表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/105

第67話 ただ一人だけ

今回は、由衣視点の話です。

 二学期初日の朝。



 ・・・



 前の日に、それまでの三つ編みを止め、美容院に行き前髪を切り揃えると、それに合わせるよう髪型を変えた。


 眼鏡を外し、コンタクトに変えた。


 ・・・これで少しは、野暮ったくなくなっただろう。


 ついでに、眉毛も少しゲジゲジだったので、ちょっとばかり手を入れる。



 ・・・



 翌日になり、瑞希、華穂に会うと、最初、私だと気付いてくれなかった。


 自分としては、それほど、変えたつもりはないんだけども・・・。


 でも、優くんを、良い意味でビックリさせたみたいで、とても嬉しかった。


 だって、私が綺麗になりたかったのは、優くんに振り向いてもらいたかったから。


 なんだか照れている様に見える、優くんを眺めながら、嬉しい気分で歩いていた。



 ・・・



 教室に入ると、一瞬、みんなが不思議そうな顔をしていた。


 ”誰、この人?”と言う風な、視線をヒシヒシと感じる。




 「おはよ、瑞希、華穂さん」


 「おはよ、蓮」


 「それで、こちらの人は誰?」


 「ふふふっ」


 「はははっ、蓮も分からなかったのね」


 「へっ」


 「由衣よ、由衣」


 「「「「「ええええっーーーー!」」」」」




 クラスのみんなが驚いた。




 *****************




 それから、一時間目が終わり、休み時間になった。




 「ねねねえ、平尾さん、スッキリすると以外に可愛いんだね」


 「ホント、俺、知らなかったよ」




 休み時間になったと同時に、チャラチャラした男の子2人が近づいてきた。


 以前は、私を見向きもしなかった癖に。


 それどころか、私を歯牙(しが)にも引っ掛けなかった。


 それが、綺麗になった途端に、手の平を返した様に、態度を変えてきた。




 「そうだ、今日の放課後、どこに行かない?」



 今までの事を忘れたかの様に、私にナンパをしてくる。


 心の奥底から、ドス黒い物が湧き起こってきた。



 「そうね、良いけどそれなら、三つ編みに、眼鏡を掛けて来ても良いよね」



 私は、ニッコリと微笑みながら、そう言った。




 「えっ、この方が可愛いのに」


 「そうそう、何で、前のダサい格好なんで」




 その男の子達の言葉を聞いて、わたしの中で何かが切れた。




 「でも、そのダサいのも、私なんですけど」


 「「へっ!」」




 私は、笑みを浮かべたまま、そう言った。


 人間、怒りでも、微笑む事が出来るのですね。




 「前は、私の事を視界にも入れてなかった、それどころか、私を馬鹿にしていたよねぇ〜」


 「「・・・」」


 「結局、あなた達は、可愛い娘なら、誰でも良いんでしょ」




 私は、鼻で馬鹿にしたように言った。



 「「ングググ〜!」」



 その二人は、顔を真っ赤にさせて、(うな)り声を上げる。




 「コイツ、調子に乗るんじゃねえーーーー!」


 「キャッ!」




 男の子の一人が、私を殴ろうとした。




 「バキッーーーーン!」


 「何、女の子を殴ろうとしているのよーーーー!」




 その瞬間、瑞希のパンチがソイツの頬にクリーンヒットした。




 「アンタ達、たっぷりと教育的指導を(ほどこ)してやるわよ〜!」


 「「ひえ〜〜〜っ!」」


 「覚悟しなさい!」


 「「助けてーーーーー!」」 




 *****************




 瑞希は、空手の有段者で、全国大会の優勝候補の常連である。


本人は、その事を普段表に出すことのを嫌がるので、滅多に口にする事も無く、その為、みんなその事を忘れているのだけど。


 その瑞希が施す教育的指導だから、男の子達は、教室の隅でボロボロになっていた。


 瑞希と華穂は、廊下から教室に入る所で、私の様子を見て、急いで駆けつけたのである。




 「どうしたのよ、由衣、あんな連中、マトモに相手しない方が良かったのに。

ああ言う手合は、逆切れすると手が付けられなくなるのよ。

どうしたのよ、急に?」


 「ホント、由衣らしくないよ」




 瑞希と、華穂がそう言った。



 「本当の私を知らないで、上っ面だけ見て、近づいてくる。

しかも、それが、表面を取り繕う以前は、馬鹿にしていた連中にだと思うと、怒りがこみ上げてきたのよ」



 瑞希と華穂の言葉に、私はそう答えた。


 私は、本当の私を知らない人間、特に表面だけしか見ない、そんな人間の側には居たくない。


 私の側に居てほしい人間は、ただ、一人だけだ。


 ねえ、優くん。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品同様、姉弟のイチャイチャした作品です。
砂糖づけ姉弟
こちらも姉弟のイチャイチャした、星空文庫の読み切り作品です。
猫姉と犬弟
新年のコタツの中で〜寝ている姉にいたずらする〜
寒い冬の夜の出来事〜弟の布団に姉が無断侵入〜
あと、もう少しだから……
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ