テンプレートって悪い言葉じゃないんですね!
はい! はじまりましたねぇ。9月の作品はお待たせしました。ペケさんです! 推薦する中でどの方が良いかという事で、実は去年にペケさんは紹介させてもらう予定は確定していました。ご本人も知らないと思いますが^^ 幼女王と再スタートを、と考えていましたが、どうせならトレンドという事で今回連載中の作品を選ばせて頂きましたよぅ!
「ボケコラぁああ! 何巨人に打たれとんじゃ、ほんまにぃ!」
甲子園球場で猛虎の応援をしている三人組。特に二人の男女が熱心に応援している中、眠たそうな目で今の戦局を見つめている青年は球場の割高なビールを一口飲むと考えた。
(2アウト満塁。さて、4番は仕事をするか、ここが今日の勝負の分かれめっすね)
静かに野球を楽しむのはバスト、ヤキソバを食べながら喚き散らすのはアヌ。そして、この甲子園球場名物、勝ち割り日本酒を一口上品に飲む女性、ゆっくりと立ち上がりメガホンを向ける。
一瞬、周囲の野球ファン達もその少女……いや、飲酒をしている事から女性に目が釘付けになる。なんという場違いな佇まい、舞でも見ているような気分になる。
西の古書店『おべりすく』店主シア。
「なにしてますん! ジャイアンツなんかいてまぇええ!」
なんだ普通のタイガースファンかと皆野球に集中する。六甲おろしが聞こえ始める。途端に大合唱。
この状況を見て、一人の少女は割高のオレンジジュースを飲みながらこう呟いた。
「これが、古書店『おべりすく』げな?」
「えぇ、お恥ずかしいながら」
バストが答えるので、最後の良心とばかりバストを見つめる少女。
野球もたけなわ、猛虎は巨人に敗れ、広島が最初と言われた風船のゴミがそこらに散らばる球場を四人は後にする。
そして適当に入った焼き肉屋。
「シア店長、えっと私、『おべりすく』さんに、店長の勉強をかまってもらいに」
「そんなん適当にしてたらええんです! ウチのやり方はウチにしかできへんし、セシャトさんはセシャトさん。レシェフさんはレシェフさんのやり方をしたらいいんですえ? 今日はわざわざ名古屋からきてくれたレシェフさんの歓迎会です」
そう、彼女レシェフ。現役の女子高生でありながら、愛知は名古屋の古書の街で店長を任される事になる。
ジュージューと焼ける高級な肉の一番いいところをシアは取り分けてレシェフの皿に乗せた。
「まぁ、ほだえんと食べなさい。一応、ウチは先輩やからね。困ったらこのアホ二人、いつでも貸し出しますえ」
バストにアヌもレシェフを見て笑顔を返す。肉をぱぱっと数枚取って食べてからアヌが自分に指さした。
「もし、そん時はこのアヌ兄さんを呼んでやぁ! レシェフ姉さんがJKっちゅーことは、友達も……ええやん!」
何もよくない事にシアが睨みつけるので、黙ってアヌはジョッキのビールに口をつけた。
「まぁ、自分の家やと思って楽しんでな? ウチも妹が出来たみたいで嬉しいわぁ」
「えっと、はい!」
楽しい焼肉ディナー。レシェフ、彼女はシアやアヌ、さらにセシャト達とは少し違う存在。半分は神様が作った存在ではないのだ。
人でありながら、神様が生み出した眷属を宿してしまったという数奇な運命の持ち主。それ故、突然の事に混乱していたレシェフの元にやってきたのがシア。
そして、今西で研修中という事。
「レシェフさんもWeb小説読む人なんやろ?」
「はい、ノベルアップ+さんからですけど、もう一人の私が宿ってからは他のサイトも良く読むように」
うんうんと頷くシア。そしてそこでレシェフに聞いてみた。
「そうやね。じゃあ一つ、ウチ等に何か紹介してくれへん? ウチは手取り足取り仕事教えるというスタンスは向かへんから」
それは冗談かとレシェフは思っていたが、突然アヌの表情が鋭くなり、先ほどから肉をひょいひょいと食べていたバストも止まってレシェフを見つめた。
「え? え? これはちょい、無茶振りだぎゃ……でも、おススメはあるんです。とっても読みやすくて、とっても可愛らしいイラストがどえりゃあ刺さるんです」
時折、愛知の方便が出るレシェフは、自分の主人格と眷属の魂とを宿しているからなんだろうと三人は面白い生き物を見るようにレシェフの話を待った。
「『放浪聖女の鉄拳制裁 著・ペケさん』という作品なんですけど」
その名前を聞いて西の古書店『おべりすく』の三人は頷く。
「ペケさんやね」
「ペケさんかぁ、ええとこ選ぶやん」
「あぁ、ペケさんっすか! 自分も参考にしてますよ」
知ってたという返しにレシェフは少し嬉しくなる。自分が好きな物を他者が知っていた時の気持ちはなんとも言葉に出来ない。
「皆さん、知ってるんですか? 面白いですよね! 他にも沢山書かれてるんですけど!」
興奮してそう言うレシェフにバストはレモンスカッシュを差し出す。それをゆっくりと飲んで落ち着いたレシェフにシアは言った。
「嬉しいのは分かるねんけど、今はレシェフさんはウチ等に作品を紹介する側やで、楽しみながら他の人にも分かるように搔い摘んで説明できなな? それにペケさんは老舗の同業他社みたいなもんやから、ウチ等もよう参考にさせてもらってるねん。レシェフさんも参考にさせてもらうとええで」
それにレシェフは目を丸くする。
「そ、そうなんですか?」
ペケさんはまさにセシャトさんの先導のような存在と言っても過言ではない。夢の図書館の司書であるペケさんによる作品紹介。これがまた実に面白い。
「ワシも、夢の図書館の面接受けたいけど、何処でやっとんのか分からんから、こんなところでしゃーなし働いてんねん」
ピュン!
「ぎゃあああ! 痛ぇええ!」
狂いなくアヌの額に突き刺さる爪楊枝。それを見て驚くのはレシェフのみ、これが西なのだ。ガクブルのレシェフだったが、少し考えてしまった。
「ソフィさんがこの状況を見たら、鉄拳制裁されちゃいそうだがや」
間違いないだろう。西の古書店『おべりすく』の店長シアの邪知暴虐なる態度と行動はいささかパワハラとモラハラを訴えたくなる時がある。
「まぁ、確かに聖女ソフィさんとウチの店長が戦えば、見てる分には面白いかもしれませんが、作品変わっちまいますね」
小さな声で、アヌが「悪は滅んだらええねん」と言うのを耳ざとくその手も爪楊枝でぶすりとさした。ぎゃああと断末魔が聞こえる。
「そやねぇ、ソフィさんに怒られたらウチもすぐにごめんなさいするかなぁ! だって神職のそれもモンクファイターやろ? それにえらい優しいしなぁ」
そう、本作の主人公は言わばモンクファイターである。聖女なる職はないだろう。あるとすればそれは神職の最高職だろう。そんな中で僧兵とは言及されていないが、ガントレット型の神器レリックだけでなく、人体強化の魔法を使えるところから、シルフィート教は、護身術のような物を学ぶのだろう。
「いてて、シア姐さん、他のお客さんがいるところであきませんて……それにしてもペケさんの作品ってどれも安定感あるねんな。これが」
先に言っておくと、ペケさんは物語を作るのが上手い。本当に上手い、そして分かりやすく、いい意味で何処かで読んだ事があるような作品。あるいはどこかで触れた事があるようなジャンルという物を提供してくれる。
「そうっすね。よくテンプレって言う言葉を使いますけど、このペケさん程、それを使いこなせている人は少ないかもしれないっすね」
何の世界でも基礎をしっかりと使いこなす事が出来れば一流というが、まさにそれが本作にも感じる。
アヌとバストの意見に対してレシェフが物申して自爆する。
「私は、この作品はこの独自性を感じますよ! 聖女さんが物理で世直しするという大見出しに対して、作品世界とソフィーさんの設定を細かくしている小見出しの使い方とか……あれ?」
「せやから、物語作るのが上手いから独自性を感じるねん。大本にあるのは、初見で分かりやすい作品。逆に言えば、ペケさんは他の皆のテンプレになれるっちゅー話やな! そら探せばパワー系の巫女さん作品なんて死ぬ程おるやろ?」
Web小説のタイトルでとりあえずページを開き、読み始める。あるいは読むのを止めるという事が読者であればあると思う。
タイトルという期待値に対して、どれだけ冒頭で返せるか、そういう意味ではペケさんの作品タイトルは冒頭から安心感を感じる。予想していた物に近い。それに読みやすさと面白さが+αしていればどうだろう? シアがさらに補足する。
「リピートされやすいやろ? ウチも、『幼女王と再出発・著ペケ』はタイトル通りの作品やろなと思って読ませてもらったら、実際そうで、それから思いのほか残酷で、それでいて心温まる作品書きはるから、ほんま楽しませてもらってます」
レシェフは、この古書店『おべりすく』の三人が実に楽しそうにペケさんの作品に関して語るので、なんだか悔しくなってきた。
「テンプレって悪い言葉じゃないんですね?」
ツイッターにいる一部の人は嫌悪対象でもあるテンプレという言葉、その実、テンプレというものをどれだけの人間が使いきれているだろうか? そのテンプレという言葉に対して、シアが剣菱をコップ一杯飲み干してから呟く。
「ほんまに、クソほっこ共がぁ。テンプレ? そんな物使いこなせるのは大御所だけにきまっとるやろ? 何を舐めくさったこといいよるねん。ほんまぁ、不快やわぁ」
実のところ、テンプレートという物を扱う事の難しさ。もし、そのテンプレというものを事故で死んで、何かに生き返らせてもらい、異世界転生する程度で考えているならそれはテンプレではない。最初から最後まで、全て完結・完成した仕組みで作られた作品をテンプレートという。それができるのは商業でも売れっ子の作家くらいである。名前は出さないが、数々の文学賞を取り、映画化作品を出されている某作家さんは、ゴーストライターとしてテンプレート増産している。
大御所・文豪クラスが初めて使える手法であるという事をここで説明しておく。
と、そこまで饒舌に語ったシアにレシェフは空いた口が塞がらない。
「じゃ、じゃあ。この作品や他の作品を書かれているペケさんは?」
アヌは二杯目のビールで既に顔を真っ赤にして今にも倒れそうに、バストは瓶ビールの五本目を飲み終えた状態でレシェフと同じくシアを見つめる。
「そんなん決まってるやないですか」
ごくり、誰かの喉の鳴る音が聞こえる。ペケさんの作品は何処か他の人と一線を画す雰囲気がある。文章が上手いとか、作品が面白いとか、そういうベクトルではない。
なんだか上手い。その漠然としない感覚でアヌもバストも読んでいたが、その正体が今分かるのかと思ったところ、シアは胸元から神様に貰った指輪を取り出していった。
「秘密や」
『放浪聖女の鉄拳制裁 著・ペケさん』皆さんは、ペケさん新作を読まれていますか? ペケさんの作品の面白いところとして当方のようなスター系システムはあまり採用されないという点にあります。
聖女巡礼団の三人が様々な地域で人助け、ふふふのふ^^ 私のお店にも来ていただけないでしょうか? 毎日1000円お小遣いを差し上げないといけない神様がいらっしゃいまして……めっ! ってして欲しいですねぇ。




