第69話 ねえ、どうかな?
ちょうど、その頃。
今、僕は、由衣先輩と二人きりである。
姉さんと蓮先輩は、推薦試験の説明で職員室に行っているのだ。
瑞希先輩はと言うと、
”私も、チョット用事があるから、行くね”
そう言って、席を立った。
何だか、二人きりになるように、狙ったみたいである。
そんな訳で、屋上のベンチので二人きりで座ってた。
「(ニコニコニコ)」
由衣先輩が、何が良いのか、機嫌よく笑っている。
以前と違い、凄く綺麗になった先輩が、こちらを見て微笑んでいると、どうしても緊張してしまう。
「ねえ、優くん」
僕が緊張していると、先輩が声を掛けてきた。
「私、どうかな? イメチェンしたんだけど」
そう言ってきた先輩に、僕は、逆に尋ねてみた。
「どうしたんですか、急に変わってしまって、何かあったのですか?」
そんな、僕の問いに対して、先輩が、
「優くん、海に行ったときに言ってくれたよね、私の事、可愛いって(第60話参照)。
それで、私、自信を持てるようになれたし、だから、優くんの為に綺麗になりたいって思ったのよ。
お願い、優くん、私は綺麗になれたの、優くんの口から直接聞いてみたいのよ」
先輩が、ベンチを立ち上がって一歩近づくと、真剣な瞳で僕の目を見詰めながら、尋ねてきた。
その真剣な先輩の瞳に、射抜かれた僕はたじろいだけど、正直に今の気持ちを答える。
「はい・・・、先輩、とても綺麗になって、とってもビックリしました。
でも、まるで別人の様に、自信に溢れていて、最初気付きませんでした」
そうすると、先輩が更に近づき、前かがみになりながら顔を接近させると。
「ふふふっ、さっきも言った通り、優くんが私に可愛いと言ってくれたから、私は、こんなに変われるくらいに、自信を持てるようになったの」
顔を近づけたまま、先輩が視線を緩めるが、相変わらず僕の顔をジッと見詰めていたので、次第に僕の顔が熱くなりだした。
「あれ〜、優くん、顔が赤いよ♪」
「だって、美人に顔を近づけてこられたら、誰だって・・・」
「・・・ありがとう」
先輩がそう言うと、僕の頬を両手で挟んだ。
「優くんの頬、ホントに熱いね・・・」
そんな言いつつ、先輩が僕の頬を撫でる。
柔らかくて、姉さんより更にヒンヤリした手が僕の頬を滑って行く。
そうやって、しばらくの間、先輩が僕の頬を撫でていたのであった。
・・・
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・・・
もうそろそろ、予鈴が鳴る頃合いになってから。
「ねえ、そろそろ戻りましょうか」
と先輩が言ってきた。
先輩の言葉を受けて、僕が立ち上がりながら、
「でも、先輩、茶目っ気も出てきて、何だか、姉さんに似てきたね」
僕がそう言うと、先輩が一瞬、暗い顔になるが、一転して笑顔になり。
「うふふ、優くんの好みになったと、思うことにするね」
そんな意味深な事を言った。
「ねえ、ほら、早く行かないと遅れるよ」
「あ〜、先輩、引っ張らないで〜」
先輩が僕の手を引いて、校舎に戻る。
”女の子は、変われば変わるものだな”と、先輩に引っ張られながら、心の中でそう思っていた。




