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第3話「悪役令嬢は転生する」

『邪神』

 千年に一度復活するとされており『地球ではない世界を滅ぼす』神として人類が力を合わせて立ち向かうべき『敵役』である。ちなみに二十年前に復活している。


『魔王』

 五百年に一度『魔族を洗脳・統率し人間を滅ぼす者』として現れるとされており、神の加護を受けた勇者と対決する運命にある『敵役』である。ちなみに二十年前に覚醒している。


 人間視点では彼らは光の神より加護を受け『正しい人間が討伐する対象』、絶対悪であるの2人。

 神様視点で言えば『世界の持続的発展継続の為、人間を団結させる』『役割』を持った2人である。


 だが待ってほしい。邪神様の視点に立ってほしい。


 千年に一度叩き起こされた挙句誰も何の話も聞かないで剣を向けてくる。

 『いや、そんなのじゃ死なないから』といっても聞かない。

 正直迷惑なイベントである。

 かつて余りのわずらわしさと寝起きの不機嫌も相まって、邪神は一度本気で怒り人間を滅ぼしてしまった。

 その後邪神は光の神を含めて天界の一同から怒られた。


 ……邪神様的には不条理である。


 そして後始末も邪神がすることになった。


 邪神様が真面目に抗議したが受け入れられなかった。……辛い現実である。

 今天野が邪神としてお仕事をさせられる世界で生活している人間は『ほぼ100%混じりっけなし、邪神が作り直した人間者達の末裔』である。

 ……何ともやるせない。


 なので邪神は千年に一度『しぶしぶ』お付き合いをすることにしていた。

 自分が作り出した人間たちに愛着があったからだ。

 その為邪神は『痛い振りをして滅んだように見える体』を見せていた。

 人間たちは大はしゃぎだった。なので邪神様もその流れに乗ることにした。


 1回目は『しょうがないなぁ』と思っていた。


 2回目は聖剣と一緒に銃火器を持ち出したのでお説教をした。その後、伝統的な聖剣のみで武装し、再挑戦してきたので邪神様は満足げに倒されてあげた。


 3回目は聖剣も持ってこないうえに光学兵器で武装して集団で現れた。……こっそりと光学迷彩で邪神様を包囲したところで『いい加減にしろ!』と邪神様お怒りである。

 そう、激おこである。

 ……その後全世界に向けて挑んできた勇者達の顔出し生中継でお仕置き(お尻ぺんぺん)して人間界に戻した。『歴史と伝統を大事にしろ』と滾々(こんこん)と邪神様威圧を全開でお説教をした。

 その結果、光の神から『勇者が引き篭もった』とクレームを受けた。

 思わず『最近の若いやつ(人間)は……』と邪神様がぼやいたのは致し方ないことである。

 でも仕事は仕事、なので邪神様は『新たに勇者の中二心をくすぶる聖剣を作って』勇者に再起を促した。

 当時の勇者は隠れ中二病だったのである。初め渋っていた勇者も乗せて仕舞えばシン・聖剣を嬉々として受け取り、光の神の演出を受け意気揚々と伝統装備を身にまとい邪神様へ挑んできた。

 なので邪神様、再び全世界生中継を入れたうえで派手に倒されてあげた。


 4回目は人間が宇宙進出していたので邪神も配下たちとワクワクしながらデス惑星とかを作成して派手に登場して見せた。

 作ってるときは楽しかったデス惑星。

 みんなで作ったデス惑星。

 居住性にこだわりを見せるデス惑星。

 芸術的な方向性で対立したけど、そのお陰で完成時には仲が深まったデス惑星。

 完成度高いデス惑星。

 戦争後も残るかなとワクワクしていたデス惑星。

 しかし勇者軍に跡形もなく破壊されてしまったデス惑星。

 ……その時代の邪神様は寂しい表情で倒されたと記録されている。


 5回目は中世の文明に戻ったらしく剣を振り上げて立ち向かってきた。

 それまでと違ったのは魔法という超能力を駆使し、技ごとに技名を叫ぶ勇者たちだったこと。

 切迫した状況。必死の形相で技名を叫ぶ勇者たち。

 3回目の中二病の子でさえ技名を叫ばなかったので邪神様は新鮮に感じていた。

 しかし命を懸けた戦いの場で技名叫ぶとか……。

 邪神は倒される間際いつものように言葉を残したが、少し声が上ずっていた。

『見事だ。勇者たちよ…………ぷっ。今回はお前たちの勇気と…………クスクス…………ゴホンゴホン、シッ失礼。えっと、どこまで言ったっけ……。あ~ここか~、ごほん。勇気と団結した力に免じて封印されてやろう(棒)………ん? なんで棒読みなのかって。やだなあ。思い出し笑いだよ。俺も必死なんだよ? じゃ、今度千年後ね。まったねー』。


 こうして邪神様は真面目に邪神すること諦めた。


 6回目以降10回目まで邪神様が同じような対応をした。

 すると神様上層部で『緊張感が足りない』と指摘され、会議の末に魔王(前座)制度が導入された。


 魔王視点によると、長命種の魔族たちの中で突然に『あなたは今日から魔王です』と神託を受ける者が現れる。


 『神のお告げ通り、驕った人間たちに鉄槌を下すのだ!』という初代魔王に魔族たちは冷たかった。

 『人間たちが可愛そうだよ?』と言われて相手にされない。


 1回目の初代魔王は魔族たちの支持を受けられず、逆に言われた言葉を受けて冷静になった。

 しかし初代魔王は神様の言葉も無視できない……。

 ……なので初代魔王はしょうがなく……牧場で家畜として飼育していたモンスター達をほんの少し強化して人間族を攻めた。

 『脅威になれば良いのでしょ?』とか軽い気持ちだった初代魔王だったが、うっかり世界征服を達成してしまった。そう、うっかりである。

 その後10年に及ぶ魔王の苛烈な執政が行われ、世界では飢餓問題が解消の兆しを見せ、識字率は向上して各分野において野心を抱く者が増えた。法を整備し先例を記録し始めたことで公正な裁判が始まった。

 だが苛烈な執政はそれまで見逃されていた、権力で覆い隠されていた不正や犯罪が露出してしまった。その結果、犯罪者が増えた。

 初代魔王の恐怖政治に(一部の)人々は恐怖し、そして勇者を送り込んだ。

 初代魔王は寝静まった夜に侵入してきた勇者に寝首をかかれ、討伐(暗殺)されたのだった!


 2回目の魔王は神託を『(千年)後でいいか~』と放置し、山で家族として育った黒竜たちと戯れながらのんびりと過ごしていた。そんな折、魔王は親切な旅人(勇者)からの差し入れを食べて毒殺……討伐されたのだった!


 3回目の魔王は『2回目の魔王の弟』でこの事態を予測しており、他の魔族たちの力を借り、万が一に備えシェルターを作成してそこに籠った。勇者たちは神の加護というか、神の一撃(物理)とかいう理不尽アイテムでシェルターを割りそこから侵入し、魔王は暗殺……討伐したのだった!


 4回目の魔王は『1回目の魔王と人間の姫の間に設けられた娘』だった。

 娘魔王は『自分の子供がまだ小さいので死ぬのはやめてほしい』と神々に掛け合う。

 すると神々から『ごめん。配慮不足だった』と謝罪を受けた。

 結果として娘魔王の本体は別次元で凍結し、現在世界に複製体で活動する。業務が終われば複製体が死んでも復活できるよう配慮した。

 するとやり手だった娘魔王はおとぎ話の魔王のようにふるまい、貧困地域に赴き食料を分け与え、農業指導を施し、飢えた民衆が自立できるようにした。

 まさに魔王の所業! を繰り返して国を富ませた。

 するとどこからともなく勇者がやってき、寝ている娘魔王を暗殺……討伐したのだった!

 ……なお暗殺された翌日、娘魔王は実家で復活し子供たちと長い余生を楽しんだという。


 そして今回、5回目の魔王は『面倒くさいし、殺されるのは痛くてヤダ』と邪神様に相談し、その時代にお仕事が回ってくる予定だった邪神様と共謀して異世界に逃げ出したのであった。


 ……どう聞いても『邪神』と『魔王』の行動は正しい。


 ブラック企業からの逃避は人が持つ基本的な権利である。


 『邪神』と『魔王』はこうして逃げ込んだ異世界に溶け込み、神々の監視をかわすために商売を始めた。

 その結果『非常に面白かった』のですっかり世界に溶け込む目的を忘れ、彼らは商売に没頭、結果目立ってしまった。

 さぁ、もっと上を! っと当初の目的? 何それ?美味しいの? と開き直っていた邪神様と魔王が1部上場の準備をした時の事である。

 天界が介入してきたのである。

 そう、彼らが上場したばかりの会社へ敵対的買収行為を仕掛けられた。

 裏事情を察した『邪神』と『魔王』は大企業(天界関係者)の目を盗みこっそり逃げ出した……。

 その後、内々に元部下たちを誘い新しい新会社を建てる。大企業(天界関係者)にばれないように……。

 その為『邪神』と『魔王』は外向きには病気療養のため指示は温泉から出すと言う形で、この温泉に引きこもる。

 地球世界管理神の関係者(勇者)が行使する封印術で天界からの目をくらまし、一時的ではあるが天界からの干渉を回避していたのである。


 そうここ(温泉)は地球世界管理神の関係者(勇者)が経営する『勇者の湯』であった。


「あー、封印きついわー。もーここから出られないわー(棒)」

「ですねー、封印大変だー。もーここからでたくないわー(棒)」

「……封印解いたろか、この愚図ども……」

「あ、今日は街まで行ってくるから! 封印範囲拡大しておいて~。これいつもの宝珠ね。ああ。言い忘れてたけど日本全域まで封印範囲にできる宝珠だからこれ。この世界の神様も生唾物の秘宝だからね~。とられないでね~~~」

 固まる勇者を横目に『邪神』と『魔王』は車に乗り込み街に行く。

 もちろん仕事をするためだ。


「「ショッピング楽しみだ!!」」

 ……『邪神』と『魔王』のバカンスは終わらない。


「あー、もうこの封印温泉から出なくていいね」

「私は嫁が欲しいです。そして嫁と温泉はいりたいです」

「混浴か! それはいいね!」

「あ、邪神様は入らないでくださいね」

 仕事帰り、灯をピックアップしてスーパーで買い物をする邪神様。

 本来の業務に帰る気は、当分無さそうである。


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