第85話 文化祭の出し物・・・
それから数日後。
試験も終わり、僕たちは衣替えを済ませ、冬服になっていた。
そんな、生徒全員が冬服に変わった教室で。
「はい、今日のホームルームは、文化祭の出し物を決めま〜す」
学級委員長が壇上に立ち、ロングホームルームが始まった。
もう、そんな時期なのか。
ちなみに、この学校は一年交代で、体育祭と文化祭が交互にあるのだ。
普通は、両者同時にあるのだが、両方やるのは学校、生徒双方の負担が大きいので、交互に開催する事になったのである。
「それでは、みなさん、意見を出してください」
委員長が意見を募った。
・・・
「それでは、次の様な意見が出ました」
黒板に書かれた文字には、
・ メイド喫茶
・ お化け屋敷
・ お好み焼き屋
・・・
何と言うか、ありきたりな物しか書いてなかった。
周りを見ても、微妙な顔をしている。
隣の透也を見ても、余り気乗りしなさそうな感じである。
かと言って、誰もそれ以上に、何にか良い案がある訳でも無い。
「では、出し物を多数決で決めますので、手を上げてください」
そう言って、委員長が挙手を求めた。
・・・
「それでは、メイド喫茶に決まりました」
まあ、無難な線に落ち着いた。
ありきたりな物に決まったので、クラス中は安堵したような、シラケた様な微妙な空気になる。
そんな中、ある女生徒が手を上げた。
「はい、何にか意見でもありますか?」
「はい、ただのメイド喫茶では面白みに欠けるので、女装メイド喫茶にしたいと思いますが」
と、発言した。
その女生徒は、宮陣さんと言って、クラスでは腐女子として有名な娘である。
なんでも、彼女は、知り合いのカップリングで、薄い本を作っていると言う噂があるのだ。
しかも、その中には、僕と透也のカップリングの物もあるとか・・・。
(それも、話によると、僕が受けなんだとか・・・)
そんな娘が、そう言う事を言ったのである。
「それでは、みなさん、どうしますか?」
委員長が、全員に意見を求めた。
「う〜ん、ただのメイド喫茶ではありきたりだし・・・」
「これでも、変り種だけど、無い訳では無いよね」
「かと言って、ただのメイド喫茶よりは良いんじゃないの?」
クラスの中から、そんな声が聞こえてくる。
女装メイド喫茶自体も、変化球だけど、別に目新しいと言う事では無い。
かと言って、それ以上の意見も出てこないので、その線に決まりつつあった。
「それでは、女装メイド喫茶にするかどうか、賛成の人は手を上げてください」
また、多数決で決めるようである。
・・・
「それでは、女装メイド喫茶に決まりました」
委員長が、全員に宣言した。
クラスの雰囲気はと言うと、ただのメイド喫茶よりはマシになったと言った感じである。
そんな中、女装メイド喫茶を言い出した、張本人の宮陣さんは、何か含んだ笑みを僕に向けていた。
その意味を、後日、僕は身をもって体験することになった。




