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セシャトのWeb小説文庫2019  作者: 古書店ふしぎのくに
第十章 『星空のオオカミとネコ 箸・夜明空』
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待ち人来ず 殺し屋の定義

セシャトさんは季節の変わり目で風邪を引き只今療養中となります。

「今日来ますから! 起きててくださいよ」

「分かったって、別に深夜に子供が来ても珍しくもないけど、その可愛い娘達にはちょっと興味ありだな」



 コンビニバイトの光岡は毎木曜日深夜にやってくる金髪の子供と少し身なりが貧しそうな少女について先輩に語る。

いつも彼女等がやってくる深夜の二時ころになっても二人はやってこない。



「俺、寝てくるわ。来たら呼んでくれよな」



 バイトの先輩はそう言って二階の商品置き場へとサボりに行った。この時間のこの店は客がやってくる事は殆どない、店長は深夜営業を辞めようかと考えているらしく、この恐ろしく楽で人をダメにするぬるま湯みたいなバイトが続けられなくなるのかと光岡は少しばかりがっかりしている。



「そういえばあの娘達、何か見ながら中国語? で話してたな。なんだっけ?」



 あまりにも暇すぎて二人の話ばかり聞いていた光岡は彼女等が見ていた物をスマホで検索する。



「えっと、『星空のオオカミとネコ 箸・夜明空』だったっけ? なろうかよ!」



 ライトノベル。殺し屋ものなのかと思いながら光岡はそれを読み進めて少しだけ突っ込む。



「走り出した車のトルクは大きいからタイヤを撃ち抜かれてパンクしても走るんだよな。運転難しくなるけどサ。それにしてもドラッグの日本マーケットは安全かつ高額取引の為、魅力なんだっけ? 法体制がややこしい分、金の取引もその温床にされてるしな」



 殺し屋オオカミ。東雲は眠っていない。案外子供である和子はその生業に慣れてしまうのかもしれないが、大人である東雲は思うところもあるのだろう。冴園という男の来訪、彼は東雲の幼馴染だという。



「ストレス性の不眠症か、物語だから進行性の家族性かと思っちゃったよ。こういう殺し屋とか本当にいる職業かは分からないけど、特殊な仕事をする人間の周りには特殊な人間が集まってくるよな」



 類は友を呼ぶという言葉をはじめて記載した中国の書籍は実に的を得ている。本作を語る上で殺しを生業にしている人間も所詮人の子。鬼になろうと人の子であるという事。

 実際に殺人を快楽とするサイコパス。一部のシリアルキラーを除けば、殺人行為から来る心的ストレスは計り知れないだろうし、一般的には分かろうとは思わないものだろう。


 当然ながら、東雲咲は心まではオオカミになりきれない、幼馴染であり親友の冴園をしてようやく安眠に入る事ができる。これはある種のPTSD、その中でも条件付けというやつなのだろう。

 光岡は和子のリアルさを住んでいる町について共感した。案外長く住んでいても知らない店、関わらない場所の方が多い。和子と変わらず光岡もスーパーとドン・キホーテとイオンモールくらいしか行くところがない。



「昴先輩は大分ヤバい子だな。そもそも学校の花壇に埋めるなよ」



 彼の意図はいくつか読み取れる、和子に捧げる墓地なのかもしれない。それを差し引いても、学校の花壇に動物の死体を遺棄するとなると、腐食した動物の分解から異臭が発生するだろう。動物を地面に埋める際は最低2メートル程の深さが好ましいが地下水汚染になる可能性も考慮する必要がある。


 そしてそれを行っていいのは自分の私有地のでみである。

 よって、動物の死体は専門業者に頼むのが一番と言えるのかもしれない。そんな事を考えてしまう光岡。同時に小動物を殺傷する事件、これも周期的に実在する。客のこない店内で堂々とスマートフォンを見つめる光岡だったが、今日に限りいつもの二人がやってこない。

 代わりにこれまた可愛い女性が二人やってきた。一人は黒髪おかっぱ、そしてこの夜更けにゴスロリ、もう片方はラフなれど何処か水商売を感じさせる女性。あべこべな二人だが、どうもそのおかっぱの小さい少女の事を先生と呼んでいた。



「ヘカ先生、こんな時間に何喰うんすか?」

「とりあえずガリガリ君全部買い占めるん。あとカップ麺とコーラなんな?」



 子供が見たら夢みたいな買い物の仕方をする二人。彼女等は雑誌コーナーではかたっぱしから週刊漫画を、お菓子コーナーではチョコ菓子とスナック菓子を中心に、アイスにコーラ、パーティーでもするのだろうかと光岡は思いながらその二人を注視する。



「殺し屋の依頼料って大体いくらくらいが相場なん?」

「国や場所や相手にもよるんでしょうけど、大体安くて5万、高ければ数百万ってとこじゃねーすか? ちなみに自分はこの首に一千万、棚田の総帥がかけてるっすよ。ヘカ先生ついに和子ちゃん、と狂気の小動物殺害犯とのご対面っすね」



「そうなんな。ヘカなら、こんなイカれた子供は相手にしないん。何されるか分かったものじゃないんな」



 イカれたヘカが言うのだか、この犬を虐待死させた少女は大分残念な感じなのだろう。



「クモ、クモっすねぇ。ならヘカ先生はカラスっすか?」

「さしずめ欄ちゃんはキツネなんな」

「無難っすねぇ! 絶対主役になれねーやつっすよ」

「ヘカは主役級なんな? 実際、子供の殺し屋っているん?」



 ヘカの質問に欄はう~んと考える。それは即答として、いるともいないとも答えられない微妙な質問だった。そしてそれを遠くから聞いている光岡はこの二人は真剣に何の話をしているのかと興味が尽きない。



「いない事はないっすね。例えば中東系の少年兵や売春児童。あれもれっきとした殺しの道具っすから殺し屋ちゃあ殺し屋っすね。日本にもいない事はねーっす。柔道や空手なんてスポーツじゃなくて、御家流とかそんな感じで伝わってる殺しの技を静かに伝えられてるところもあるっすからね。LRAなんてリアルに子供の殺し屋を大量に作ってたっす。あと一番酷いのは中国の……」



 話そうとした瞬間、欄と呼ばれた飄々とした女性は光岡に鋭い視線を送り、しゃべるのをやめた。



「中国のなんなん?」

「すみませんっす。忘れちゃったっすよ。それにしてもクモの由来はワイヤーロープみたいな物を使うからだったんすね? 最近のは細いので1トンくらいまでの負荷に耐えるっすから、こんな曲芸殺し屋がいてもおかしくねーっすね。同じ大きさなら昆虫は最強だとか何処かで書いてたっすけど、オオカミも和子ちゃんも一本取られちゃったっすね!」

「欄ちゃんならクモを殺せるん?」

「う~ん、自分は殺しの腕は三級品っすよ。オツムの方は一休さんばりっすけど……たとえば自分が護身用で持ってるデリンジャーやコルト25じゃまずクモはやれねーっすね。多分東雲さんの銃は38口径くらいの銃だと思うんすよね。それが抜けないなら、もう50口径もってくるしかねーっす。相手がティラノサウルスでも、クモの化物でも特殊なワイヤー繊維でも関係なくぶち抜くっすから。それにしてもクモ。強さに比例して、なんというかど素人っすね」



 感情的に昂るクモについて語る欄にヘカはエナジードリンクを籠にぽいぽいと入れながら答える。



「人間、何処に沸点があるか分からないん。いくら訓練しても子供は子供なんよ。涼しい顔で行動できるのは、洗脳された子供くらいなんな」



 ヘカがそれっぽい事を言うので、欄は嗤う。それはヘカを、クモや和子をあざ笑うように嗤う。嗤う。



「どっちも、ちゃんとした人間っすね。殺せる時にブスリ! それが殺し屋っすよ。口は喋る為にあって手は汚す為にある。うん、まだ戻れるっすよ二人とも、東雲さんも和子ちゃんに甘いっすね。和子ちゃんを気絶させてその間にクモを処分すればよかったのに」



 さらりと怖い事を言う欄にヘカは呆れたような顔で購入する物をまとめてからレジを指さす。



「この作品はネコであるワコと、オオカミである東雲との過去を前提とした物語なんな? 星空はこの町の事なんとヘカは予想するん。そこに殺し屋同士のルールなんて正直どうでもいいんな? ワコの行く道がどうなるのかなん。必ず分かれ道になるん。その道標が東雲なんな?」



 ヘカがそうまとめてレジに向かいながら、欄に言う。



「ワコとあざみはヘカと欄ちゃんの仲みたいなもんなんな?」



 欄は少し考えると悪い笑顔を見せる。



「違いは自分達は両親がいない事っすね。絵に描いたようなお嬢様、この場合は文字に起こしたようなと言った方がいいんすか?」



 ヘカは少し怪訝に感じた。普段殆どの事を気にした事もないヘカが気になったこの欄の普段以上に人を喰ったような態度。



「欄ちゃん、なにか家族にトラウマでもあるん?」

「……う~ん、さすがにヘカ先生にもバレちまうっすか、自分は親も兄弟も家族も知らねーんすよね。だから、こういうの正直キツいっす」



 和子のような家の子も、クモ、もといあざみのような家の子も実際にわりといる。当事者からすればたまったもんじゃないような環境なんだろう。

 囚われた生活のように感じているかもしれない。だが、そんな環境を羨ましいと思う人間も一部存在している。

 ないものねだりなのかもしれないし、それは広い意味では嫉妬なんだろう。

 欄は大量のジャンクフードや雑誌をカードで払う。そんな中でヘカに珍しく自分の過去を話し始めた。



「中国にいた頃なんすけどね。自分の事を姉か何かかだと勘違いしてうろちょろする子がいたんすよ。その時は姉妹ってのはそーいうもんかなと思ったっす」

「初耳なんな? で、その子はどうなったん?」

「さぁ、死んでいるのか、生きているのか、わかんねーすね。店員さん、いくらっすか?」



 突然話しかけられた光岡はレジに手をかかげて営業スマイル。



「5万と285円です」

「案外安くすんだっすね。帰って、『星空のオオカミとネコ 箸・夜明空』の続き読みましょうっす!」

「そうなんな! 今回は読者オススメ作品なん! ヘカも参考にするんよ」



 そう言って二人は店を後にする。この深夜には殆ど客のこないコンビニで、ここ最近色んなお客さんがやってくる。

 そのお客さん達の共通点は……


『星空のオオカミとネコ 箸・夜明空』


 それを開いてから光岡は読み直す。そして先輩がまだサボり続けている事も忘れてこうつぶやいた。



「これ、有名な人が書いた作品なのかな?」



 女の子との共通の会話の為という不純な理由からだが、彼は本作にはまり読み込んでいく事になる。そして本来踏み込む事のないハズの世界に足を踏み入れる

『星空のオオカミとネコ 箸・夜明空』多彩なキャラクターも魅力的で、主人公であるオオカミとネコ。東雲と和子以外にも気に入る推しのキャラクターがいるんじゃないでしょうか?

 今回は少しばかり前書き、後書きがそっけない事をお許しください。

 今月オススメのアクション作品、是非とも一緒に楽しんでもらえれば幸いです!

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