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セシャトのWeb小説文庫2019  作者: 古書店ふしぎのくに
第九章 『放浪聖女の鉄拳制裁 著・ペケさん』
82/111

所謂、これにて一件落着

最近ですが、ブルーライトカットのPC眼鏡を買ってもらいましたよぅ! ジンズの物になるんですが、古書店『ふしぎのくに』において道具の統一をしたいというお話が出ています。みんな同じスマホと同じPC、またアップルウォッチ等を考えているそうです。そんな中で第一弾がPC眼鏡でした。

「いらっしゃいませぇ! 古書店『あんくくろす』へようこそ!」



 十字の髪留めをつけて、レシェフは自分の職場、真新しい古書店で初めて入店した小さなお客様を持て成した。

 古書店『おべりすく』にもやってきた幼い少女。

 棚田アリアその人。



「いいお店ですわね? 貴女も何処か表情も変わって、あか抜けたみたい」

「アリアさん、是非貴女を最初のお客様に迎えたかったので、わざわざ来て頂いてありがとうございます」



 そう言ってレシェフは母屋へとアリアを誘う。それに一礼してアリアは母屋へと入る。そこは『おべりすく』とも『ふしぎのくに』とも違う母屋。



「お店というよりはお部屋みたいね?」

「私ここに住み込みですから、お菓子も沢山用意しました」



 駄菓子の詰め合わせを見てアリアは苦笑しながらも、その中の一つ、ハイレモンのタブレットを手に取るとそれを口に入れた。



「じゃあさっそく話しましょう!」



 待ってましたと言わんばかりに、アリアはipadを開いた。



「では一章の最後まで一緒に読み進めていくだぎゃ」



 クスクスと笑うアリア。



「成金の画き方は逸品ね。不思議な事に、突如資金を得た人は、いらない物を買いたがる節があるわ」

「ですね! 本当にお金を持ってる人の家ってスッキリしてるものですもんね。そして、ここで余の顔忘れたか? という大喜利です。また孤児院側も、勇者パーティーに依頼をしているお話がここで効いてきます。結果としてすじが通り物語の繋げ方に深みがでます」



 今回の作品『放浪聖女の鉄拳制裁 箸・ペケさん』に関して、色々とひと月かけて話してきたが、覚えていて欲しい事は二つ。

 基本に忠実な作品である事。そして時代劇の起承転結を実に上手く再現している。

 これを何度も説明してきたが、正真正銘のテンプレートと呼ばれるベースを持つ数少ない作品と言える。



「レシェフさん、出たわね。悪人のお得意、殿の名を語るくせ者め、であえであえ。といったところかしら? ふふふ」



 口を押えて上品に笑うアリアにレシェフは笑う。アイスコーヒーを入れようととして、自分の部屋で滑った。



「あぅ、でりゃ痛か……」

「レシェフさん、大丈夫かしら?」



 レシェフを心配するアリアだったが、レシェフの焦点は合わない。いよいよ救急車かと思った時、レシェフは雰囲気が変わり口を開く。



「おや、久しぶりに外に出られたと思ったらロリがいるじゃないか、ごきげんよう! 比類なき運命を抱いた忌子」



 今まで、優しいお姉さんだったレシェフは突如として不躾な不良娘へと変わる。はたから見ればただの厨二病にしか見えないが、レシェフはその雰囲気まで変わっているので、アリアは質問。



「貴女は誰?」

「ボクが本物のレシェフだよ。どうも君とは気が合いそうだ。ボクと同じ、いらない子だろう? さっきの話だけど、これはもうわざとやってるね。Web小説版水戸黄門&暴れん坊将軍といったところかな? ボクは銭形平次も好きなんだけどね」



 レシェフがそう語るので、アリアは目を瞑る。



「そうね。東野栄次郎氏の演じていた水戸黄門をこの作品を読んでていたら思い出すわ」



 十と少しの女児がそんな事を言うのを何も不思議がらずにレシェフは彼女との会話を楽しむ。



「一つロリに聞いてもいいかい?」

「ロリというのをやめて! アリアよ」

「じゃあ、アリア。どう考えても、身分の高いソフィーの事を知っている団長は何で剣をおさめないんだろうね? ここまで時代劇を模倣する必要性はないとボクは思う」



 時代劇のわき役護衛はまさにロボット。彼らには発言権すらないが、この団長。主君の為という意味不明な理由付けで大司教に剣を向ける。



「それは私も少し思ったわ。これが時代劇なら、御家断絶、さらし首ね」



 面白くもくそもない話だが、リアルにソフィーの肩を持つ方が何かと利益があり、騎士道精神にも逆らわない。これが時代劇なら御老公、助太刀致しますの一言で反逆すれば藩を任せてもらえるくらいには出世できる可能性すらある。



「これが、テンプレートの、というより伝統の弱点という事かもしれないね? 君もそうだろう? 盗聴器を持ち込んでボクの店に来るくらいだ。この身体の宿主の事を調べているみたいだけど、先に言おう。君の兄君に宿主は反旗を翻すような人間ではないよ。無論僕もね」



 レシェフは駄菓子の入った器に手を突っ込むと大きく口をあけて多彩な種類の駄菓子をばくりと食べる。



「なんてチープで、子供だましなお菓子だ。それを君のような違いの分かる人間に出すというのも宿主の考える事も分からないね」



 ブラックサンダーの封をやぶってアリアはそれを割って一口食べる。今しがたチープなお菓子であると言っていたレシェフはその光景を黙ってみる。



「あら、レシェフさん。駄菓子もいいじゃない。おしゃべりをしながらこうやってWeb小説を読むのには意外と適したお茶請けだと思うわよ」



 これこそが、誠の上流の人間かとレシェフは楽しそうな顔をする。



「あはは、一本取られたよ。ボクも君も神を冒涜したキメラみたいな存在だもんな。猊下殿が来たら裁かれるのだろうか?」



 アリアはレシェフを見て固まる。自分の出生について、古書店『ふしぎのくに』の面々も知らないハズ。このレシェフは一体何者なのか……



「何処まで知っているのかしら?」

「そんな事より、今は作品を楽しもうじゃないか、章を終えるに相応しい化物を用意してきた。まさにオオトリ、幕の内が食べたいところだね。アリア、この回復こそ最大の痛みというのは、いつごろから言われだしたか知っているかい?」



 アリアは首を横に振るのでレシェフは鼻でフンと笑うと少しばかり考えるように話し出した。



「某少年漫画か、某ライトノベル。いずれも90年代発の設定だね。当時としては画期的な考えだったんじゃないかな。ようはがん細胞の動きみたいなものだね」



 どちらが速かったのかは調べればわかる事かもしれないが、焦げを食べればガンになる等と言われていた時代、今よりだいぶとんでも科学的発想が愛されていた時代の産物。

 実際回復にはカロリーとエネルギーが必要になるので、無理やり跳ね上げたとしてもエネルギー切れで最大効率は上がらない。

 これは一般的に自身の治癒能力を活性化させるという設定の類の回復魔法に関してではあるが……



「薬も飲みすぎたら毒ってことね。先代は罰則無しなのね……」

「それは言わぬが仏だろうね。一応善人なんで、酌量ってところかな? ボクが一番驚きを隠せないのは、まさか結婚式エンドを持ってくるところだね」



 それにアリアは今一意味が分からないという顔をしていた。それにレシェフは頷く。



「まぁ、君は年齢的に知らないだろうね。昔、ある時期の創作物の終わりは結婚式エンド、あるいはいつのまにか結婚してましたという、終わりよければ全てよしパターンというのが横行していた時代があってね。第一章の終わりとはいえ、ここでそれを盛って来た事に、ボクは少々の感動と笑いを誘われてね。西方巡礼編というのもいささか時代劇っぽいね。今更気づいたけどもさ」



 レシェフは考えすぎかもしれないと思ったが、最初から最後までこの天才的な演出をする作者の手の中にいたような気がしてならなかった。

 これもまた一つの作品の楽しみ方、心地よい読了感に浸っているアリアを見て、レシェフは水を差した。



「ちょっといいかい?」

「貴女、何を!」



 アリアの首元に付けられた盗聴器を指で潰すとレシェフは口パクを始める。アリアはその口の動きを読む。



”ボクたちは、姉妹みたいなものだろう? ボクは、古書店の連中とも神様ともつるむつもりはない。アリア、君さえよければ僕が君についてやるよ”



「レシェフさん」



 アリアがレシェフの言葉に反応しようとした時、レシェフが食べていたきな粉棒のきなこが鼻孔からくしゃみを誘った。



「は、はっ、はっくしゅん! ふぇ?」



 レシェフはきょろきょろとあたりを見渡す。そしてアリアの姿を見つけてニッコリとほほ笑むとスマホを見て行った。



「少し居眠りしてたみたいです。どこまで読みましたか?」

「もう、読み終わったわ。レシェフさん、また遊びにきていいかしら? しばらくはこのあたりに住んでますの」



 アリアがまた遊びにきてくれるという事でレシェフは微笑んで頷いた。もちろん、常連客ができる事程嬉しいものはない。



「お待ちしてます。私の古書店のコンセプトも考えたいですしね。ペケさんのその他の作品もどんどん読みあいたいじゃないですかぁ! 幼女王とかいいですよね!」



 子供みたいな笑顔でそんな事を言うレシェフにアリアは苦笑した。



「レシェフさん、一つの作家作品だけじゃなくて、貴女はこれから色んな作品を色んな方に紹介していかないといけないんじゃないかしら?」



 図星を突かれたうえに、何歳も年下の女の子にそう言われるもののなんだか、それが心地よい。



「私は好きな物を好きと伝えていきたいだぎゃあ」

「方言出てるわよ」

「てへへ、中々なれないですね。でも、私は読者やお客様に面白い作品を教えてもらって、それを一緒に読み合わせていくという店主でもいいかなって思っているんです。できない事や分からない事はその筋の得意な人と一緒にスタンスですね」



 何も最初から上手くできるわけはない。それは小説だってそうだし、イラストや音楽等の芸事もそう。

 レシェフは、古書店『ふしぎのくに』や『おべりすく』とは違う方針をこの自分に与えられたスペース『あんくくろす』で進めて行きたいなと胸に刻んでいた。



「じゃあ、そろそろおいとまするわね」

「お気をつけて」



 店の入口までお見送りをした時、アリアは笑う。



「また来るわ。土上あやさん。元気そうで本当に安心したわ」



 振り向いて帰っていくアリアの首の後ろの数字、入口に戻ろうとした時、扉に映った自分のうなじの下にも似たような数字が表示されていた事をレシェフは気づかなかった。

 自分の店に戻ると共に、次は『放浪聖女の鉄拳制裁 箸・ペケさん』の北方暗躍編を読もうかなと今日から始まる日々に対して期待に胸を膨らませた。



さて、どの作品もいつかはこの時がやってきます。本日を持ちまして、『放浪聖女の鉄拳制裁 箸・ペケさん』の紹介を一旦終了とさせていただきます。大変反響を頂きました事、お礼申し上げますよぅ! またここから本作やペケさんのその他の作品を知られた方がいらっしゃいましたら、是非楽しんでくださいね! この場を借りて、ペケさんには重ねてお礼を申し上げます。ありがとうございました!

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