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セシャトのWeb小説文庫2019  作者: 古書店ふしぎのくに
第八章 『双竜は藤瑠璃の夢を見るか 著・結城星乃』
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黒龍は天地人の夢を見るか

さて、少し涼しくなってきましたね? もう夏も終わりでしょうか? 秋はいいですねぇ! 読書の秋、スポーツの秋、食欲の秋。 私は読書とスイーツのハイブリットな秋を楽しみますよぅ!

是非ぜひ、みなさんの小さな秋を見つけてみてくださいね^^

「香彩さん、彼の心境は、普段話している時より大人に感じますね?」



 カーヤは面白い点をついた。心情と実際に語る彼の精神年齢の差異、それに神様はフルーツを食べながら答える。



「ここは結城ワールド全開と言ったところだの。突如として、重厚な文章が続くがの全て意味をしっかりと通して書かれておる。ここは香彩の心情というよりは、作者の心情だの。昔の国語のテストみたいなものだ」



 状況を文章で、何やら重く、何やら普通ではないという事を緊張感をもって語られる。それを神様が喜々として説明している中、先ほど神様とカーヤが話していた事に関して、汐緒が指摘する。



「それはともかく、婿候補とはどういう事でありんす?」



 神様にそう聞く汐緒に神様は再びフルーツをぱくりと食べるとカーヤの頭に手をポンと置いた。



「うむ。このカーヤに次会う時はコヤツの婿候補を連れてくる約束をしての! 私の知り合いで中々に筋の通った男といえば貴様等三人だからの」



 大友がメイド服のしわを伸ばしながらうんうんと頷く。そして神様の頭をつかむと思いっきり万力のように掴む。



「意味が分からない」

「いたたたたた! 大友、貴様。痛いぞぉ!」

「痛くしてんだよ。馬鹿野郎、何勝手に話すすめてんだ」



 神様は涙目で大友の手を離そうとするが、大友の人間離れした握力の前になすすべもない。大友の手を優しく離したのはカーヤその人だった。



「人間の子供、私の事は嫌いですか?」



 カーヤは人外とはいえ綺麗な女の子である。それに大友は親指を立てて見せた。



「いんや、滅茶苦茶可愛いよ。でもここにいる俺たちはこの金髪のガキにキャンプに誘われたわけで、キャンプ婚に誘われたわけじゃあねーんだ。だから神様にはお仕置きだ」



 神様はカーヤの後ろに隠れるという神様としてあるまじき行動に出る。その駒鳥やペンギンみたいな神様の仕草にカーヤは上品に笑った。

 そして大友をうっとりとした表情で見つめる。



「私や、神様、そしてそこの蜘蛛の化生、それらと同居して何の心労も感じない大友。面白い人間の男ですね。本来であれば香彩さんのように私たちの毒気にやられてもおかしくないハズです」



 大友は、トトや汐緒の働くブックカフェの臨時ヘルプとして何度か手伝いに行く。そこで明らかに普通ではないお客さんの接客も行っている為こういうのに慣れていたのかなと勝手に解釈していた。



「なんかさ、竜紅人達三人の関係っていいよな? 種族が違うくても、友人は友人ってのさ。俺はバトル物とかが好きだけど、こういう雰囲気ってうらやましいと思っちまうな」



 そのまさに羨ましいと読者が思う環境に大友自身もいるわけだが、気づかないものなのだろう。



「大友君は、自分が随分恵まれた環境にいる事をあまり理解していなでありんすな? あちきは言葉通り猛毒かや、神様やカーヤのお嬢様とは真逆の日陰者でありんす。まぁ、妖怪と呼ばれる者は大体そういう側面があるかや。だから、皆さんがたまに羨ましいでありんすよ」



 そう言って汐緒はいつもの癖でウィンクをする。それに撃ち抜かれたのはカーヤ。雌の表情で汐緒を見つめては深いため息をついた。



「それにしても、竜紅人。彼はどれだけの業、そして運命を背負っているのでしょうね。私も近い種族として少々、心配になります」



 人間と神様とその使い、大妖怪に龍神とそれらがスマホやタブレットで作品を山頂で読み感想を言い合う。なんというシュールな情景だろうか? まだまだ作品を夜通し楽しもうとしている五人だったが、空にそびえ、赤く輝く月は待ってはくれなかった。



「そろそろ、かの?」



 神様が半目でカーヤに聞くとカーヤは少し顔を赤らめて小さく頷いた。それにいち早く気づき反応したのはトトだった。



「汐緒さん、大友君。僕たち男性陣はここを離れましょうか? レディにとっては大変、デリケートな問題ですしね」



 汐緒は年の功、大友は保険体育の授業でそれに気づき頷いてトトについていこうとした時、カーヤが制止した。



「いえ、お待ちなさい。私が大人になるところを見てくださいまし」



 そう言ってカーヤは服を脱ぐ。一糸まとわぬ姿。それは芸術的な美しさを持っていたのだろう。トト、汐緒、大友は目を背けない。それは逆にカーヤへの失礼にあたる。赤い月の光に照らされ、カーヤの姿が見る見る内に巨大な黒い龍として空に飛びあがる。鱗からはところどころに血を吹いている。

 月もの……いわゆるカーヤ、龍神にとっての初潮を迎えたという事かと三人は考える。そして、同時に”何この状況?”という疑問符が頭に沢山浮かび上がる。


『皆々様、ここにお集まり頂き、感謝の言葉も浮かびません』


 カーヤが脳内に直接語り掛けてくるような気分。トトもさしもの大妖怪汐緒もこの奇跡みたいな事には理解が追い付かない様子だった。逆に日本のアニメやゲーム、ライトノベルで育った大友はこういった事への耐性が強かった。

 神様がフルーツを食べる手を止めて、スマートフォンから『双竜は藤瑠璃の夢を見るか 著・結城星乃』の疑似小説文庫を取り出すと自分の指の爪を噛む。

 あたりの風景が変わる。それは竜紅人が覚醒を促したロケーション。神様からのカーヤへのお祝いの意味を持っているのか……いずれにしても奇跡と魔法が手を繋いだような異常な光景が目の前で繰り広げられる。


『神様……このお礼は』


「良い。貴様は私の子供ではないが、娘みたいなものよ。娘が大人になる事を喜ばん親がどこにおる? 『双竜は藤瑠璃の夢を見るか 著・結城星乃』を選んだのも貴様に一番分かりやすいWeb小説だったからだしの」



 黒い龍、もといカーヤはその巨体をうねらせながら嬉しそうに答える。


『えぇ、大地に花が芽吹くような、そんな語彙を滑らせる文章。そして生き生きとした人物たち。私の即位にこんな祝い物語を聞かせて頂けるとは、サキワイ玉をどれだけ用意せねばならないか……』


 若干置いてきぼりな三人が唖然としている中で、大友が空気を詠まない質問をカーヤと神様に投げかけた。



「えっと、カーヤさんの婿になるって事は、人身御供的な感じになったりするの? もしそうなら多分一番美味いのはケーキとか甘い物ばっか食ってる神様だから……な?」



 さしもの大友もこの巨体を持つカーヤに狙われたら一たまりもないので、最初に食べるなら神様と念を押した。



「大友貴様、考え怖すぎるわっ! それに私は食べてもあんまり美味しくはないぞ。なんせジンベイザメだからの」

「どっかの国ではジンベイザメ喰うぞ」

「マジかの?」

「おおマジだ」



 神様と大友の喰う喰わない問題の話をしていたら、カーヤが黒い龍神の姿からだんだんと元の、あるいは人間の姿に戻る。トトが着替えを手伝い、先ほどと変わらない格好になると、先ほどとは少し違った淑やかな態度でトトにお礼を言う。



「助かりました。ありがとうございます」



 女性には常優しくが座右の銘であるトトは口元を緩め、胸に手を当ててお辞儀をしてみせた。



「カーヤさんが喜んでいただき、僕も大変うれしいですよ」

「まぁ、トト。少し意地悪になったかしら?」

「どうでしょう? 素敵なレディーには少し意地悪になるのが男というものかもしれません。それだけカーヤさんは輝いていますよ」

「ふふふ、誰にでもそんな事を言ってるんでしょう?」



 他の下々に対して、ツンとした態度を繰り返しみせていたカーヤだったが、段々と皆になれ、フランクになる。さらにいえば、少々失礼な事を言ってもカーヤは笑って返してくれる。接客業をしているトト達三人はある一つの事実に気が付いた。



「カーヤってさ、極度の人見知りなんじゃね?」



 たった数時間だが、共に過ごした事で彼女の人見知りはなくなったのか、トトは全員に紅茶を淹れる。そしてふと思いついたかのように言った。



「僕たちが読んでいるこの物語、いわば香彩さんに療さん、さらに言えば竜紅人さん達一人ひとりの成長と歴史の物語です。カーヤさんも凄い速度で心の成長も……なんて考えすぎでしょうか?」



 トトは、竜紅人の前に香彩の姿で現れ出るこの刺客に対して、なんと心躍る展開なのだろうと考えた。使い古された、されど鉄板の相手の精神をつく親しい知人の姿を使った不意打ち。

 トトが一人楽しそうに『双竜は藤瑠璃の夢を見るか 著・結城星乃』を読んでいる姿をカーヤは見て紅潮する。そんなカーヤと目があったトトは微笑を彼女に見せる。



「はぅん!」



 カーヤの反応、三者三葉のそれを見せるが、いずれも悪くは思っていないように思える。それ故、神様は一体カーヤが誰を選ぶのか分からなくなってカーヤに尋ねてみた。



「時にカーヤよ。貴様、心に決めた者はこの中におるのかの? どうも貴様の心が見えんでの、私ももう年かの」



 神様は実際数万年の時を生きているので年寄りといえば年寄りである。見た目がどれだけちんちくりんのガキであろうとも……そんな事を汐緒は考えていたが、神様の表情や態度を見ているとどうもそんな尊い者には感じない。



「神様、私は……カーヤは決めました」



 まさか! と……トトも汐緒も大友ですらカーヤの花びらのような口が何を発するのか注目した。夏の夜、涼しすぎない山の風のようにカーヤは告白した。



「全てです」



 神様とそこにいた三人の目が点になる。この娘、今なんと言った? というかコイツ何言ってんだ? と言う風に……恐る恐る神様が聞き返す。



「全てと言ったのかの? どういう意味かの? 私にはよう分からんが……」



 神様は、目が泳いでいる。それ故不測の事態でも起きたのかと、大友は再び頭を掴もうかと手をコキコキ鳴らし、トトは苦笑。汐緒に至っては恨めしそうな顔で神様を睨みつける。夜が美しいというのは夏程似合う季節もないかもしれない。その夜を守るように、この山で生まれた黒龍の神、カーヤ。

 彼女は少しお転婆に小悪魔のように笑ってみせた。



「神様の子、人間の男子、そして神の域に立った蟲妖。どの容姿も美しいですし、私の心をときめかせました。でも、この三人だけじゃ嫌っ」



 神様以外の三人が同時に感じた気持ち。


(ツン要素が芽生えた)


 彼女が言うには世界は広い、選択肢がトトと大友と汐緒の三人ではあまりにも狭いという事。それをトトの店に通う女性達が聞いたらどんな顔をするのかは分からないが、そういう事らしい。それにトトが少しクスりと笑って聞き返した。



「成程。僕が選ばれなかった事は非常に残念ではありますが、素晴らしい選択です! さすがはカーヤさん、世界はカーヤさんが思う以上に広いですよ! そうですねぇ。例えば、竜紅人さんのような眉目秀麗な方と出会う事もあるかもしれませんねぇ」



 カーヤの瞳孔が一回り大きくなる。図星……汐緒と大友はどういう事だと意味が分からないでいると、神様が手をポンと叩く。



「おぉ、成程の。カーヤの奴、この数時間で腐女子フィルターを会得しておったのか、貴様等三人を『双竜は藤瑠璃の夢を見るか 著・結城星乃』の三人と重ねてみておったと……こういう作品の楽しみ方もあるのやもしれんの」



 作品は今だ続く、やや滞ってはいるがいずれ物語は完結へと歩を進めるのだろう。カーヤと別れた四人は荷物を持って下山する。



「暑い、暑いぞぉ! アイスは?」

「もうねぇよ! 神様がみんな喰っちまっただろうが」



 帰りの電車を待っている中、ホームの逆側で周囲の視線を集める女性の姿。麦わら帽子に黒いサマードレス。そして小さな旅行鞄を持った可憐な少女、もといカーヤの姿。

 彼女は姿勢よく、神様達に微笑んでお辞儀をした。

 その瞬間である。

 バチン!

 周囲の人々の悲鳴が上がる。まばゆい光と共に晴天の下ホームに落雷。

 否……神鳴りが空に昇って行ったのだ。サングラスをつけている四人はカーヤが何処か遠くへ旅立っていく様を見送った。



「さてと……帰ってどうする? 市民プールでも行くか? 俺新しい水着買ってさ!」



 神様と汐緒がその案に乗って盛り上がっていた時、トトはいつも通りの優しい笑顔で話す。



「お仕事を数日お休みしたんですから、当然その分お仕事ですよ? お嬢様方も開店を心待ちにしておりますし、是非。この度は神様もどうか店内に出て頂ければお悦びになられます」



 トトに見つめられ神様も冷や汗がでる。この笑顔は若干怒っている笑顔であると……神様は目を瞑ってから聞いてみた。



「貴様は拗ねるとすぐにそう根に持つの!」

「一体なんの事でしょう」



 そうやって神様に甘えるトトの姿を新鮮に思う大友と、嫉妬の炎を灯らせる汐緒。彼らは東京のお店に帰ったら、お客さんに今月の表題『双竜は藤瑠璃の夢を見るか 著・結城星乃』の読み聞かせを行うのだろう。

『双竜は藤瑠璃の夢を見るか 著・結城星乃』ここ最近、再び始動をはじめましたよぅ! さぁ、次回はと言いたいところですが。本日を持ちまして本作の紹介小説を一旦終了とさせていただきます。続きは本編で一緒に楽しみましょう^^ 彼らの行く末が何処に向かうのか? 最初から読み直してみるのもまた楽しいですよぅ!

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