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第99話 シャイガールの告白

 最近、姉さんがおかしい・・・。



 あの合格発表から、何だかずっと上の空である。


 かと言って、別に、落ちた訳でなく、むしろ、合格しているのにだ。


 その日の放課後は、瑞希先輩達の相談があるといって、別々に帰ったし。


 帰ってからも、例えば、夕食の時もずっと黙っていた。


 結局、その日は、寝るまで、(ほとん)ど話す事は無かったのだった。


 そして、翌日もそれは変わらなかった。


 そんな状態が、2〜3日も続いていたのだ。


 さすがに、心配になって姉さんに聞いてみたが、曖昧な答えしか帰ってこない。



 ・・・



 「(どうしたんだろう・・・)」



 僕が休憩時間に、考え事をしながら廊下を歩いていた。


 次の時間は、自習なのが分かっていたので、ゆっくりと歩いていると。




 「優くん、どうしたの?」


 「え」




 背後から声を掛けられて、一瞬、ビックリしたが、振り返るとそこには、由衣先輩がいた。




 「優くん、何か考え込みながら、歩いていたから」


 「は、はあ・・・」




 それで、最近の姉さんの状況について説明した。




 「やっぱり、家でもそうなの・・・

そんなに、あれがショックだったんだ・・・」


 「先輩、理由を知っているんですか?」


 「まあ、一応ね」


 「先輩、教えて下さい!」


 「ゆ、優くん、苦しいよ〜」


 「は、すいません・・・」




 その言葉を聞いて、思わず、由衣先輩を掴んでしまって、先輩が苦しみ出した。


 苦しむ先輩の声を聞いて慌てて、僕は先輩を掴んだ手を離す。




 「優くん、次の時間が始まるから、急いだ方が良いよ」


 「あ、次は自習なんで、急がなくても良いんです」


 「そうなの、私もそうなの、ねえ、なら一緒に来ない?

華穂の事について、教えてあげるけど」


 「すいません、教えて下さい」




 そう言う訳で、僕は、由衣先輩に付いて行く事になった。




 ******************




 僕は、先輩に付いていくと、人気が無い校舎裏に出た。


 適当な所で、先輩が振り返ると、そこで立ち止まってしまう。




 「優くん、華穂が、なぜあんな風になったか知りたい?」


 「早く、教えてください!」




 勿体ぶった言い方に、僕は、慌てて先輩に聞き出す。




 「華穂ね、蓮くんから、合格発表の後、告白されたんだって」


 「えっ!」




 突然の内容に、僕は、固まってしまう。


 しかし、冷静になってみれば、それなら、姉さんの行動に納得するし、蓮先輩の様子を見れば、いずれは、こうなる事が予想できたはずである。




 「返事は、いつでも良いと言う事らしいの」


 「そうですか」





 姉さんが変な理由は分かったが、しかし、理由が分かったが、その為に困惑してしまう。


 だが、そんな僕に構わず、由衣先輩が話を続ける。




 「優くん、なぜ華穂が悩んでいるか、分かる?」


 「なぜですか?」


 「それは、あなたの存在があるからなの、だから、蓮くんに返事が出来ずにいるみたいなの。

だから、私は、華穂が決断しやすいように、背中を押そうと思うの」


 「どう言う事ですか・・・」


 「だから、優くんが誰かと付き合ったら、華穂も蓮くんに返事がしやすいのだと」


 「えっ、ちょっと意味が分かりません・・・」




 先輩の言葉に、僕は混乱する。




 「優くん、私は、あなたの事が好きなの、だから付き合って!」


 「せっ、先輩!」




 由衣先輩が、僕に告白すると同時に飛び込んできた。


 僕は、そんな先輩を咄嗟(とっさ)に受け止める。


 先輩は、僕が抱き止めると背中に腕を廻すと、力一杯抱き締めた。



 「優くん、慌てなくて良いけど、出来るだけ早く返事してほしいな。

華穂の方の事も、あるからね」



 僕が呆気に取られた次の瞬間、ゆっくりと離れると、先輩が、そんな事を言った。



 「じゃあ、あんまりココに居ると、先生に見付かってしまうから、早く校舎に入りましょう」



 そうして、僕の手を取ると、先輩が一緒に歩き出す。


 相変わらず、小さくて柔らかい先輩の手だけど、僕の心の中は、それ所では無かった。


 こうやって、僕は由衣先輩に手を引かれながら、校舎の方に戻って行ったのだった。



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