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1-4 三毛猫、二度あることは三度あることを知る

続きです。ようやっとオトモたちと合流しますが、ただでは合流できないのがスズタルです。

楽しんでいただけたら嬉しいです。


いろいろ考えてみましたが構成が今ひとつよろしくないのと、全体読みにくいのでコレは一旦ここで終わりにします。

この内容で書きたいなぁとは思っているので、いずれ再掲します

しばらくこのままで公開しますが、再掲版を公開しましたらこちらは削除します

よろしくお願いいたします

 マリエールさんたちと別れてしばらく『JMX』を走らせていると、ひとたび森を抜けて元の麦畑沿いの街道に出る。また少し走ると前方左側に鬱蒼とした森が広がっていて、その右脇を街道が走っている。

 ここまでくると流石に畑は点々としていて、ほとんどは野原で人の手も入らず草が生え放題になっていた。


 そろそろオトモたちと合流しても良い頃だ。マップを改めて確認する。

 二人ともそれぞれ前方400mほどの場所を接近中で、ハチワレの猫乃国人のドングーリの方が少し先行しており、その6〜70m後ろを同じく鯖トラのガラクターが追いかけるように近づいてきていた。

 まずは彼らと合流してベースキャンプに行き、基地にコンタクトして、この戦場と戦況について、そしてパーティーメンバー全員の状況について問い合わせる必要がある。


「ガラクター、ドングーリ、街道をそのまま道なりに直進、50km前方の市街に向かうぞ。にゃー」自身も街道を南下しながら通信する。


 接続が悪いのか途切れ気味に「ドングーリ了解。こちら街道を市街方面に移動中。ただいま交戦中につき、援護求む。にゃー」という返事。

 交戦だって? え〜またぁ〜、 そう思いながら右前方を見やると土埃が街道を走ってくる。馬車がものすごい勢いで走っているようだ。どうやらドングーリはそこにいる。


「ガラクター了解。後方50mから接近中。少し頑張るにゃ。にゃー」


 スズタルは移動速度を速めながらやれやれと言わんばかりに頭を振った。

「こちらスズタル、7.5秒後にランデヴー。我輩の到着まで持たせるにゃ。にゃー」


「ドングーリ、了解。早よ来て〜。にゃー」


 ドングーリの情けない返事からきっかり3秒後に、スズタルは馬車を肉眼ではっきりと捉えた。2頭立ての荷馬車の荷台の上でドングーリが何かと交戦中だった。

 それは光と土埃の加減で時折影が見えたが、基本的には不可視な何かだった。ステイタス表示には「?????」としか表示されない。レベルもHPも定かではない。

 見えない敵の攻撃の手数が多いらしく、両手に持ったミリタリーナイフだけでは防ぎきれないようで、時折ドングーリのヘルメットから火花が散っている。戦闘服にも擦ったような傷がある。ドングーリは防戦一方だ。


 視覚を赤外線、紫外線と切り替えてみたが、もやっとしていて形状をはっきりと捉えることができない。自分たちの不可視ステルスモードと同じく電磁波全般の反射を抑えるようだ。


 荷馬車の御者台には二人の人が乗っており、一人はフードで頭を覆った女性でドングーリと共に見えない敵に鋤で立ち向かっていた。もう一人は若いラテン系の男で必死に手綱を取っていた。

 見えない怪物が馬車を壊そうと車輪に足を伸ばすのを、ドングーリが阻止し、御者の男を狙うのをフードの女が一生懸命防いでいると言った攻防が繰り広げられているようだった。相手は見えないし、馬車や人を庇いながらなのだからドングーリの苦戦は致し方がないというところだろう。


『ヤ●ハ・NI●KEN』をそのまま二回りほどキュッと小さくしたような『NX9』電動戦闘三輪車が、ようやく荷馬車の後方5mぐらいまで追いつく。スズタルやドングーリと同じような戦闘服にヘルメット姿のガラクターは、雑囊アイテムバッグからM82そっくりの対物ライフルを取り出し、ちゃっと構えて照準を合わせる。とは言っても、相手が見えないので、ドングーリや他の人に当たらないように、時折薄っすらと見える胴体部分を狙う。跳弾に留意して弾は着弾してめり込むと爆発する12.7mm徹甲炸裂弾を使う。

 狙いが定まったので弾を撃ち込む。ところが一向に手ごたえがない。本来なら着弾して爆発するはずの弾がうんともすんとも言わない。よくよく見ていると、見えない何かから弾が押し出されて下に落ちると爆発せすせにそのまま消えてしまった。


 ガラクターは一気に近づくと、ジャンプして見えないそれに取り付く。手早く超振動刃ヴィブロブレードミリタリーナイフを取り出し、見えないそれに突き立ててみたがやはり手ごたえがない。切り裂こうと引いてみたが、そのまま押し出されるようにミリタリーナイフの刃が出て来て、そのまま抜けてしまった。

「分隊長〜、こいつの外皮、厚くて堅たいだけじゃない〜。なんか変にゃ。にゃー」


「見えないんでは対策しにくい。二人ともペイント弾あるか?。にゃー」


「ありますにゃ〜。」と言うなりガラクターはハンドガンでパンパンと撃ち始めた 。

 見えないそれに弾が当たるたびに蛍光グリーンのペイントが飛び散り、それの輪郭を描き出す。やがて見えてきたのは、蛍光グリーンのオバケ蜘蛛が6対12本の足を次々と踊るように振るっている有様だった。


 するとガラクターの背後に魔法陣が現れる。危ないと思った瞬間、フードの女が鋤を向けると魔法陣が砕けるように消えてしまった。女はどうやらオバケ蜘蛛の魔法攻撃を無力化してくれていたようだ。


 相変わらず防戦一方のドングーリとフードの女ではあったが。見えるようになったことで幾分攻撃を捌きやすくなっていた。


 スズタルは『見切り』と『弱点特攻』というスキルを発動する。『見切り』は敵の弾道や剣筋などの攻撃や防御行動を先読みできる。『弱点特攻』は文字どおり敵の急所を集中的に攻撃するスキルだ。

 蜘蛛の怪物をよく見ると、頭にあたる部分に触手に覆われた大きな顎がついていて、その少し上、他の脚より少し短めの足の付け根のちょうど真ん中あたりに、仮面舞踏会でつけるマスクのような『顔』みたいなものがある。

 とにかくその『顔』と顎の中がスズタルの目にはピンクに明滅して見えていた。そこが急所だ。他に足の付け根の関節部分、腹部の蛇腹状の殻の隙間が淡くピンクに光っている。


「ドングーリ、ガラクター、足の付け根の関節を狙え。反撃と跳弾に気をつけろ。にゃー」


「てことは」とドングーリ。

「スタンバトンかっこ超強力かっことじ、だにゃ」とガラクターは荷台に移動する。。


 二人が手を振ると三段のアンテナ状の棒がしゃきんという金属的な音とともに伸びる。それをオバケ蜘蛛の関節に突き立てて手元のスイッチを押す。バチンという大きな破裂音とともに強烈な電流が流れ、一瞬蜘蛛の動きが鈍る。


 スズタルがあと少しで馬車に取り付くという段になって、影の中のウルツーが話しかけてきた。

「(あたしも、やる〜。あいつなら、おさえるのかんたん〜。)」うん、かわいい。


 ウルツーにも協力をお願いし、ドングーリとガラクターにウルツーのことを伝えると、スズタルは腰のドゥターヌックOGM110光刃剣フォトンソードを手にした。斬撃モードのままスイッチを入れると剣道の竹刀のような光の刃が形成される。


 JMXの上に立ち上がって身構えたスズタルは、荷馬車とすれ違う瞬間にその荷台に飛び移る。

 と、同時に影の中からウルツーが飛び出す。突然2mを超える巨体の狼が飛び出して来たことに、フードの女とオバケ蜘蛛は驚いたようで、一瞬両者は動きが固まってしまった。


 気を取り直したかのように新たな敵に2本の脚で攻撃を仕掛けてきたが、スズタルはその攻撃を華麗にかいくぐる。


 ウルツーは器用に空中で体の向きを変えて、オバケ蜘蛛の背中に着地すると、素早く魔法を転回する。オバケ蜘蛛の上下に魔法陣が展開され、それでサンドイッチにしたみたいになるこれで6対の脚のうち2対が全く使えなくなった。

 残った脚の一本でウルツーに攻撃をしようとするが、細かいステップと噛みつきと防御魔法で、楽々と捌いてしまう。

 今度は魔法で攻撃しようとしたが、フードの女が無力化する。


 オバケ蜘蛛は残った脚を振り回して、スズタルたちをなぎ払おうとするが、スズタルはそれをギリギリで華麗にスルーして、その脚の根本にするりと滑り込み、関節にグイと光刃剣フォトンソードを差し込み斬り上げる。するといとも簡単に蜘蛛の脚が切り落とされ、荷台にゴロンと横たわる。


 ドングーリとガラクターも脚攻撃をミリタリーナイフで捌きながら、関節への攻撃を続けている。それが功を奏したのか、若干だが蜘蛛の動きがぎこちなくなっているようだ。おかげで避けやすくなっていた。


 フードの女はというと脚が届きにくい御者台に戻って、魔法攻撃の無力化だけに的を絞っていた。


 スズタルは、次の脚の攻撃もギリギリで避けると、今度は踊るようなステップで蜘蛛の頭の正面に出る。それに驚いたのだろう、目の前の『顔』が歪む。

 光刃剣フォトンソードを刺突モードにするとレイピアのような細身の光の刃が形成されるが、それを躊躇なく『顔』の眉間に当たる場所に突き立て、根元まで押し込んだ。


 光刃剣のスイッチを一旦オフって蜘蛛の脇へと体をかわし、すぐさま光刃剣をオンにする。再び斬撃モードで、荷馬車を掴んでいる4本のうち一番手近な1本の脚の根元の関節に剣を差し込み、ぐりっとねじ上げるように切り上げる。これを4本に繰り返したところで、飛び退くように御者台に立った。


「ウルツー、飛び退くにゃっ」


「(はーい)」と、いささか場にそぐわない可愛らしい声とのんびりした調子で返事する。


 ウルツーが蜘蛛の背中をポンと蹴って宙に浮いたその時に、荷台を掴んでいた脚が体から外れて蜘蛛はもんどり打つように馬車から離れて地面に巨体を叩きつけた。


「どうーどうー」御者の男性が手綱を引いて荷馬車を止めるなり、ドングーリとガラクターは脱兎のごとく飛び出して蜘蛛に向かった。

 蜘蛛はひっくり返ったまま、動きがない。ドングーリは顔に空いた穴に、ガラクターも取れた足の付け根に、二人同じようにスタンバトンを差し込んで電撃を浴びせた。


 その様子をスズタルはウルツーをわしゃわしゃしながら眺める。ウルツーは嬉しそうに尻尾をブンブンと振っている。ひとしきり、 わしゃわしゃした後にウルツーを影にいれた。


 海老や蟹の殻が焼け焦げる時の少し旨そうな匂いが漂うとともに、これまで不可視だった身体が一瞬で見えるようになった。電撃のショックで残った脚を天に向けてビクビクと痙攣させていたが、どうやら死んだようだ。これまで見えなかったHPゲージの緑の部分が全部赤になっており、表示も「0/22514」となっていた。


 巨大蜘蛛の死骸をしげしげと眺める。体節は蜘蛛と同じく2つで脚は12本。その他に顎の下にモノを掴めそうな4本指の短い腕が2本。

『顔』に見えたものは、まさしく人の顔の目の辺りだけを切り取ったお面のようなもので、それが毛の生えた頭の部分に縫い付けたように付いている。

 顎はいかにも虫の顎で、左右に開く大顎と上下に開く顎が前後に組み合わさっていて、その周りをミミズ状の触手が覆っていた。今までゲームや映画などで見たモンスターの中でもかなり独創的な部類に入るなとスズタルは思った。


「なぁ、あなた方たち。こいつのこと知ってるようだが・・・」スズタルは御者台の二人に問いかけた。


「アラクノソーマと言う魔獣の子供じゃな。」女が口を開いた。


「これで子供にゃんすか」ガラクターがスタンバトンでつつきながら感心していた。


「うむ。小さいほうじゃな。とはいえ1匹でも騎士10騎規模で対処せねばならぬほどの怪物なのだが。あっさり倒すとは・・・」女は心底感心した様子だった。


「親が出てきたら大変だにゃー」とドングーリ。


「親は滅多なことでは巣から出てこん。そこは安心してよい」女は続けた「アラクノソーマは今時期になると己が子供を各地に放すんじゃな。そうして人を拐うのよ。1つには使役するための奴隷として、1つには卵を産み付ける揺籠として、いまひとつには奴らが食す菌類の苗床としてじゃな。」


「1匹で?」とスズタル。


「いや」女はかぶりを振る「こやつは斥候じゃな。襲えそうな村を見つけて親に報告する役割よの。襲う時は何十という群れでやってくる。」


 女はスズタルの前に立ち、マントのような外套のフードを外した。背は特に高くはない、すらりとした細身で160cmぐらいだろう。それでもスズタルにしてみれば見上げなければならないわけだが。なんか悔しいぞ。

 そしてなかなかの美人だ。男がラテン系なのに対して女の方は東洋系の顔立ちだった。切れ長の目、ほっそりとした彫りの浅めの顔、薄めの唇。ただ髪だけはやや青みがかった銀色で東洋人離れしていた。服装はというとこれまた日本の巫女のような着物がフード付き外套の下から覗いていた。


「群れとはぞっとしないにゃ」とスズタル。


「うむ。あの猛烈な群れは見ただけで体力を削がれる感じがするぞ。しかし、おんしらがこやつをさっさと倒してしもうたから、もうこの辺りには来ぬであろうな。」


「ああ、にゃるほろ。斥候を倒すような敵がいるのだからってことかにゃ。」


「そういうことじゃな。しかも圧勝じゃったしの。それに、おんしの従魔、あれも居るのでは分が悪いじゃろう。」

 女はニッコリと微笑むと手を差し出した。

「あてはシルッカじゃ。シルッカ・シルケストリ。危ないところを助けて貰うた。感謝する。」


 名前は東洋系じゃないのねとスズタルは思った。

 ふと見るとシルッカと男のマップ表示が青になっている。これは共闘したことで暫定的にパーティメンバーとして組み込まれたのだろう。

 となればステイタスが見れるはずだ。AR表示にシルッカのステイタスを表示してみる。

 名前の欄にシルッカ・シルケストリとちゃんと表示されており、レベルや種族も表示されていた。なになに、職業は巫女、レベルは90、それに比べて後ろの男なんてレベル24。これはこの女が強いのか男が弱すぎるのか。女は種族が神人となっているから、多分これでも平均より高いレベルなのだろう。


「私はジャンニ・ロレンツィ。見ての通りの商人です。連れのシルッカとは、まぁ旅の仲間です。護衛もやってもらったりしてますが。」御者代から降りてきた男はやや控えめに握手を求めた。

 男の方は見た通りに、ラテン系の名前だ。ステイタス表によれば男は種族はヒト種で職業は商人、サブ職業が剣士となっている。軍隊経験者なのかもしれない。

 服装は簡素で布地は綿織り物らしいが質は高くはない。スペクトル分析によれば、彼らの服は全て天然素材でできている。デザインも中世っぽい。


「我輩はノイン・ヴェルテン攻略軍マーチへアズ・マッド・バンケット所属少尉、スズタル・バクナクスにゃ。こいつらはガラクター曹長とドングーリ軍曹。僕の部下にゃ」

 スズタルが紹介すると、ガラクターとドングーリも手をあげて「ちぃーす」などと軽い挨拶をする。


「はぁ、軍隊の方?。」ジャンニは小首を傾げる。 そもそもノイン・ヴェルテン攻略軍なんていうのは聞いたこともない。どこか遠くの国の軍隊なのかなとも思うが、そんなところの人が此処にいるのも変だと思ったからだ。


「それではどちらのお国のお方なんでしょうか ?。ノイン・ヴェルテン攻略軍というのもお聞きしたことがありませんし。」

 スズタルは空を見上げてフーッと息を吐き「空の彼方の遠い国ですにゃ。」とだけ言った。


「ジャンニ。あんまり詮索するのは失礼ぞ。あてらは助けて貰うた身ぞ。」シルッカは蜘蛛の脚を拾って荷台に放り投げる。見た目よりも力持ちだな、さすが神の人とスズタルは思った。


「いやいや、あなたにも随分助けてもらったにゃ。礼を言うにゃ。」とスズタルがシルッカに言うと何のことかしら〜、などと躱されてしまった。


「この死骸はどうするのかにゃ」

「この先にイタルレリアという街があります」とジャンニは街の方を指差す。「そこの冒険者ギルドで引き取ってもらいます。討伐報酬もでますし、魔獣の死骸はいろいろ使い出があるので、高く引き取ってくれるんです。例えば・・・」

 ジャンニはそう言いながら腰のナイフを抜くと、蜘蛛の胸部の外殻の隙間に差し込み、切り裂くとその隙間に手を入れ、何か石のようなものを取り出す。

「この魔石なんかは大銀貨5枚で引き取ってもらえます。」次に脚をよいしょと抱えると「この脚は殻の部分は防具なんかに加工できますし、中の筋繊維もボウガンなどの素材になりますから、1本あたり小金貨2枚ぐらいにはなります」脚を荷台に放り込む「全部で金貨6枚は下らないでしょうね。」


「申し訳にゃいが、価値がよくわからにゃい。」日本円に換算すると幾らになるかは分かるが、この世界の物価に当てはめるとどうかがわからないので聞いてみることにした。


「そうですね。兵隊さんの1日の給金がおおよそで小銀貨2枚と大銅貨5枚ぐらいですからね。兵隊さんの7年分ぐらいのお給金というところでしょうか。」


「なんか、ピンとこないにゃ。」


「では、そうですね。食べるに全く困っていない普通の平民の4人家族の1日の食費が、晩酌付きで、大体ですが大銅貨6枚です。」


「27年分の食費!。それは大金だにゃ。」


「ええ、大金です。」ジャンニはニッコリと微笑む。顔には出さなかったがスズタルの計算の速さに驚いていた。これは、商売相手としては手強い。

「ところでこれを売ったりする手数料として一割でいかがでしょうか。」


「吾輩たちはお金にはたいして困ってないにゃ。だからこれで得られる利益は君らが取っておけば良いにゃ。」


「それでは申し訳がありません。」と固辞するジャンニ。


「じゃあ、代わりにやって欲しいことがあるにゃ。」とスズタル。

「吾輩たちは突然此処にやってくることになって、右も左もわからないにゃ。誰に何を頼めば良いのか、、どこに行けば良いのか、全くわからにゃいのにゃ。」スズタルたち3匹もとい3人で蜘蛛の胴体をえいやっと担いで荷馬車に乗せた。

「そこでにゃ。いろいろ教えてもらいたいし、我輩たちの代わりにあれこれ動いてもらいたいし。どうかにゃ?。」


「良いのではないか。命の恩人だしな。それに」シルッカはジャンニの首に抱きつく。「あては、こんお人らと、も、ちいとばかし一緒に居りたいのう。」


 ジャンニは仕方がないなぁという表情をして「わかりました。街での用事が済んだらみなさんのお世話係として働かせてもらいましょう。」そう言うと、皆を促して馬車に乗る。



 馬車が走り出す。なんか普通の馬車より速い気がするとスズタルが言うと、シルッカが身体強化魔法を馬に、強化魔法を荷馬車に付与しているのだと言う。道理でアラクノソーマにげしげし叩かれていても荷馬車が壊れないし、あんなもの引きずりながらでも馬が走れたはずである。


 手綱をシルッカに渡し、ジャンニが荷台に降りてくる。

「騎士様、失礼ですが、そのー、せめてお顔を拝見することはできますでしょうか?」


 確かにもうヘルメットを被っている必要はないし、こうやって3人並んで腰掛けてしまうと、誰が誰やらわからないし、顔見せても減るもんじゃないし。などと気軽に考えてヘルメットを脱ぐことにした。


「じゃ、ガラクターもドングーリもヘルメット取るにゃ。」


 ぱしゅんという小さな音とともにヘルメットが消え、ピッタリだった戦闘服がゆったりした形になる。その事にもジャンには驚いたのだろうが、スズタル達の顔を見た途端、目を見開き驚愕の眼差しになったかと思うと、その場に跪いて首を垂れてしまった。

 むしろその行動にスズタル達は驚き、何事が起こったのかとおろおろし始める。


「み、御使いさまとは梅雨知らず、数々のご無礼ご容赦ください。」跪いて俯いたままのジャンニがそんなことを言い出す。


「御使いとか何の事か分からないにゃ。そんな風にされたら話しにくいにゃ。普通に座ってくれると助かるにゃ。」と言っても、お顔を直接見るなんてめっそうもない、などと恐縮されてしまう。

 スズタルが再三促すとやっとジャンニは立ち上がり、。


「吾輩、そう言うものになった覚えはないのだが・・・。」と首を傾げるスズタル。


 それを見ながら、そのお姿はどう見ても神様の使徒様にしか見えないんだけどな、とジャンニは思うのだった。


「それにしてもあの剣さばきはすごいですね。光って見えました。」とジャンニ。

 いや、光ってたんだけどね、と思いつつ、にゃはは、と笑ってごまかすスズタルである。


「あの剣捌きといい、体捌きといい、そこらの騎士とは格が違うのう。」とシルッカが言う。「あてが魔法陣消してたのも分かってたようじゃし。」


「恥ずかしながら私には、ただ魔法陣が出たと思ったらすぐ消えたようにしか見えないです。」とジャンニが言う。

 あれ、普通は見えないのか、などとスズタルは思っていたのだが、ジャンニがさっきの「空の彼方」と今の話をつなぎ合わせて考えてしまうとは、全く想像もしていなかった。

「ああ、スズタル様は神の国の騎士様なのですね。」とポンと膝を打つ。


 スズタルは頭をかきながら「いやいや、そんな大層な者では無いのにゃ。ま、神様みたいな見てくれの奴は我が部隊におらんではないが」と答えた。

 ジャンニがやっぱりという顔をしたのをスズタルは見逃した。


 ———-

「イタルレリアまではどれぐらい掛かるのかにゃ?。」


「夜には着くでしょうけど、日が落ちると門は閉められてしまうので、今夜は少しばかり手前の広場で野営します。」とスズタルの問いにジャンニが答える。


「そう言う人は多いのかにゃ。」


「そうですね。それなりに居ますね。イタルレリアは交易の拠点ですからね。それに今は大聖堂に巡礼に来られる方々も多いですから、野営地にも結構な人が集まってると思います。」


「うーん。そうかぁ。騒ぎになると嫌だにゃ。」


「認識阻害スーツ着ときゃいいんじゃね。」とガラクター。


不可視ステルスモードでいいと思うにゃ。」とドングーリ。


「じゃあ、野営地に近づいたら不可視ステルスモードで。」ところでさぁとスズタルは続けた。「ウルツーを出してやりたいんだけど・・・。」

 全部言い終わらないうちに、2人からダメ出しを喰らった。

「分隊長、ダメに決まってるじゃないすか。大騒ぎになるですにゃ。」「阿鼻叫喚にゃ。分隊長、常識を疑うにゃ」


 いやいやごもっともでした。

 しかしそこはスズタルである。何か騒ぎが起きないはずがないのであった。


連続投稿は此処までです。次のお話もがんばって書いて行きたいと思いますが、

あっち(日本国)もあるのでのんびりお待ちいただけますと助かります。

よろしくお願いいたします

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