表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
セシャトのWeb小説文庫2019  作者: 古書店ふしぎのくに
第九章 『放浪聖女の鉄拳制裁 著・ペケさん』
80/111

ラノベ西洋版水戸黄門を楽しむ女児

台風がやってきましたねぇ。私、ここ数年までそこまで台風に関する脅威を感じた事がなかったんですが、やはり自然災害は恐ろしいものですねぇ。一瞬の事なのに、酷く長い事都市機能がマヒしてしまいます。皆さん、数日の内はお気をつけくださいね!

「いらっしゃいませぇ!」



 掛け声も随分様になってきたレシェフ。店番をするというテラー以前に古書店経営に一番重要な仕事を学びながら、ふと思い出した。



「私って普段は女子高生ですから、古書店経営どうするがや? 神様とシアさんはいまごろしっぽりやってるでしょうし……まぁいいか」



 今回、古書店『おべりすく』にやってきたのは愛らしいハーフの少女だった。可愛いなと思ってレシェフは見つめているとその少女はカウンターにやってきた。



「ここが秋文君が寝泊まりしたっていう『おべりすく』で間違いないわね?」



 やたらと上からくるこの少女にレシェフは戸惑っていると少女は睨みつけてこう言った。



「アヌさんとバストさんとやらは何処かしら? シアさん! 秋文君に嫌らしい事をしたのは知っているのよ!」



 ビシッとポーズをつけてそう言う少女にレシェフはなんの事やらという顔を見せてから、理解した。



「あぁ、私は店主のシアさんじゃないですよ。ここで修行中のレシェフです。ここの人と知り合いなんですか?」




 少女は全てを理解すると顔を真っ赤にして俯いた。小さな声で「秋文君がここでWeb小説の話を聞いたのよ」と呟くのでレシェフはこの少女にオススメするならやはりあの作品かとタブレットを見せる。

「では私も一つお嬢さんに作品をおしえりゃあ」



 当然『放浪聖女の鉄拳制裁 箸・ペケさん』を読み聞かせるのだが、少女は自らもipadを取り出してそれを読む。



「スキレットでお肉を焼くとどうしてあんなに美味しいのかしら?」

「それは鉄の塊ですから、全体から伝わる熱が普通のフライパンよりも高いからですよ。えっと……」

「アリアよ。棚田アリア。私、こういう良い行いをすれば自分に返ってくるっていう考え好きよ。そもそも宗教って人を助けて良い事をしなさいという考えを元にできているものね。そういう意味ではシルフィート教はちゃんとした教えをしているわね」



 なんとも生意気かつ可愛い女の子だろうかと思いながらレシェフはお煎餅等を出してから笑った。



「マドランさん達も中々よくできてると思いませんか? 基本的には人って良い人の方がおおいんですよ。こういう造形が実に心が温かくなりますね」



 アリアは言わんとしている事は分かるが、熱心な宗教徒は日本では育ちにくいから、教会権力に関してはレシェフは考えが及んでいないなと考えた。元々日本の寺院も治外法権を掲げていたわけであり、案外教会はマフィアばり、国によっては国家権力並みの力を保有している。



「粉を売るか、説法を売るか、だなんて皮肉を言うわよね。それにしてもマドラン。超がつく程、人がいいのね。早死にしそうじゃない」



 小学生くらいの女児がこんな事を言うのにレシェフは笑いがこみあげたが、なんとか飲み込んで微笑む。



「周りの人からの支持も大きいですし、きっとそんな事ないですよ。案外世界はいいひとの割合の方が大きいんです。じゃなきゃ、世界は回らないですよ」



 フンとアリアは鼻を鳴らす。そして目を瞑ってアリアは特徴的な声で話し出した。



「レシェフさんの考え、嫌いじゃないわ。でも、百人の善人より、たった一人の超がつく極悪人がいるだけで世の中は狂うの」



 アリアがレシェフを脅すようにすごんでみせるが、所詮は形は可憐な女児。どうにもレシェフは笑いを堪えるのに必死だった。もし、彼女の背景をレシェフが知っているならこんな風にもならなかったかもしれないが、子ども扱いを受けている事に気づいたアリアは顔を真っ赤にして怒る。



「笑いを堪えるのをおやめなさい!」

「いえいえ、アリアさん。すまんだが、でもそんなに難しく考えずに楽しむ事も大事ですよ。彼女達は言わば僧侶なので、巡礼する事もまた仕事。だから、立ち寄った街や国があるというのも頷けませんか? 次はどんな事件が起きて、どんな風に解決するのか、それをただ単純に楽しんでみて、それから感想を楽しのがいいにゃあ」

「貴女、時々訛るのね」

「あはは、シティーガールにはまだまだ遠そうです」



 そう言ってコツンと自分の頭をたたいて見せた。それを見てアリアはドン引く。まさか、こんな昭和でもネタとして扱われてきたような反応を見せる存在が令和の時代にいたとはと……「そ、そうなの。頑張ってくださいね。ところで、教会は動物禁止ってよくよく考えたらおかしいとは思わない?」



 世界各国の寺院教会に対して、アリアが素朴で深い疑問を説いた。まれに神社、寺院に散歩につれていく者を見るが公園を含みペットの連れ込みは禁止されている。単純に不衛生だからという事なのだが、神社を除き教会や寺院でもペットは連れ込み禁止のところが多い。海外はこのあたりは柔軟な場合があるが、単純に不衛生、さらにいえば穢れを持ち込むなというところだろう。されど、教会や寺院の教えを素直に捉えればその対応はおかしいとなるのが、アリアの考えだった。

 なんでなんで? 世の中の理屈についてアリアはそんな事を知らない程の一般的な頭の悪い子供ではないんだろう。それ故にレシェフは真実を述べる。



「宗教は人間が作って人間の為にあるからだし」



 大人ぶったつもりだったが、アリアは嬉しそうに笑った。



「そういう事よね。やっと貴女の本当の声を聴いた気がしたわ。それにしても、この身分の高いスケベな老人ってなんでどこにでもいるのかしら」



 案外、最近の作品においてこの類のキャラクターはめっぽう減った。減少傾向にあるのは、いずれかの月でも他作家が語ったように、Web小説を執筆する世代は性に関して異様なぐらいの禁忌を持っていたり、不浄な物ととらえる。所謂ストレスをかけるキャラクターになりうるのだろう。

 その点、ペケさんの作品は確固たる、安定感を誇る。何処かで見た事があるような設定をいい具合に今風に煮詰めているのだろう。



「こういうちょっと変わったキャラクターはギャップを持たせやすいんですよ。当然、ただのスケベ爺というだけで司祭なんてできませんしね」



 それもそうねとアリアとレシェフは二人でクスクスと笑う。お店に人もこないので、カウンターに呼び鈴を置いて、レシェフはアリアを母屋へと招いた。アリアは慣れているのかその申し出に対して一礼する。



「お言葉に甘えておじゃましますわ」



 母屋に上がると純和風の部屋模様にアリアは少しだけ嬉しそうな顔をしてみせた。



「古書店『ふしぎのくに』とは真逆の作りなのね。それでいて茶室みたいなこの空間、センスがあるわ。でも、この古書店。置いている本があまりにも偏りすぎていないかしら?」



 そればっかりは店主のシアの趣味としか言いようがない。またレシェフは古書店『ふしぎのくに』がどんな本を置いているのかも知らないので、アリアの方がこの組織については詳しそうだなと頷いた。



「紅茶でいいですか?」



 アリアは、茶筅を指さしてから言う。



「よろしければお抹茶を」



 淹れた事がないレシェフはスマホで即座にお茶のたて方を調べて湯をわかした。その間に作品について再び話す。



「前の話と上手く嚙合わせていますよね? 短編連作でこの仕様は上手だと思いませんか?」



 レシェフの語りにアリアは完全否定する。



「これは紛れもなく長編ね。多分頭から先まで考えてあるわね。それを一話完結型に纏めてあるという方が正しいのじゃなくて?」



 前の物語で教会を建てたい、その神職者が必要であるという話に、すんなりと話を進めているのはアリアが言う通りだろう。レシェフは悔しいという気持ちはないが、こんな幼い少女に教わる自分がやや恥ずかしくなる。



「それにしても、この作者。本当に時代劇マニアなのかしら? 完全に物語の作り方が、西洋風水戸黄門じゃない」



 レシェフはさすがは子供だなと笑う。そう、今回の司祭を探す話はまさに、代官のバカ息子が町娘に一目ぼれをしてどうにか手に入れようとするあの定番系のお話が展開される。

「この作品の良いところは、今のところ死人がでていないところですね。さすがは神職者だぎゃ、あの御老公、時と場合によっては仇討を町人にさせたりするので、結構びっくりしますよね」



 今回のお話はソフィ達がファラン司祭の悩みの種を取り除くのにどのような働きをするのかというお話。

 それにアリアとレシェフはベタベタだなと言いながらもその展開を楽しむ。時代劇が老人に人気がある理由。彼らは安心して観れるものが好きなのだ。誰が悪くて、誰がいい人なのか……勧善懲悪は何時の世もどの国でもヒーローなのだろう。



「あら、話し込んでしまったわね。このオオサカにはもうしばらくいるので、アヌさんとバストさん、それにふしだらななシアさんにはまた挨拶に来ますわ。それじゃあごきげんよう」



 そう言ってくるりと店内に出る入り口に向かおうとしたアリアの首元に数字の描かれた痣のようなものを見つける。



「02?」

「どうかしました?」

「いいえ、また来てくださいね!」

「ふふ、次は是非ともお抹茶を飲みたいわ」



 そう、レシェフはお湯を沸かしたまま、放置していた。それを思い出すや否や、レシェフは叫ぶ。



「いけない!」



 そう言って火を止めに行くレシェフを呆れた顔で見てアリアは店を後にした。あんなにドジな女の子が世の中に本当にいる事。スマホを取り出すと電話を入れた。



「もしもし沢城さん、間違いないわ。土上あや、本人みたいね。どうやって病院を抜け出したのか分からないけど、元気に店番をしていたわ」



 電話の相手からの指示を受けて面倒くさそうにアリアは頷くと手を挙げてタクシーに乗った。



「お兄様が私を必要としている? そんな事、あるわけないじゃない」

アリアさんは、レシェフさんの事を御存じでしたね。さぁ、どういう事なんでしょうか? 

『放浪聖女の鉄拳制裁 箸・ペケさん』読め読む程、味がでますねぇ^^ 実は水戸黄門のような時代劇物をベースに考える作品は意外と多いです。いくつか名前をぼかすとなろう初で書籍化、この前アニメ化していた物もそうですね^^ 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ