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セシャトのWeb小説文庫2019  作者: 古書店ふしぎのくに
第十章 『星空のオオカミとネコ 箸・夜明空』
89/111

とあるコンビニ店員のナンパと考察

もうじきハロウィーンですね! お菓子を用意して仮装準備をして……大忙しですよぅ! 今年はダンタリアンさんのご自宅でパーティーをするという事になっています。今から楽しみです^^

「|感谢您经常惠顾《ご来店いつもありがとうございます》!」



 ムゥは突然の事にぎょっとした。いつもは会計しか関わらないハズの店員が話しかけてきた。



你会说汉语吗(中国語話せたのか)?」



 そして、ムゥの焦りは呆れに変わる。



「あぁ、そのフレーズしか分からないから、アイ、キャント、スピークチャイニーズ」

「なら、最初から日本語で話してこい」



 光岡は身長に似合わない、ムゥの胸部を見ながらデレっとした顔をする。それにもまたムゥは呆れる。



「日本人は本当に色を好むな。なんだ死にたいのか?」

「違うよ。日本語喋れたんですね。俺は光岡です。君たちと一緒でこの作品を読んでいるから!」



 光岡のスマホの画面にはムゥと神様が一緒に読み語る作品が表示されていた。それを見てムゥは聞く。



「お前は学生か?」

「一応、あんまり学校には行ってないけど、大学生だよ」

「日本の学校にはこんなに殺し屋がいるのか? 治安が悪いことだ」

「いや、これは物語で、こんな危ない学生がいる学校なんてないんじゃないかな? でも学校のセキュリティは甘いから治安はよくはないね」



 意外と面白い事を言う光岡に、ムゥは学習したと呟く。そして次に青年向けの雑誌コーナーに指を指して聞く。



「日本は世界屈指の性風俗狂国、何故これらは無くならない?」



 そう言ってムゥは売春婦の表情を作り光岡を見上げる。それに光岡はドキドキしながら少し考えて語る。



「性は人が生きると書くから、本能をくすぐるのかもしれないね。ちなみに、日本では海外よりも遊女の気位は高かったと言われてるし、今は分からないけどね。アイドルが流行る国だし、昔からこの国のサガは変わらないのかもしれない。この作品世界は大げさかもしれないけど、日本でも人身売買は当然の如く行われている。それが合法にも非合法にもね」



 ムゥはからかうつもり程度でこの光岡に話をしていたが、意外にもこの国の学生と話すのは面白い。神様が来る迄の興として楽しむ事にした。



「この花魁という役職の女。おかしな言葉を話すな?」

「廓言葉だね」

「くるわ言葉?」

「うん、元々遊女は田舎から売られたり、まともな食事を食べたくて入って来た女の子が多いんだよ。だから田舎臭さを感じさせない為に作った遊郭という異世界でのみの言葉。それが廓言葉」



 ほぉとムゥが納得しているので光岡は少し調子に乗り始めた。



「花魁を殺すのは刀ではできぬ。彼女等は遊郭という治外法権の下では将軍、所謂王様だね。それすら凌駕する誇りと権威を持ってるんだ。なんせ、貴族や侍でも順番を先回りできないんだからね。ある意味、遊郭は人を色んな意味で喰う場所なんだよ。そんな遊郭の花魁殺しを依頼されてしまった。これはおかしい。俺はそう思います」



 おかしい。

 殺し屋に殺しの依頼をするという事がどうおかしいのか? それは遊郭の持ち主オミツ氏が語るように彼女は店のマネーソースである事は間違いない。

 だが、光岡が言いたいのはそういう事ではない。



「黒い稼業だから、自前で処分した方が早いという事か?」



 ムゥの質問がほぼほぼ光岡の言いたい事。異常な程に訳ありの少女達を働かせていて、死者もよく出るならいくらでもやりようがあるだろうと言う事。

 それに光岡は頷く。



「殺し屋がどれだけ口が堅かろうとも所詮は人の子、情報漏洩が怖いなら、毒殺するなり、撲殺するなり、やりようはいくらでもある。そうは思いませんか? えっとお客……」

「ムゥエレンだ」

「ムゥエレンちゃん」



 少しばかり深いな表情をムゥは見せてから答える。



「このオミツという人間も実に人間らしいクズだな」

「う~ん、意外と人ってさ自分中心に考えるものだし、大を見ればこの店が無くなれば信じられない多くの人が露頭に迷うからしかたがないんじゃない? 但し、オミツさんはこういうお店を経営してるわりに、度胸はなさすぎるとは思うけど」



 と光岡の話を無視して、ムゥがやや顔を紅潮させながら読んでいる文章を光岡もおいかける。所謂女の子同士でゆりっゆりな事をしているシーン。



「こういうの気になる?」



 いつしか敬語を止めた光岡にムゥは苦笑する。



「文章に起こす性交は嫌いじゃない。リアルな性交は、痛く不愉快で、薄気味が悪い。それが男相手でも女相手でもな。おいお前」

「は、はい!」



 あっけにとられる。自分よりも年下であろう少女から感じる深淵の入り口、それは興味本位で近づいてはいけないような気がした。生まれはじめて可愛い女の子を見て、彼女に手を出すという事を躊躇する感覚。

 その危険性が光岡を燃え上がらせた。どうにかしてムゥとさらにお近づきになりたい。できればムゥを彼女にして……と。

 それを可能にするのは、恐らくこれから彼女が話す内容次第。ドキドキと自分に心音が伝わる。何を言う?

 愛とは何かか? それに関してはいくつか考えをまとめていた。そう思った光岡。



「愛とは」



 キタ、このムゥを感心させられる程のアンサーを光岡は用意していた。が、世の中はそこまでうまくいかない。



「愛とは人が受ける感情全てだと神様は言った。(おれ)もそう思う。お前はもし人を殺した時何を想う? 愛か?」



 想像以上の難問を問うてきた。自ら自死という道を選んだ花魁。彼女もまたあらゆる愛に殉じたのだろう。



「それは……」



 人を殺した事もないし、心から殺そうと思った事もない。普段軽々しく使うこの言葉。もし自分が人を殺した時? 怒りや憎悪? 一時の達成感か、それとも恐怖か、そんな事のアンサーがあるわけがない。

 何故なら、光岡は人を殺した事がないのだから……



「自殺も一つの人殺しなら、日雅奈という女は、愛する者を想って自分を殺したんだろうな。羨ましい」



 何が羨ましいのかも光岡には理解できない。だが、考えると自分の意志に殉じる。今何か言わなければこのムゥは離れて行く。



「この花魁の子と違ってムゥエレンちゃんは強そうだから、そんな風にはならなさそうだね! ……なんて?」



 言ってみたが、ムゥエレンは目を合わさない。同じ東洋人のはずなのに、野生動物のようで、そしてなんとも気高く感じる彼女。その少女の瞳には自分は映ってはいない。



「もし、遊郭とやらに囚われている人間が奴隷なら、それは(おれ)も変わらない。くそったれな男に放し飼いをされた猟犬だ。なら日雅奈の生き方は尊重する。どっちつかずな和子よりずっといい。白と黒の間に立ち続ける事はこの世界では許されない」



 カップ麺トンとカウンターに置くと、ムゥエレンはくしゃくしゃの千円札を一枚差し出した。そしていつもの会計。

 ムゥエレンはフードコートへと戻っていくので、光岡はカウンターに休憩中というプレートを置いて、ムゥエレンの向かうフードコートにコンビニ弁当を二つ、レッドブルを二つ買って向かった。



「ムゥエレンちゃん、俺も休憩だから一緒に食べない?」



 温めた弁当を見つめてから渡された弁当のご飯を箸でつまむと「喰え」とムゥは言う。それに食べさせてくれているのかと光岡は喜んでそれを食べ、なんともない事を確認するとムゥは弁当を汚くガツガツと食べる。



「誕生日か……」



 作中で東雲の誕生日プレゼントを考えている事にムゥは不思議に思った。何故贈り物をするのか? 故人の物を一つもらい永遠とするその方がしっくりくる。



「おいお前、誕生日に何か貰うと嬉しいか?」

「えっ? 嬉しいよ! 俺の誕生日は10月31日で、ムゥエレンちゃんの誕生日は?」

「知らない」



 照れているんだろうと光岡は思ったのだが、ムゥエレンは誕生日はおろか、自分の正式な年齢も知らない。変な空気になったので光岡は話を変えた。年齢的には東雲と和子の関係性に自分達は何処か似ている。



「東雲とさ和子ちゃんの関係ってよくない? なんていうか年齢差もいい感じだし」



 ピクリと反応したムゥエレン。確率は低いと思ってたが乗って来た。



(おれ)もそう思う。贈り物か、それもいいかもしれない。誕生日が命日、これはつらいのか? (おれ)には分からない。同じじゃないのか?」



 光岡はこの特殊な家庭で育ったであろうムゥエレンへの説明が難しいと思いながらゆっくりと諭す。



「そうだねムゥエレンちゃん。仲のよかった両親、いや両親だけじゃない。仲の良い人が自分の誕生日に死んじゃったらさ、毎年普通の人にはなんでもない日なのに自分にとっては忘れる事ができない特別な日になっちゃうんだよね。忘れようとしても、誰かに祝われる度にその事を想いだしちゃう。これって悲しくない?」



 普通の精神構造を持っていれば、きっとその片鱗くらいは分かったかもしれないが、ムゥエレンには分からなかった。



「そういうものか、学習した。東雲は幸せ者だな。そして死の運命からとことん嫌われた者だ。なのに逆さ名を持ってるから死に関わる生業をしているのか?」



 本作でも扱われる逆さ名は不思議な事に世界各国でその文化を持っていたりする。名前の意味する事の真逆の意味で厄払い等をする日本ではアイヌ等に見られる文化になる。恐らくは大陸から伝承されたのではないかと推測されるが今となっては分からない。



「この作品は好きだ。(おれ)が欲しいものが一杯ある。だけど、東雲は必ずいい死に方をしない」

「えっ? ハッピーエンドで終わるかもしれないでしょ」



 いまだ完結を見せていない本作、いくらでも終わりの形はあるし、物語である以上絶対は存在しない。ムゥエレンは答える。



(おれ)もオオカミだからな」



 同時に店に入店する金髪の子供。もとい神様。



「おぉ、今日は遅れてしもうたわ! 老人会でおでんと熱燗をつついておっての……おっ?」



 神様をムゥエレンはそのふくよかな胸におしつけてから離れる。そしてコンビニを出てスマホで電話をかけた。



欄姐姐(欄姉さん)我现在就想杀了你!(今から殺しにいきます)

週間紹介でも本作『星空のオオカミとネコ 箸・夜明空』のお話が展開されています。実は、紹介小説に関してある一定の部分以降のネタバレができないので、紹介小説を読んで興味を持たれた方はぜひぜひ、完全版として『星空のオオカミとネコ 箸・夜明空』を読み進めてくださいね^^ はっひゃああな展開が待っていますよぅ!

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