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第84話 姉さんの耳掃除

 その日の夕食後。



 「(きゅう〜)」



 先輩方の打ち上げカラオケで、お姉様達にイジられて疲れた僕が、居間のソファでうつ伏せに伸びていた。



 「パタパタパタ」



 洗い物を済ませた姉さんが、こちらに向かっている。


 姉さんの方は、そんなに疲れてはいない様だ。



 「ゆうくん、今日は、そんなに疲れたの?」



 姉さんは姉さんで、男達に取り囲まれていたので、僕の状況を知らないらしい。


 なので、そんな言葉が出ている。


 しかし、事情が説明すると、今度は姉さんの嫉妬が出て、それはそれで面倒な事になるので、言わないけど。


 僕がそんな事を思っていると、姉さんが、今度はソファの前でしゃがむと、そんな僕の頭を撫で出した。



 「ふうにゃ〜」



 余りの、気持ち良さに、思わず変な声を出してしまう。



 「うふふっ」



 そんな僕を見ると、姉さんは面白そうな微笑みを浮かべた。



 「あれ、ゆうくん、耳の中が溜まってるね」



 僕の頭を撫でていた姉さんが、不意にそんな事を言った。


 ああ、そう言えば、前に耳掃除をしたのは、いつだったかな〜?



 「チョット待ってね、耳掃除してあげるから」



 そう言うと、姉さんは、近くのペン立ての中から耳かきを取りだし、寝ている僕の頭の近くに座る。




 「(ポンポンポン)」


 「ほら、頭をのせなさい♪」




 嬉しそうな声で、姉さんが、自分の太股に頭を乗せる様に(うなが)した。


 その声に、僕は、姉さんの太股に頭を乗せる。


 結構、姉さんの太股に頭を乗せているいるけど、それでも、いつ乗せても気持ち良い。


 柔らかく暖かで、ツルツルした感触に、甘い匂いがして、全然飽きない。



 「ほら、頭を倒して」



 そう言いながら、僕の胸元を”ポン”と叩いた。


 僕はその声を受けて、頭を向こう側に倒す。




 「(ガサガサガサ)」


 「痛い時は、言ってね」



 僕の耳に、耳かきが刺し込まれた。


 姉さんが、いつもそう言うけど、思った程痛くはない。



 「(ガサガサガサ)」



 ・・・



 しばらく、耳を()いた後。



 「今度は、反対側だよ」



 そう言って、僕の肩を叩いた。


 その声を受けると、今度は、こっち側を向いた。


 すると姉さんの、覗き込む様な顔が見える。


 僕を覗き込んでいる、その顔は、慈愛に満ちた笑顔をしている様に見えた。


 その顔を見た僕は、急に恥ずかしくなり、思わず目を閉じてしまう。



 「(ガサガサガサ)」



 目を閉じると同時に、耳に耳かきが刺し込まれた。


 しばらくの間、僕はまた、姉さんの成すがままにされる。



 ・・・



 「はい、終わったよ♪」



 どうやら、耳掃除は終わったらしい。


 しかし、今度は、



 「(なでなでなで)」



 僕の頭を撫でるのを再開させたのだ。


 しかも、姉さんが膝枕をしたままで。


 だけど、先ほど以上の気持ち良さに、僕は止めることが出来なくなっていた。


 そして、そのまま、姉さんの柔らかさと暖かさ、滑らかな感触と甘い匂いに包まれながら。


 僕は、姉さんに頭を撫でられていたのであった。



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