられるかと」


「良い視点ね。私も同意するわ」


グリエは視点が中々鋭い。頭の回る子だと改めて思う。この頭脳が私の部下として腕を奮ってくれるのなら頼もしい。


マーチェはパタパタと小さな翼を忙しなく動かして、考えている。元々頭脳派ではないタイプだけど、この子に期待しているのはそこじゃない。


「わ、私も、罠だと思います。グリエと違うのは、えっとその、切り札を温存している的な?」


「と言うと?」


「分身って何人も作れるわけじゃないのかな、って。何人も作れるのならもっと作ってると思いますし、最初から分身に任せれば良いです。分身に頼り過ぎると人的不利になるから、数を揃えたのかなって」


うんうん、マーチェも良い感じだ。この子は情報をもとに想像をして、こうじゃないかあぁじゃないかと言ってくれる。


元々お喋り好きの噂好きだ。そういう妄想や想像も視点としては大いにアリだ。


「いいと思う。マーチェの意見は個人的に特にね。だから最初から切り札を切ろうと思うわ」


相手が待ちの姿勢なら、攻めた方がいい。それも特別派手にね。

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