12 告るその2
「 あとね。あなたに、もう1つ話さんといけない事があるんです。聞いてもらえますか?」
「 いいよ」
俺は、深呼吸をしてから、話し始める。
林原さんの反応がどうかは、話終えてからだ。
「 今から話す事は、本当の事です。えとね、俺って、いっぺん死んでね、異世界転生したんです。でも、色々無茶した結
果、こっちに戻ってきたんです」
林原さんは、さっきまでの緊張に満ちた顔から一転して、はとが豆鉄砲食ったみたいな顔になってるよ。
――やっぱりそうなるよな。さしずめこの娘なに言ってんの?頭おかしいの?って思ってんだろうな。
だけど、林原さんは、俺の考えとは裏腹な反応をしてきたんだ。
ポカーンとしてたのは、ほんの数秒。いつもの落ち着いた雰囲気から、想像も出来ないくらい、好奇心丸出しの幼児の表情に変わっていく。目がキラキラしてるよ。
「 マジで?スゲー 異世界転生。ネット小説でよくあるやつだよな?」
ギャップありすぎ。て言うか、ちょっとこっちが引くくらい、テンション上がりすぎだよ。
「 えっと、はいそうです。まあ、俺の場合ちょっと違って、なんか踏まなきゃいけない手続きを神様が居眠りしてたとかで、すっ飛ばされてたんですよ。 しかも、男なのに、勝手に女の子にされてるし」
「 そうなんだ。て言うか、証拠みたいなのってないの? 夕陽の事疑ってる訳じゃないけど。」
「 ………林原さんこんな非常識な話あっさり信じるんですね。」
「 夕陽見てりゃ、嘘つけない性格だって、わかるよ。ねっ異世界にいたんなら、魔法とか使えないの?」
林原さん、めっちゃ子どもみたいだな。
「 魔法は、こっちに戻る時、ほとんど使えなくなってるんだけど、治癒魔法は使えますよ。」
「 じゃ、この傷治せる?」
林原さんは、左手を差し出して俺に見せる。左手の甲には、ガーゼが貼ってある。
「 ガーゼ取ってもらってもいいですか。傷の状態を知りたいので。」
「 わかった。」
林原さんの左手を持って観察する。ひどい擦過傷だけど、このくらいは、すぐなおる。
「 光よ、傷を癒せ。ヒール」
呪文を唱えると、光がパアッと傷を包みこみ癒した。
林原さんは、左手をかざして、何度も確かめてる。
「 スゲー、一瞬で治ってるよ。ありがとう。」
「 いやどういたしまして。」
「 イチャイチャしてるとこすみませんにゃー。そらの存在忘れるにゃー」
足元に置いたバックから、そらが喚いている。――ごめん、そらお前の存在忘れてたよ。バックから、そらを出してやる。
「 ども、そらです」
「 しゃべった! スゲー」
「 異世界での俺の契約精霊だったんです。 今は、喋れる猫になってる。」
「へえ。さっきの魔法といい、そらといい、夕陽が異世界にいたんだなって、実感させられるよ」
「 ね、さっきから訊こうと思いよったんじゃけど、夕陽って呼び捨てになっとるのはなんで?」
「 別に、ちゃん付けするのは、イヤだろうから、呼び捨てにしてるんだ。それに、彼女だし」
「うわー、恥ずかしい事あっさり言うな。 彼女とか」
俺は、恥ずかしさのあまり、林原さんをポカポカと殴る。名前で呼んでと言われて、また騒ぐのは、また別な話だったりする。




