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セシャトのWeb小説文庫2019  作者: 古書店ふしぎのくに
第十一章『不協和音の三重奏 〜今もまだ〝君〟への想いが消えなくて〜 箸・帆ノ風ヒロ』
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誰にでもできる物語の楽しみ方

今現在、インフルエンザにて倒れている古書店『ふしぎのくに』関係者は6人です^^

そこで議論されている問題がいくつかあります。感染源が私か、サ・タさんのどちらか? 私は思うのです、そんな誰の為にもならない犯人捜しをするのは止めませんか? とですねぇ! 現在ライターさんの半数以上が不稼働となり、バストさんにオーバーヒートして頂いております!

「さてと、ゴディバのチョコレートとかでいいんすかね?」



 欄は新宿でゴディバのボンボンチョコレートの詰め合わせを買おうとしている中、一人の少女と出会った。



「おや、貴女は総帥の妹の……アリアさんっすね?」



 大きなリボンをつけた少女は声をかけられて振り返る。そしてその人物を見るとスカートの裾を持ってお辞儀した。



「あら、貴女は確か欄さんでしたわね? その節はご迷惑をおかけしました」

「いえいえ、重工棚田のプリンセス相手っすから、自分も緊張したっすよ。ところでお出かけっすか?」



 アリアは頷くとほほ笑む。



「古書店『ふしぎのくに』にお呼ばれしているので、何でも11月は特別な作品紹介だとかで……読ませて頂いたのだけれど、実に楽しませて頂いたわ」

「成程っすね。それでアリアさんもチョコレートをお土産に……」

「という事は、貴女も?」



 猫みたいな口をすると欄は指を指す、座って話さないかというジェスチャー、ゴディバドリンクを適当に二つ購入すると店内のフードコートに座る。



「究極の選択をアリアさんはした事があるっすか?」



 小学生の少女に聞くには非常にイカれた質問である。されど、このアリアはただの小学生ではない。チェスで欄を負かせてみせ、非常に深い知識と作品へのリスペクトができる読み手。古書店『ふしぎのくに』へ行く前に欄はこの少女と語ってみたくなった。



「失意の駆に対して、私は究極の選択だなんて言いたくはないわね。はっきり言って究極の選択なんてありえないと私は思うの」



 欄はそれに関してはアリアとは違っていた。今目の前にある幸せと本来得るべき幸せを天秤にかけた場合。

 欄は今を取る。そういう意味ではアリアの考えは子供らしい。それに少しだけ欄がアリアを可愛いなと思いながら聞いてみた。



「重工棚田ではコンタクトレンズ型の通信デバイスなんて開発する気はないんすか?」



 その質問にアリアはイエスともノーとも答えない。単純に分からないというジェスチャーを取った。



「お兄様と開発担当者達のお仕事だから私には分からないわ」

「アリアさんはなんというか、いい意味で総帥とは似てねーっすね?」



 いい意味で似ていないという意味がアリアには分からなかったが言葉通り、クリスと違い邪悪さが一切ないと欄は言いたかった。



「それにしても手元にあるのにわざわざ同じチョコレートを買いにくなんて少しいじらしくないかしら?」



 欄はネコみたいな口をすると目をつぶる。



「自分なら手元にある方を喰うっすね……と言いますが、アリアさんの言わんとしている事も分かります。同じ物ではないんすよね」



 上品にゴディバドリンクを啜りながらアリアは欄に微笑む。駆の身に降りかかる絶望。それは物語でなくとも、誰にでも考える事ができる。答えがない質問。そんな彼は僥倖と何かを見る。



「この作品は山崎まさよし ”One More Time,One More Chance - ”(秒速5センチメートル、主题曲)という歌がよく似合うっすよ! これを聞きながら読むとまたいい感じで作品世界に没頭できるっす!」



 そう言ってアリアの耳にブルートゥースイヤホンをつける。



「いい歌ね……」

「新海誠作品がそこまで爆発的に人気が出る前の作品で主題歌にもなってたんすよ。それにしても、この作者はある種、絶望を書かせるのは上手いのかもしれねーっすね。この駆さんにとってニット帽の女性は猛毒以外の何物でもねーすよ」

「どういう事かしら?」

「駆さんには花蓮さんという女性がいるんすよ? 彼はその花蓮さんを愛してるっす。そんな物が運命なんてものに負けるのか……という事っすよ」



 その言葉に、アリアはイヤホンで流れる曲と歌の歌詞が聞こえる。



 ”奇跡がもしもおこるなら、今すぐ君に見せたい 新しい朝、これからの僕、言えなかった好きという言葉を”



 この出会いはあってはならない出会いだ。

 アリアもさすがに分かってしまった。誰も幸せにならない。この歌と同じように全てがすれ違ってしまう。



「命が繰り返すならば、何度も君のところへ……欄さん、貴女は古書店『ふしぎのくに』で働いた方がいいんじゃなくて?」



 アリアは泣いていた。感極まって……この作品を最高に楽しめる方法を欄が一つ提供してくれた。古書店『ふしぎのくに』ではそのセシャト達の話術や、時に不思議な力で同化させてくるが、欄は誰にでもできる方法でそれをやってのけた。

「分かったっすか? 芽吹いてはいけないんすよ。本来、それが運命だろうが、宿命だろうが、もしそうならこれは並行世界でも並列世界でもなくなるんすよ。デジタルな何かっす……命はそんなに簡単なもんじゃねーんす」



 本来、気持ちよく読めるハズの部分を二人して嫌悪しながら読む。作品のお供に購入したゴディバドリンクは鉛のよう、最初に口をつけた時とは違い味を感じない。



「アリアさん、分かるっすか?」

「えぇ、分かりますわよ」

「普通はここは、何とも言えない感情を表現されている場所なんすよ。でも、私達が女……いや雌と表現した方がいいかもしれないんっすね。だからこそ嫌悪するんす。この感情になるのは少ないかもしれねーっすけどね」



 花蓮は舞台装置だったのかと……そしてそれこそが、前回駆という人間がこんな事を言うわけがないと思っていた読者を現実に引き戻してくれるのかもしれない。



「これを考えてやってのけていたとすれば、これはかなり凄い事っすよ。さすがっすね。11月の大賞作品は……駆さん本人も自己嫌悪に陥ってるんすけど……恋する乙女、アリアさん的にはどうなんすか?」



 アリアは二人の顔が思い浮かぶ、セシャトに恋をしている少年。小倉秋文。そして、アリアに対して失礼な態度ばかり取るが、物語を語る際に関してはアリアを高次のところへ連れて行ってくれるような話をする神様と名乗る子供。



「ななななな、なにを言っているのかしら?」

「隠さなくてもいいっすよ。お姉さんに教えてくださいっす!」

「ばっ! 馬鹿じゃないかしら? 私はこんな事で心変わりをする駆を軽蔑します。でも、ひとつだけ、駆は最後の決断をする事ができるというのが面白と思います」

「ハルちゃんのメッセージっすね? 自分も考えたっすよ! 究極の選択のその先……果たして駆さんはその選択をしたのか……冒頭の始まりから考えると、したんじゃねーすか? と考えちゃうんすよね」



 アリアも同じ事を考えていた事に頷く。そして欄は続ける。ハルのメッセージを深読みした駆について……



「これはいくらなんでも卑屈すぎると思うんすよね。駆さんにできる事は三つしかねーんす。運命と共にあるか、運命に抗うか、究極の選択のその先を迎えるか……」



 欄は当然と言った風にそう話すとアリアが少しだけ困ったような顔をしていた。欄も少ししまったと思う。

 相手は十二歳の女の子。そんな相手に熱く語ってしまった事。



「欄さんは私の教育係にそっくりね」

「もしかして沢城さんっすか?」



 クールな突っ込みで、いつもアリアを楽しませる重工棚田、総帥クリスの秘書でもある沢城。何者か不明の経歴を持つパーフェクト超人。



「さすがにあの人と自分じゃ、ちょっと自分でも敵う気がしねーっすね。あれは本物っすからね」



 沢城の事を知る欄。それにアリアは興味を大きく持った。欄が世界的に指名手配を受けている大犯罪者であるという事をアリアは知らない。



「沢城さんって昔は何をしていた人なのかしら? そちらも気になるわ!」

「そうっすね。自分が花蓮さんなら、沢城さんは遥香さんっすかね?」



 それを聞いてアリアはピンと来た。



「もしかして看護師?」

「いやぁ、野戦病棟の医師だったんじゃねーっすかね? 数多くの命を救ってきた大変名誉な方っすね」



 まさか、あの料理上手で、色々な事を知っている沢城が医者にまでなっていたとは思いもしなかった。

 そしてその沢城が治療する患者を大量生産したのが、アリアの目の前にいる欄であるという事実は黙っておこうと欄はほほ笑む。



「さてさて、駆さんは見えないけど、確実に感じる刃をどう対処するんすかね? 実に盛り上がってきたところじゃねーすか?」

「そうね。どんな駆であれ、自分の事は自分であると認めるほかないと私は思うのだけれど? 難しく考えても答えなんてないのだから……」



 アリアの言葉に欄はこんな子供を作り出してしまった棚田クリスに少しばかりの怒りと嫌悪感を感じながらネコみたいな口で笑うと言った。



「さて、そろそろアリアさん。古書店『ふしぎのくに』に行きませんか? 皆さんお待ちだと思うすよ! どうせなんで一緒にお土産を買いましょうか? 自分が出しておくっすよ! アリアさんのお小遣いはしまっておくっす」



 そう言って欄は二箱、ゴディバのボンボンチョコレートの詰め合わせを購入した。そしてアリアに手を差し出す。



「欄さん、子供扱いしないでくださる?」

「子供扱いじゃねーっすよ! 自分は女の子と歩く時はいつも手を繋ぐんすよ! ですから対等に考えているという事で」



 そう欄が言うと欄の手をアリアは握った。



「本当に面白い人ね。どうしてお兄様の会社を辞めたのかしら?」

「まぁ、色々あるんすよ」



 手を繋ぎながらアリアの首元に見えるナンバーコードを見る。欄はそれを見て見ぬふりをしてからこういった。



「続き、話しながら行きましょうか?」

今回、本作にもっともあっている曲は何かというミーティングを行いました。

『不協和音の三重奏 〜今もまだ〝君〟への想いが消えなくて〜 箸・帆ノ風ヒロ』こちらを一度読んだ後に聞いていただくとマッチングが中々に気持ちのよい曲が山崎まさよしさんの『One More Time,One More Chance』です! 一度試してみてくださいねぇ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 究極の選択…… 話が一気に盛り上がってきた部分ですね。 ここいらの扱いはかなり迷いました。 とはいっても、駆が感じていることを 勢いのままに出してみただけなんですけどね。 >One M…
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