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セシャトのWeb小説文庫2019  作者: 古書店ふしぎのくに
第十章 『星空のオオカミとネコ 箸・夜明空』
87/111

殺し屋と人殺しの違い

前回はお休みさせていただき、すみませんでした^^

季節の変わり目に私は大変弱いですよぅ! それとまた大雨が降る可能性が高いそうですので、皆様お気を付けて週末はお過ごしくださいね!

「中学で高校のレベルを超えるとかありえるのか?(おれ)は学校に行ったことがないから知らないが」

「私学はある程度自由にできるからの、高校で学ぶ授業内容を取り入れる事もあるぞ。それにしても貴様、学校には行った事がないにしてはよぅ文字を知っておるな?」



 神様の指摘は適格だった。何故日本人ではないムゥが日本語を読めるのか? それにムゥはいつもの安いラーメンをすすりながら答える。



「色んな国の言葉は覚えさせられた。そうしないといけない場所にいた。だから、このあざみという女の怒りの矛先については少し……不快だ」



 友達という物への崇高な期待をあざみからは感じる。そもそも友達なんていうものが出来ない環境の人間からすればワガママにしか感じない。



「まぁ、中坊だからの。一番黒歴史を自分に刻む年齢でもある」

「へ・りーし?」

「うむ、自分の中にもう一人の自分がいると思い込んだり、前世で自分は世界を救った英雄だと思ったりする、完治が極めて難しい病だの」



 少し考えてムゥは「学習した」と返す。零時を指す時計を見ながらいつものコンビニ、いつのもフードコート、いつもの店員がカウンターでこちらを気にしながらスマホを見つめる。ここは時間が止まったかのように見える。



「このあざみの母親は異常なのか?」

「うむ、やや自己主張が激しすぎだとは思うがの、もしかすれば本当に我が子の事を考えた究極の結論かもしれんの。親の心、子知らずというように子の心も親は知らん」



 神様はピザ味のうまい棒を齧りながら作品を優しそうな目で見つめる。そんな作品に対して嫉妬したかのようにムゥは言う。



「殺し屋に友達なんていない。こういう奴は近々死ぬ」



 神様はふむと頷くと袋の中のカスを口の中に放り込んでからよっちゃんイカを開ける。



「酎ハイでも買えればいいのだがの……まぁあれだの。殺し屋に友達がいてもなんらおかしくはないだろう」

「何故?」



 神様はムゥにもよっちゃんイカをシェアしながら答えた。



「殺し屋も人の子だ。生業も含めて一人では生きていけない。殺す相手がいて、依頼する相手がいて、知り合いや家族、友人や恋人がいるんじゃないかの? むしろ孤独に生きておる奴なんて引きこもりですらおらんよ。傷の舐めあいでもいい。友達はいいぞっ」



 ムゥは空いた口が塞がらず。ふとイラだって神様のよっちゃんイカを鷲掴みにするとそれを口の中に放り込んだ。



「あーー! 貴様なんという事をぉ!」

「東雲、酷い事を言う」



 日常でも友達のできないお前にというやつだろう。その発言に神様は驚いているとムゥはぎこちなく笑う。



「少しは作品の楽しみ方を覚えたかの」

「神様、(おれ)はクソッタレな場所で育った。同じくらいの年齢に分けられたごみ溜めみたいな場所だ。喰う物も服も、命すらも奪わないと生きていけない。そんな中で、(おれ)にははじめて先生と呼べる人がいた。その人は姉のようで、(おれ)にいつか学校に行けと言った」



 スマートフォンのページを見ながらムゥは語る。



「あざみに和子はずるいな。友達、イジメ、花壇に夜遊び、そしてクリスマス。(おれ)も学校というところに行ってみたくなった」



 学校、神様の子等も学校という組織には属した事がない。それ故、学校には信仰的な期待を彼らは持っている。実際にそこに行く人間が幸せかはまた別のお話だが、どれだけ望んでも簡単な希望すら叶わないこの世界。それは和子やあざみが友人を欲するように綺麗に収まるものでもないのかもしれない。



「そうだのっ、いくといい。昴のような少年に出会い。恋愛をするというのも悪くはなかろう」

「SB」※中国で馬鹿のスラング

「は? なんだそれは」

「知らない……だが、この昴はこの作品内で最も殺し屋っぽい。腕のいい奴は人社会に溶け込むサイコパスだ」



 後輩を誘いファーストフード店でグリム童話のトリビアを話し出す昴先輩。赤ずきんちゃんは所謂、大人の男、もといオオカミに対してひ弱で従順な女の子へ、知らない人について行ってはいけませんよ的なお話である。作られた時代背景を考えれば人買いがいただろうから、食べられるというのはあらゆる意味を持ったのかもしれない。



「ここでのスノードロップは面白いの」

「スノードロップ?」

「うむ、雪が積もっていても花を咲かせる根性のある花だの。こいつは夢や希望なんていう花ことばを持っておる。間違った解釈で死を望むなんて言葉も最近でてきたが、これは出鱈目での、ネット掲示板から派生した話だ。よぅ勘違いされる」



 相手の死を望むなどとたまに誤植される事があるが、死を送る。亡くなった人への思いやりや慈しみを意味する花言葉だったりする。四つ葉のクローバーにも似たような都市伝説があるが、あれも残念ながら後付けである。そもそも花言葉なる物が作り物である時点でなんとも言えないお話ではあるが……


「のぉ、ムゥ。貴様。通りすがりにブスと言われたらどうする?」

「殺す」

「うむ、それでは学校には永久にいけんぞ。昔から好きな女子に男子はブスと言うのだっ。可愛いとか好きの照れ隠しがブスというものなんだのっ!まぁ私もリアル学校は知らんが」



 一時は収まったかと思われた和子へのイジメが再び開始される。恐らくは昴絡みなんだろうが、これに関しても神様は聞く。



「のぉ、ムゥ。貴様教科書に悪戯されたらどうする?」

「殺す」

「うむ、基本的に教科書に載っている偉人の顔は落書きするためにあるんだぞ」

「そうか、二つとも学習した。(おれ)は図書館は好きだ。タダで生涯かけても読み切れない程の本がある」



 実に嬉しそうにそう語るムゥに全書全読の神様は嬉しくなる。当然神様は図書館になどいけばその力が何倍にも跳ね上がる。



「そうかっ! ならたまには千代田図書館にでも行ってみるかの?」



 それはムゥに対して思いもよらぬカウンターパンチだった。考えてもみなかった。ここ以外で神様と会う。



「……それはデートか?」

「まぁ、デートかと言われたらデートかもしれんのぉ! 私は男でも女でもないからどうなのかははっきりと分からんがな。多分だが、和子の借りた本に記載されていた花言葉は誤植ものだろうの」



 神様の話に対してムゥはスマホに指を指して聞き返す。



「おい神様、ここでも書かれてるんぞ?」

「まぁ、ここは小説の流れを楽しむところだの。基本的に花言葉ってものは悪いイメージの言葉は存在せんのだ」

「そうなのか?」

「花屋に対する営業妨害だろうが」



 それを聞いてムゥは頷く。これは占い等に通じる事で基本的に悪い事を言ってはいけない暗黙のルールが存在する。ちなみに、生業で占いをしている者で不幸になるような話をした場合状況によっては脅迫罪が適用される。



「この昴という少年、言っている事は一理あるの? 人を好きになるのに理由はいらないという奴だの。私もムゥとこの作品の話をするのは心躍るぞっ!」



 ムゥは直接的な事を言われて顔を赤くする。それと同時にムゥは神様に応えてみせた。この昴という男について……



「こいつは殺し屋じゃない。人殺しの雰囲気を感じさせる。人殺しは、人に好かれる。というより、人に好かれる方法を良くってよく嘘をつく」

「ははっ、この昴。吹きよるわっ! カラスがずる賢くて、人を騙す、残酷な鳥と言いよった! カラスなんぞただの馬鹿だのっ!」



 神様は自分が生み出した黒髪おかっぱの少女の事を思い出してそう一人で大笑いする。それでもコンビニ店員に注意される事はない。



「カラスはずる賢くないし、残酷でもない。それにバカじゃないぞ神様」



 少しばかりムゥが不機嫌になる。イメージとしてのカラスはゴミを漁り害鳥そのものであるが、3歳児と同等の知能を持つ霊長類以外の生物として恐らく世界一賢い動物に挙げられる。躾の意味をある程度理解するところからも、意外と従順だったりもする。そんなカラスを知っているムゥからすれば本作の昴と、カラスを侮辱する神様に怒りを覚えた。



「まぁ、落ち着けムゥ」

「五月蠅い! カラスはこんなんじゃない。昴は殺し屋じゃない、こいつはシリアルキラーだ!」



 基本的殺し屋とは東雲が語るように依頼と生業の一本線で生きている者になる。それが何処かに雇われている本業か、フリーなのか違いはあれど、生業として行っている者が殺し屋。事実、実在にあった裁判でも殺し屋は情状酌量を蹴って、殺すつもりでいかない殺し屋はいないと言ってのけた事があった。

 ある意味、仕事に対するプライドや呪縛のようなものを持っている。動物を殺害していたクモことあざみですらそうだったがこの昴からはそれがない。



「神様、(おれ)は殺し屋だ」

「うむ、だろうの。貴様、血の臭いがするぞ」



 それを言われてムゥは自分の服の臭いをかぐ、されどそんな匂いはしない。神様を見つめていると神様は言う。



「私には今まで貴様が殺めて来た者の臭いが分かるのだ。これでも一応神だからの、まぁ別にそれは良い。貴様の業だし私には直接関係ない。だが、あまり人を殺すな」



 神様にそう諭されてもムゥは首を横にふる。自分がこの日本にまで来て金で買われ、殺しの道具として今ここにいる。

 飼い主はある程度の自由すら与えてくれている。この仕事を終えたら自分は晴れて自由の身になる。



「次で終わりだ。妹妹を殺して(おれ)は自由になる。その時は、穢れた、穢れきった(おれ)と図書館デートしてくれるか?」



 神様はドデカバーの封を開けるとそれにかぶりつく。サクサクサクサクとそれを食べてから神様は言った。



「出来れば殺すな。そしてお前も死ぬな。図書館デートに血の臭いは似合わんぞ。いいな? 大抵の事は私がなんとかしてやる」



 神様がそう笑うとムゥエレンは神様に抱き着いた。



「我很喜歡你!」



 コンビニ店員光岡は中国語で語る彼らの話は分からないが、金髪の子供にアジアンビューティーな少女がベタぼれしているという事だけは分かった。

『星空のオオカミとネコ 箸 夜明空』本作の殺し屋達の日常とその生業の中でひときわ異質な昴さん。でもよく考えれば殺し屋なんて生業の中、異常でなければやっていけないのも事実かもしれませんね! 読書の秋にはアクションを楽しみませんか? 

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