第78話 試験勉強をドコでしようか?
あれから時間が流れ、もう10月間近になった。
一時的に混乱して事もあったが、その後は、至って平静に過ぎて行った。
しかし、それは、由衣先輩の僕への思いや、姉さんの事とかを棚上げにしたままの状態であるが・・・。
・・・
もうすぐ、中間試験がある。
そろそろ、試験勉強でも始めよう。
「まあ、一夜漬けで何とかなるさ」
と、呑気な事を宣うのは、透也である。
一学期に、いくつか赤点を出して、夏休みに補講に出席したのは誰なのかな?
何となく、冬休みに泣いている透也の姿が、想像できた。
さて自分の方はどうしようか、そんな事を考えていたら。
「ねえ、ゆうくん、どうしたの?」
いつもの様に、みんなで帰っている所で考えていた僕に、姉さんが尋ねてきた。
「あ、うん、試験の事を考えていたんだよ」
「もうすぐ中間試験だもんね」
僕がそう答えると、姉さんがそんな事を言った。
二人の会話を聞いていた、瑞希先輩が不意に。
「そうだ、試験勉強を華穂の家でしない?」
「へっ?」
「そう言えば、意外と、華穂の家に言った事が無いんだよね」
と言ったのに、姉さんが意表を突かれ、それに対して由衣先輩が、そんな事を言った。
「あ、そうか、2年の時はゆうくんの高校受験で、2人は遠慮してくれたんだっけ」
「それに、1年の時は、知り合って間もなかったし。
慣れた頃に、私と瑞希の家に行ったけど、結局、華穂の家には行かず仕舞いになったんだよね」
姉さんがその理由を言ったのに続いて、由衣先輩がそれに付け足しした。
「どうせなら、蓮のヤツも連れてこようよ」
「え!」
「別に、男女二人きりになる訳でなし、それに華穂の所は今、両親が海外に居るんでしょ」
「まあ、そうだけど・・・」
瑞希先輩の言葉に、姉さんは驚き、だが、それにも構わず瑞希先輩が、更に、姉さんに勧めてきた。
ちなみに蓮先輩も、瑞希先輩の言葉に驚いていた。
しかし、姉さんは、しきりに僕の方をチラチラ見ている。
僕の反応が気になるみたいだ。
「姉さん、別に僕は構わないよ」
僕は、姉さんにそう答えた。
本音を言えば、余り、気分が良い訳では無いが、そう言って、断る理由も無い。
「じゃあ、良いよ〜」
姉さんがそう言うと、蓮先輩の顔が笑顔になる。
僕は、その様子を何となく、面白くない思いで見ていた。
「華穂の家と言う事は、優くんの家でもあるって事だね。
私、男の子の家に行った事が無いんだよね」
そんな僕に、今度は由衣先輩が、僕の近くでイキナリそう言う。
それを聞いた姉さんが、先ほどの僕の様に、微妙な顔になった。
「(ふふふっ)」
この様子を見ていた、瑞希先輩が、意味ありげな笑顔を浮かべている。
僕達5人が、帰り道を歩いている。
5人がそれぞれの思惑を抱きながら、駅へと向かっているのであった。




