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セシャトのWeb小説文庫2019  作者: 古書店ふしぎのくに
第七章 『Spirit of the Darkness あの日、僕は妹の命と引き換えに世界を滅ぼした 箸・黒崎光』
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人の定義について考えてみた

実は新古書店スタッフを近々招くことになっているみたいですよぅ! 次は中京。愛知は名古屋の古書の街だそうです。もしこのまま、北海道や東北、中国、四国、九州の古書の街の方々も増えていくと凄い事になりそうですねぇ!

 ツイッターニュースで怪盗・五右衛門による犯行が先日予告通り行われた。奪われた物は未知のオーパーツ。



「この犯人何が目的なんすかね? ただの愉快犯すか? にしては、犯行がプロというか……」



 店頭のカウンターでそう言う欄にエナジードリンクをクピっと飲むヘカはタブレットの画面を見ながら答えた。



「ただの暇人なんな。あるいはフロンティアの人間みたいに、自分が存在しているかどうかを確認する為とかにわざわざ犯行をして存在意義を確認しているとかなら、少しは物語性はあるんけどな」

「多分、世界最高の暇人であるヘカ先生にだけは言われたくないと思うっすよ?」



 ヘカが半分飲んだエナジードリンクを欄はゴクリと飲むと、本作の一節を口に出して読んだ。

 間接キスを気にしない間柄。



「『人』だからっすか、重いっすよね。恐らくこの全世界、いや全宇宙で戦争をするのは本当に人だからなんすよ」



 店内でも作品の話を続ける二人はふとおかしくなった。なんでこんなに真剣に一つの作品について話し合ってるのか……



「プププ! サラコナー出てきちゃったっすよ」



 あの未来から、襲来する不死身のサイボーグ(シュワちゃん)がやってくる映画のオマージュと思わしき名前に欄がウケた。



「微妙に名前を変えているのが、面白いんな」



 昔は〇をつけて名称を隠したり、今回のように名前をもじってみたり、しかしこの場合著作権の問題以外に、我々の世界とは別であるという事の印象付けにも一躍買っている。

 こういう微妙なワンポイントにヘカや欄は少しばかり興味を持ってしまうのだ。



「ヘカ先生、自分。この作品の行く末がやや分かってしまったかもしれないっすね」



 そう言う欄。

 彼女は付き合いでWeb小説を読む程度、小説を書く事も好んで読み進めるタイプでもない。それ故、ヘカはその欄の自信満々な表情にむっとする。ヘカでも考えつかない境地に達したとでも言うのかと。



「なんなん?」

「天国と現実の行き来する方法があるんすよ」

「ニューロデバイスを使用した仮想世界の交流なん?」

「それも可能っす。そして、フロンティアの人間が受肉する事も可能っす。データとしてのDNA情報を元に、現実の世界で人口受精するんすよ。それだけだと、同じ遺伝子を持った別次元の双子っす。そこで、ニューロデバイスっす」



 かの昔、進化論という物を唱えたダーウィンという男が聞けば真っ青になって逃げ出すような事を欄は言った。



「ネメシス、容赦ないんな?」

「そうっすね。以前自分達も未来の機械と喧嘩した事ありましたけど、あれは人を殺さないようにしてたっすからね?」



 去年7月作品紹介作品で二人は未来の機械とガチンコで交戦した時の事を思い出す。あれもだいぶオーバーテクノロジーだったが、本作で登場するネメシスは完全に人狩り用の兵器と言える。それに欄はスマホで画像検索したものをヘカに見せた。



「この温度センサーを搭載した人狩り用のコブラやアパッチが一番近いかもしれねーっすね。まぁ大分、中東では嫌なもんみせられたっすから」

「この作品は偉いんよ。戦とはこういうものなん。臭いものに、蓋をしてないが故に賛否両論ありそうなん。でも、これが作家なんよ。そして人を殺すのは人なんな?」



 ヘカは少し興奮気味にそう言う。本作の描写に関していくつか、現在のWeb小説読者が苦手とする鬱展開が表現される。ヘカ好みの展開、描写。物語の展開上必要だから描かれているに過ぎず、本作はそれを推すわけでもない。こういった緩急の付け方が実に懐かしい。


 チャ!


 欄はヘカに向けて小さな銀色のリボルバーを向けた。欄の護身用の短銃。ヘカはすぐさま銃口に指を突っ込む。その虚ろな瞳は何を想うか……



「やっぱ、ヘカ先生はイカれてるっすね。でも、それヘカ先生の指が吹っ飛ぶだけっすよ?」



 そう言ってもだんまりのヘカ。この黒髪の不健康な少女は何の策もなしにとんでもない事をしでかす。それ故、欄は今引き金を引いたらどうなるのか少し期待したが、銃を腰に戻した。



「ヘカ先生は死ぬのとか、怖くねーんすか?」

「怖くないんな! ヘカは死ぬ事よりも、エタる事の方が怖いん。響生の生き方はヘカには理解できないんな。手の届く範囲を全て守ろうとするん……でも、それがカッコいいん」



 ヘカは基本、少年漫画のような作品がどうも好きらしい。これに関しては欄も賛成と言わざるおえなかった。漫画派の欄も、本作『Spirit of the Darkness あの日、僕は妹の命と引き換えに世界を滅ぼした 著・黒崎 光』に関しては大分興味深く楽しんでいた。



「思考をクロックアップさせるとか、それは心の支配とも言えるっすよね」

「欄ちゃんは何が言いたいん?」



 欄は語る。強制ログアウトされた響生、同時に別の時間を動く世界をどうやってコンパイルされているのか、それを欄は呆れ気味にヘカの資料検索用端末のmacbookproを指さした。



「2.5ghzクアッドコアcorei7 実装メモリ16GB SSDは1TB、ヘカ先生の作業用端末や自分のマシンに比べたら随分貧弱なマシンすけど、macだとそんなもんでしょうね。それを砂粒だと考えて、星の数程集めたらこのシーンの算出が出来るかもしれねーっすね。なんの言語を使っているのかが分かればあとは民間技術にまで落とし込めますしね」



 うん、分からない。それがヘカの感想。

 それ故、再び話を変える。



「美怜たんは、人間らしいんな? ヘカや、欄ちゃんより人間らしいん。これが証明なんよ。フロンティアにいるのも人間」

「人は怖いとまず襲う。次にそれを知ろうとするっす。そして最後はそれになろうとする。だなんて言うと新世紀の人造人間の話みたいっすね」

「軍人は死ぬ事をなんで選ぶん? というかこれ事実なん?」



 よくある描写、よくあるシーンについてヘカが欄に聞く。それは欄が少なからず軍人という連中と関わりがあるからなのだろう。



「難しいっすね。沈没する船と共にする船長というのは大分いたみたいっすけど、大概は降伏するっすよ。その二文字がなかったのは……言わずもがなっすかね。さて、響生さん、美玲さんのセキュリティを一瞬にして突破したらしいっすけど、そういうプロトロルを無視したようにしか自分は感じないっすね。ようはマスターコードっす。いや、この場合はジョーカーコードっすかね?」



 フロンティアの存在が大規模サーバー上にあるという事で彼らは膨大なデータを有しているというか、そのものである。それらに対して管理者権限を無視する動作が取れる方法がないとはいいがたい。欄は今の今までフロンティアと電子戦をした時の事を考えていたのだ。

 さすがにそれにヘカはため息をついた。



「欄ちゃんはもう少し、Web小説の楽しみ方を勉強した方がいいん」

「いやいや、自分はこの世界感を肌で感じながら楽しんでるんすよ。例えば、美玲さんの言う最強の軍隊。あれはただの宗教っすね。現行で最強の軍隊は、無人兵器で武装された部隊でありながら、その中にいる人間も自分を兵器の部品として投入できるような連中っすね。そしてそれが出来る軍人はもうこの世界の何処にもいねーんすけどね」



 そして、美玲の言う最強の軍隊を体現する事も事実上不可能であるという。不思議な事に世界はそういう風にできている。

 欄は少しだけ思った。アメリカではなく、あの国が世界の警察をしていれば中東の武装組織は解体され、今だ蔓延する海賊はすべて見せしめに撃墜処分され、他大国が好き勝手しないように幅を利かせていた。

 実のところ、世界平和が成就していたかもしれないと……



「それにしても、美玲さんは女性というより、雌っすね。一発響生君としちゃえばいいんすよ。プログラムされた生き方を愉しむのもまた悪くないと思うんすけどね」



 そう言って欄がテレビの電源を入れる。それは生放送で怪盗五右衛門が現れた現場の中継が流されていた。



「ヘカ先生あれって、偶然っすかね?」

「あー、あの焼き鳥美味いんなぁ!」



 欄が買ってきた両国国技館の焼き鳥、それが証拠物として回収されているとの事だった。あの時、それを持って帰った人物が、昼過ぎに古書店『ふしぎのくに』に戻って来る。



「遅くなりました。石川、出勤しました」

「うん、お疲れなん」



 そう言ってヘカは麦茶を石川に差し出した。それに頭を下げて飲み干すと石川はヘカと欄が見ている作品について語る。



「その作品、視点移動をタイトルで賄っているんですよね。僕だけかもしれないですけど、分かり易いです」



 本作は1本のストーリを連載するにあたり小さな章くぎりをしていない。それ故、タイトルを上手く使い場面切り替えとしている。古来からよく使われる方法だが、案外なろう等のWeb小説投稿サイトでは使われない。



「ある種の強制力が働くんな? 見出しのタイトルを見て、今回はアイ、また響生の目線なんなって導かれるから、同じ場面切り替えでもストレスを感じにくいんよ」



 これは文章のトリックのようなものだが、読み疲れを減らす方法としては一番やりやすく、使い勝手がいい。



「お二人に一つ聞いていいですか?」



 ヘカと欄ははてなという顔して、それを肯定と取った石川は語る。



「穂乃果さん、肉体はなく、データのような意識でも罪悪感を持っています。人間の意識をデータ化したとして、それは本当に個として生存できているんでしょうか?」



 その言葉にヘカが答えた。



「アイの話を読めばわかるん。フロンティアに仇名すサラを解き放ったんな? それは愛ゆえになん。そんな事は機械にはできない。それは千年後も一万年後もなん」



 石川は頷く。そのヘカの何の根拠もないのに欧米人の言葉のように説得力がある返し、そして欄は違う。



「そうっすね。自分達のこの世界がどういう言語を使われて構成されているのかが分かればあるいは、ネットワークの世界にそのまま移管する事は出来ると思うっすよ。どちらかといえば石川さんはこういう意見が聞きたかったんじゃないっすか?」



 これはヒロが響生に見せた表情のようなものだったのかもしれない。そして石川が何か言おうとした時、ヘカが低い声で言った。



「石川、なんで怪盗なんかしてるん?」

『Spirit of the Darkness あの日、僕は妹の命と引き換えに世界を滅ぼした 著・黒崎 光』本作は大分描写が凄い部分もありますが、アナログの表現を大事にする事が、SFを根幹する方法の一つなのかもしれないと思わせてくれますねぇ^^ 80年代のSFは遠い未来や、宇宙間戦争等。90年代のSFは大宇宙時代と言えばいいでしょうか? 宇宙航海等ですね! 本作は直近ミレニアムの電子の世界。比較的新しいSFの形なんでしょうね! まだ読まれていない方はこれを機にお愉しみくださいね!

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