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セシャトのWeb小説文庫2019  作者: 古書店ふしぎのくに
第十章 『星空のオオカミとネコ 箸・夜明空』
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天才と裏稼業の求人倍率

さて、大雨がまた振りそうですねぇ。オリンピックのマラソンですが東京より北海道の方がいいかもしれませんね! ただ、その費用をどうするのか? というところは難しいかもしれませんが。

来年は皆さん、暑さに気を付けて競技に挑んで頂きたいですねぇ^^

「欄ちゃん、何の電話だったん?」

「あー、悪戯電話っすかねぇ? なんかまた殺すだの言われたんすけど」

「またなんな? ヘカの才能を妬む、闇なろう作家達なんな? 全面戦争の準備なん」



 ヘカが良いように解釈するので欄はヘカの頬っぺたをつついてから言う。



「う~ん、今回は自分宛の悪戯電話でしたねぇ、そんな事より続き読みましょうよ」



 冷蔵庫からモンスターエナジーを二本取り出すとそれを一本ヘカに差し出す欄。それを受け取ってポテチを食べながらモンスターエナジーで喉を潤すヘカが何となく欄に尋ねる。



「殺し屋同士って普段どんな感じなん?」

「自分は殺し屋じゃねーっすけどね。う~ん、だいたい普通の人と変わんねーっすよ。基本的に指示があったら仕事としての殺しを行うだけで、案外普通に暮らしてるっす。だから、殺し屋同士が出会っても、普通に挨拶をして普通に仕事をするんすよ。ちなみに殺し屋同士が争う事は基本ねーっすね。おっ、真理亜さん、自分と同じデリンジャー持ちじゃねーすか」



 そう言って欄は手首を返してその銃を取り出す。何度かヘカも見て来たその銃。護身用に欄が持ち歩いている銃火器の一つ。



「デリンジャーって弱そうなイメージなんな。殺し屋の道具っぽいん」

「確かにリンカーン殺した時に使われた時点ではヘッドショットをしないと確実には殺れない代物だったかもしれねーっすね。でも自分が使うダブルデリンジャーは45口径っすよ。真理亜さんのは多分25口径っすね。基本護身用に作られたんすけど、そういうのって大体暗器になっちゃう悲しい宿命があるんすよね。というか真理亜さんの使ってる銃は正確にはデリンジャーじゃねーっすね」

「何でなん?」



 弾を抜いたデリンジャーをヘカに渡す。それを見てヘカは「成程なんな」と呟いた。デリンジャーと呼ばれる銃の装填数は最大二発、それでも同時発射される。実質一発分しか装填されていない。真理亜は連射している事から、手に収まる小型の銃。



「基本的に手の中に納まる銃の事、総称してデリンジャーと言う人もいるんで、例えばこれとかがマッチしてるっすかね」



 手を伸ばすと服に仕込んだレールから飛び出す小さな銃。



「コルト25っす。これなら六発入るので、この描写から読み取れる銃かもしれねーっすね。それにしてもこの世界、こんな九龍城みたいな街になってしまった日本。どうなってるんすかね。大陸の不法入国者にいずれ負ける現実世界みたいっすね?」



 治安が悪すぎる。下手すればこの世界観以上に狂った世界は現実世界でも存在しえない。警察機構とマフィアの癒着がある地域ですらもう少しマシである。以外にもマフィアは一定の治安と秩序を重んじる。それがないとこの世界のようになってしまう事を欄は安いブランデーを舐めながら語った。



「欄ちゃんはあんまんと肉まんどっちが好きなん?」

「うー、それは究極の選択っすねぇ、あんまんと酢昆布の組み合わせ、肉まんと和辛子の組み合わせ、どっちも無敵っすからねぇ。それにしても太陽君。中学生っぽくてかわいいっすね。ライオンより犬の方が強ぇんすよ」



 そう言って欄が鋭い視線をヘカに送るが、いつもの事。ヘカは気にもせずに冷食の肉まんを電子レンジの中に放り込む。



「そうなん?」

「ライオンの餌をハイエナが奪うなんて話はよく聞くっすよね? それ以外にもお腹を空かせたドーベルマンをライオンの檻に放り込んだら襲い掛かるなんていうのも有名っすよ。実際、狩猟能力はネコ科の方があるんすけど、威圧感は犬科の方が強いんすよね」



 局所的な環境の話であり、全てに通じるわけではない。それだけ、欄は犬というものを強く推す。何故なら、自分もまた色んな人間の下につく犬であり子分気質が強いから。



「ライオンに嫉妬するなんて馬鹿らしいんな。というか、和子達の殺し屋業。わけがわからなくなってきたんな?」



 爆弾撤去。それも警察からの依頼だと言う。警察機構が裏でグレーな部分と繋がっているという事は事実、日本警察でも繋がっている。ここでは詳しく書かないが、蛇の道は蛇。突然操作が打ち切られていたような犯人が捕まるとき、その情報は何処からきているのか……とだけ記載しておく。



「物語としては、今まで関わって来たオールスターズが参加するのは胸熱なんな! ヘカはこういう展開大好物なん!」



 確かに、クモはどうなったんだろうとか思い出した頃での再登場。緩急の使い分けが見事ではないだろうか? それでも欄は笑った。



「でも殺し屋に頼む事じゃねーっすね。なんでも屋とかにやらさないと、可愛そうっすよ。裏の仕事って意外と求人倍率高いっすからね」



 そっちの話かとヘカはこの欄の視点の細かさに呆れる。ヘカも欄も意外と東雲が流されやすいタイプである事におかしくなる。



「まぁ、ゲームで喧嘩売られたら間違いなく自分達もノっちゃうっすね」

「そうなんな! 相手を完膚なきままにボコボコにしてやるん!」



 爆弾探しをしながら、ひと時の休息。ゲームセンターという物はアメリカで生まれ、その数年後に日本が今の形を完成させた。いわば日本産娯楽施設の祖である。日本人であれば楽しくないわけがない。



「まぁ、最近はゲーセンもだいぶ減っちゃいましたけどね」

「大手の店ばっかりで確かにつまらんのな?」

「ゲーセンのプレゼントにある風船に爆弾仕込んでたんすね。あー、これは危ないっすね。本当に危ないっす。愉快犯の犯行か、実に面白いっすよ」



 欄は語る。これほどまでの無差別テロは中々ないのではないかと、この風船を持って電車に、バスに、街中で、車中運転中。

 それらが一斉爆破したら、一体何人が犠牲になるだろう。その爆弾の威力が対してなかったとしてもだ。ヘカは虚ろな瞳で欄の言う言葉を理解する。



「時として小説や作品物に出てくる犯行は、誰か真似しそうなくらい危ない物はあるんな? 某刑事小説の某昆虫を使った無差別テロはいつか絶対誰かがやると思ってるん。そういう描写が出来るというのはこの作品は優れてるん! まぁヘカ程じゃないけどなん」



 爆発によるガラスの破砕、そして降り注ぐそれらに和子は傷つく。高さが分からないが、ショッピングモールというだけにそれなりの高さから降り注がれたそれを受けて、命に別状はなかった和子は奇跡に等しいか、度重なる訓練が彼女の背筋の強度を高めたのかはさだかではないが、殺し屋は道具のように扱われる。



「この世界、まぁまぁショッキングっすね。ヘカ先生も任侠物映画で見た事あるっすよね? 殺し屋でヤクザが、先生お願いします! みたいなシーン。殺し屋は裏の仕事では結構花形なんすけど、この世界はやっぱり狂ってるっすね。そもそもの明星市の治安云々だけでなく、世界の倫理観が何処かおかしいっす」



 その倫理観を欄は知っていた。とある国のとある局所的な環境においてこの世界観の空気に酷似した場所がある。



「時計仕掛けのウサギなんな。この爆弾魔、なかなかやるん。どうして、年端もいかない子供が殺し屋をしているのか、出来るのか、それも普通の家の子なんな。そこが今時点では分からないから、世界の倫理がおかしいかどうかを結論付けるのは早急なんよ! 今はこの犯人と殺し屋連合がどうやって戦うのか、どうやって解決するのかを考える方が胸熱なん」



 ヘカはようやく蒸かし終えた肉まんを持ってきてその一つを欄に渡した。それを受け取り欄は齧る。



「美味いっすね」

「うん、美味いん! 欄ちゃんちょっとおかしいんよ? 何かあったん?」



 ヘカにそう質問されて欄は和辛子を大量に塗りたくると一気に肉まんを平らげる。あまりの辛さに涙がこみあげてくる中。



「ちょっと昔の知り合いを思い出しただけっすよ」



 だなんて返す。



「目立ちたいから、馬鹿をする。それが芸術方面やスポーツとかだったら、まだいいんすけどね。最近は動画再生数目的で犯罪ギリギリの事をしでかす連中もいるっすから、いつかそんな連中が適当に火薬作って適当に爆弾作って適当にそれを不特定多数の場所において実況しちゃう未来がきてもなんらおかしくねーっすね」



 ここ数日の欄はありえそうな未来の話をよくする。ヘカは面倒だなと思いながら欄を見つめる。メンヘラを拗らせた彼女を見つめるようにヘカはあえて何も言わない。代わりにこの爆弾魔について語った。



「この爆弾魔、天才じゃなくて凡才なんな。本当の天才はもっと上手く立ち回るん。テストで毎回良い点とっても周囲の人間に嫌われないように、教師の間違いに対しても天才は嫌われないように、上手い事持って行くん。その頭脳がない時点で、こいつは凡才なんな」



 ヘカの言う事は一理ある。天才という存在は何でもできる人間じゃない。自分の手の届く範囲に関して無駄なく無理なく生きて行く事ができる者を言う。

 そのどれかが欠けてしまった連中が所謂、落ちこぼれかサイコパスか、はたまたヘカの言う凡才の持ち主になるんだろう。



「いい返しっすね! ヘカ先生にしては中々っすよ! じゃあヘカ先生の思う天才ってどんな人の事なんすか?」



 ヘカは冷蔵庫からモンスターエナジー、レッドブル、ライジンをジョッキに入れるとそれを一気に飲み干す。そしてガンとジョッキを叩きつけてからヘカは自分に指を指した。



「この日本、世界でヘカ程天才Web小説作家はいないん! それと」



 ヘカは欄に向かって指を指す。そういう事を言ってしまうヘカに欄は心底、自分はこのイカれた人間に陶酔しているんだなという事がよく分かった。

 外の大きくてやや朱がかった月が欄の決心を後押しさせる。



「そうっすか」



 そう言って欄は外出する準備をする。それにヘカは尋ねた。



「何処かに行くん?」

「ちょっと、知り合いを一人。消してくるっす。多分、野放しにしてるとヘカ先生や他の皆さんに迷惑がかかるっすから」



 普段着る事のない、何かの勲章つきのトレンチコートに身を包み、欄はヘカのマンションを出る。その時ヘカが声をかけた。



「欄ちゃん、帰りにプリン買ってくるん」



 何とも締まらない会話。欄はヘカの前では吸わない葉巻に火をつけて指定の場所へと向かった。

『星空のオオカミとネコ 箸・夜明空』。次回が最終回となります。本当に一か月が早かったですねぇ。さてさて、皆さんは本作を読まれていますか? 今回拳銃についての考察を一つ入れましたが、先に当方で説明をしておきましたよぅ! 小さな銃をデリンジャーと呼ぶ事があります。ですのでそのツッコミはしないようにしましょうね^^

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